「KIDS」 『せつなさ』に胸を打たれて・・・

こんなにいい仕上がりになっているとは、正直思わなかった。
ずっと気になっていた作品は、予想をはるかに超えて、私の胸に迫ってきた。


ねえねの愛して止まない 乙一作品。
その乙一原作の「傷」が、いったいどのような映画になるのか?
次々と映画化される乙一作品に、半ば期待し、半ば不安も隠せず・・・・・
何しろ、好きだからこそ、原作の持つ独特な雰囲気を壊して欲しくないわけで~


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 「KIDS」 公式サイト



<ストーリー>

海の見える寂れた田舎の町に越してきたアサト(小池徹平)。
ことあるごとにチンピラと喧嘩をするタケオ(玉木 宏)は、いきつけのダイナーでアサトの不思議な力を目撃してから、アサトに興味を持つ。
アサトをカツ揚げしたチンピラをやっつけたことから、友情を深めていく二人。
いつもマスクをしているダイナーの店員 シホ(栗山千明)も交えて、お互い胸の奥に秘めた深い傷を隠しながらも、初めて出来た友達との友情を深めていくのだった。

しかし、昔、母親を刺して、保護観察処分となっていたアサトは、自分の力を利用して、公園で怪我をしては泣いている子供たちから、その傷を自分の体に移して、子供たちを治していくようになった。
次第に傷だらけになっていくアサトを<心配したタケオは、‘傷の捨て場所‘として、こん睡状態で入院中の自分の父親を紹介するが・・・・



いきなり冒頭から『スタンド バイ ミー』かよっ!
美しい田舎の景色。
外国映画の青春爽やかムービーを思わせる始まりは、『乙一』の『乙一』たる所以が微塵も感じられず~~
なんでこんなに爽やかになっちゃうわけ?????

しかも、『徹平クン』だよーっ!
いくらおこちゃま徹平クンだとしても、小学生はできないでしょー?
(原作のアサトもタケオも小学生11歳)




などとブツブツ言っていたのだが、これが大間違い。
最初から最後まで、その『徹平クン』に、ぐわしっと胸を掴まれ、ついには、『徹平さま』すごいっ!!!となり、完全にメロメロになってしまったのだった。




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シホの働くダイナー。
シホのマスクの下は、かなり後半まで見られないので、もっとひどい傷なのかと、必要以上に警戒してしまった・・・・・
事実、原作では目を背けたくなるような酷い火傷痕となっている。

しかし、なんでこんな田舎町でダイナー??しかも、アボガドバーガー


喧嘩に明け暮れるタケオ役の玉木 宏は、チョーカッコイイ~~!!
いままで どうしても好きになれなかったのだけど、この役でガッツリやられてしまった、私。



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夕日をバックに、仕上がった公園を見て幸せな気分にひたる3人。
人のために働く喜びが、自分の幸せになることに始めて気付いた瞬間。
映画の大きなテーマとなっている。

今まで一人ぼっちだった三人が、自然と集まって、荒れ放題の公園を修理していく様は、それだけで何だか涙が出てしまう。




すっかり、心が深く通い合ったと思っていたのに・・・・・
このあと、辛い現実が待ち受けていた。



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他人の傷が、アサトに移っていくシーンは、なかなかのCG。
徹平クンだから遠慮したのか、本当なら、もっとバケモノみたいになっていくはずで・・・・


最後の交通事故のシーンは、他の怪我人の人の演技が、いまひとつで、どうしても入り込めなかった。
原作のように、病院に搬送されてきた人たちの傷を移すっていうのでも、良かったような・・・




だけど、原作と最も違う‘年齢設定‘は、ここに徹平クンと玉木クンをもってきて、大成功だったと思う。
年齢設定以外は、完璧に原作通りといっても過言ではないほど、そのひとつひとつが忠実に再現されていた。

何しろ小学生が他人の傷を、自分に移して回るなんていう、自己犠牲の精神はありえないでしょ?
痛いのに・・・・
タケオも、二人の年齢差が映画では、非常に有効に生きていたが、本来原作では二人とも小学5年の同級生だ。


もうひとつ、大きく違うのは傷痕を預けてそのまま街を去ってしまったシホ。
原作では街へ戻ることがない。




ねえねに言わすと、この映画ではダメなのだそうだ。

シホも原作通り、二度と帰って来るべきではない。
この『せつない』上に、『やるせない』、『救いのない』部分が、‘乙一‘作品の‘乙一たる‘所以なのだと。
そして、お話の途中で‘ぬかり‘があるのが、乙一作品の良さなのだと。


