本当に病んでいる人は、観てはいけない・・・・・・
登場人物が、もれなく全員病んでいる映画。
先日観た『KIDS』に、どこか似た匂いを感じる・・・・・
2004年に公開された、第60回ベネチア国際映画祭の正式出品作品。
熊切監督×加瀬 亮という、同じ年コンビが、最強の映画を作り出したといえる。
この役、正直 加瀬 亮にしかできないよ。
『アンテナ』公開記念 加瀬 亮インタビュー
彼の全裸シーンが、うっすら見える。
すっごい細い~っていうより、薄い~~!!
<ストーリー>
哲学を学ぶ大学院生の祐一郎(加瀬 亮)は、15年前、隣で寝ていた妹 真利江(甲野優美 )が忽然と失踪したことで、自分が何か目撃していたのではないかと、自責の念にかられていた。
そんなある日、母(麻丘めぐみ)から「真利江が帰ってきた。」との連絡を受けるが、それは別の失踪事件のニュースにすぎなかった。
失踪事件のあとに生まれた弟の祐弥(木崎大輔)は、母から真利江の服を着せられたりしていたので、病んでしまった母のために、なんとか自分が真利江になろうとするが、精神が崩壊し、入院してしまう。
医師に勧められ、退院した弟を連れて、アパートから実家へ戻った祐一郎だったが、今まで封印してきた闇の部分に向き合わなくてはならない自分に苦しんでいく。
カッターで胸に十字を刻み、自分を痛めつけることで、精神の均衡を図ろうとする祐一郎。
そんな祐一郎が救いを求めたのは、哲学の資料にと、紹介されたS&Mの女王ナオミであった。
次第に彼女に癒されていく祐一郎は、自らの内部の膿を吐き出し、少しずつ開放されていく。
不思議なアンテナで真利江と交信する祐弥も、アンテナにひっかかったものを取り除くことにより、ついには・・・・
この痛みに、耐えられるか?
痛いのは、縦横無尽にカッターで、自分の胸に傷をつけていくシーンでもなく、(勿論、痛そうだけど)
S&Mの女王に、いきなりパコーン!!!と平手をくらうシーンでもなく、(勿論、痛そうだけど)
研究のために、乳首に洗濯バサミをつけたおっさんとのSMの様子を、麻袋にすっぽり入って覗いている時に、錯乱してきて自分の腕に噛み付いたまま失神してしまうシーンでもなく、(勿論、痛そ・・・)
SMの女王にヒールのかかとで、あそこをグリ・・・・・・(勿論・・・・・・)
弟の祐弥役の、木崎くんがすごい!
「真利江」の名前を聞いた途端、ガクガクと震えだして、暴れ始めるシーンは、本当に見事である。
そんな自分の中につくられた『真利江』の存在と戦いつづける祐弥が、ついに折り合いをつけて、自ら真利江の服を着て自宅に帰るシーンは、辛い。
そして、その祐弥に「お帰り~、真利江。」と声をかける母。
嬉しそうに、真利江(実は祐弥)と夕飯の仕度を一緒にしているシーンは、痛い。
その様子を後ろから見つめる長男の祐一郎。
祐弥の心の傷にも、祐一郎の心の傷にも、たっぷり塩を塗りこんでいる・・・・・
失踪の晩、ねぼけまなこの幼い祐一郎に、「隣に寝ていたんだから、何か見たでしょ??!!」と母が詰め寄る。
必死の母の気持ちも分かるのだが。
この罪のない一言で、深く傷を負った祐一郎に待っていたものは、妹に性的いたずらを繰り返していた、同居の叔父の首吊り死体だった。
こんな痛々しい話があろうか?
病まずに健康的に育つ方が、おかしいでしょ??
なんで、SMって世界があるのか、さっぱり分からなかった私。
痛いのって・・・・・耐えられない~~!
罵倒されたり、殴られたり、ののしられたり・・・・・・でもその間に垣間見せる、ふとした優しさに、心は癒されていく・・・・・・・・のか?
「出そうになっても、がまんするのよっ!!」と女王様に言われ、苦痛に顔をゆがめる祐一郎。
とぴゅーっと出たものは、彼の体内を支配するドロドロとした膿だったのかもしれない・・・・
自分の傷に、更に傷をつけることで、最初の傷を軽くしようとする。
まるで『KIDS』のアサトと同じだ。
見ているこちらも、繰り返し胸をえぐられる・・・・・
そうじゃない、別の方法で、壁を乗り越えるすべを見つけられたのが、せめてもの救いだ。
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この記事へのコメント
ちゃとと
先日はトラバ&コメントありがとうございました。
ダンナさまがノルウェー在住でいらっしゃるんですね。
すごーい!他の記事も読ませていただきます。
ではでは、又~。
ノルウェーまだ~む
いえいえ、主人は今ロンドンに単身赴任中なのです~
ノルウェーには、2回ほど駐在していましたので、そのまま引きずっているだけなのです。
実際は、ノルウェー→原宿→ノルウェー→原宿→ロンドンという生活ですね。
また、当ブログに遊びに来てくださいませ!