「こんな達観した小学生なんて、いないでしょ。」と私は思うのだが、すでにその年で達観していたねえねには、不自然な年齢設定でも何でもないらしい。


乙一さんもきっとその歳で、既に達観していたのだろうけど、一般的にはそうそう人生を達観できる小学生も少ないし、私としては監督すごい!!と大喝采なのだ。

この記事へのコメント

  • hito

    原作よりもかなり年齢が上がっていましたが不自然ではなかったですね。
    主要キャストがイメージピッタリでした♪

    原作はとても好きで泣けて泣けて仕方なかったのですが、あまりにも救いがなくて辛くて・・映画はその辛さが軽減されているのがいいですね。

    ラストの事故シーンは一番の見せ場なのでしょうけど、どうにも伝わってきませんでした。あまりにも不自然すぎて・・そこが残念。
    2008年10月30日 09:12
  • かのん

    乙一さんの原作は一度も読んだことなく映像化されたものでしか知らないのに、何故か好きって言えちゃうんですよね。たぶん物語の着想自体にとても惹かれるんだと思うんだけど、読んだら間違いなくハマりそうです。

    この映画にはいろいろ注文をつけたくなるんですが、好きか嫌いで言えばとても好きなんですよね。
    2008年10月30日 21:45
  • ノルウェーまだ~む

    hitoさん、こんにちは☆
    感動の場面に水をさすラストのシーンは、このさい置いておいて…(笑)
    乙一さんの作品はどれも救いがないのが特徴ですよね。
    救われずに、自ら達観してしまうところが、読者としては辛いのですが、映画はお互いに救いに気が付いたところでハッピーエンドとなっていて、一般に受け入れやすかったかもしれませんね。
    2008年10月30日 21:46
  • ノルウェーまだ~む

    かのんさん☆こんばんは~
    乙一さんの作品は、どこか惹きつけられるものがあるのでしょう~
    おっしゃるとおり、着想もすごいものがありますよね。
    すごすぎて、自分で収集がつかなくなっている時もままありますけど、そこがまた良かったりして~
    小説、ハマりますよ。短編ばかりなので、読みやすいし、是非!!
    2008年10月30日 22:53
  • Any

    ノルウェーまだ~むさん、こんばんは♪
    原作は未読、しかもたまたま観た映画でしたが、結構惹きつけられました!事故のシーン以外は・・・^^;
    アサトとタケオがハマリ役でしたね~
    玉木さんと徹平くんのお二人は、どちらかというとドラマのイメージが強かったんですが見直しちゃいましたよ。
    ハッピーエンド派としては、ラストに救いが用意されているのも良かったです!
    この作品がきっかけで、鑑賞後は『きみにしか聞こえない』のDVDを観ましたが、これまた切ないこと。。。
    2008年11月01日 22:09
  • ノルウェーまだ~む

    Anyさん、こんばんは☆
    『きみにしか~』ご覧になったのですか?
    私はまだ観てないので、早速近いうちに見ようっと。
    『切なさの達人』と言われるだけあって、乙一作品はどれも胸をぐっと締め付けられますよね。
    作者の痛さを共有することで、映画や小説が生きてくるのですが、ここに‘救い‘がないとチョー辛くなります。
    2008年11月01日 22:35
  • ふるふる

    こんばんわ。
    TBさせていただきました。
    観てから少し経ってしまって、
    感想を思い出しながら、えーとえーっと
    と言う感じで書きました(;^^)。
    予想していた通りにキャストが良くて、
    お話自体も予想より良かったです。
    乙一的切なさは少し抑えられていたような気がしますが。

    「きみにしか~」は切ないです。
    ラスト良かったですよ~。

    本当に、娘さんと好みが似てますね^^
    加瀬亮もお好きだとは・・。
    2008年11月05日 23:15
  • ノルウェーまだ~む

    ふるふるさん、こんばんは☆
    乙一作品は、多分作り手もかなり乙一ファンとみえて、どの作品もきちんと『切なくて』いい出来ですよね~
    「きみにしか~」は実はまだ見ていないのですが、切ないですか?
    手元にはあるので、早速見なくては!!
    加瀬亮映画にも、遊びに来てくださいねっ!
    2008年11月06日 00:34

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