「蛇にピアス」リアルな痛み

この頃お気楽なハリウッド映画ばかり観ていたので、なんとなく邦画を見たくなった。
原作は若干20歳で第27回すばる文学賞、第130回芥川賞W受賞した、金原ひとみの「蛇にピアス」。
リアルに痛みが伝わってくる映像は、同時に胸の奥にも深く痛みを残して・・・・



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 「蛇にピアス」(2008年) 公式サイト


原作を読んだのは、まさに芥川賞を取って話題になっていたとき。
このくらいの文章力なら、ねえねも書けるんじゃね?と、当時中学生だったねえねの将来の芥川賞候補を夢見て、書店でパラパラと読み始めた。

しかしこの本は家に置いていてはいけない・・・・と、直感的に思って、結局本屋ですべて立ち読みし(ごめんなさい、金原さん)「蹴りたい背中」だけ購入したのだった。





かなりの衝撃だった。


映画は原作に忠実で、そのアブノーマルな世界が、映像の中にも十分出ていた。



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クラブで出会ったアマのスプリットタンに魅せられて・・・・・


<ストーリー>

渋谷を徘徊する19歳のルイ(吉高由里子)は、クラブで知り合ったばかりのアマ(高良健吾)のスプリットタンに心奪われる。

後日アマに連れられて行った怪しげな店で、全身刺青の店長シバ(ARATA)に、早速舌のピアスを入れてもらうルイ。
シバの腕に彫られた麒麟と、アマの背中の竜のデザインを組み合わせて、自分の背中にも彫ってもらいたいと、ルイは店に通う。

アマと同棲しながら、シバとも関係を持つルイだったが、アマが自分に言い寄ってきたチンピラを殴ったことが、殺人事件へと発展していたことに気づいて・・・・・




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3人の微妙な関係は、均衡を保っているかのように見えたが・・・


激しいのに繊細なアブノーマルの世界感は充分出ているのに、行間に秘められた気持ちが表現しきれていないのは、ひとえに吉高由里子が、ダイコンだから?
ものすごく勿体無い。

原作の「痛みだけがリアルなら、痛みすら、私の一部になればいい」19歳の叫びの部分が伝わってこない。

ものすごく勿体無い。

蜷川幸雄なのに・・・・
せっかく美しい全裸をさらしているのに・・・・・
がんばって、舌ピアスを開けているのに・・・・・(演技力はともかく、すごい勇気!!)



それにしても、いくら蜷川ファミリーだからといって、小栗旬や藤原竜也・唐沢寿明らを気安く端役で出すのはやめてほしい。
作品の持つ大切なイメージかが、台無しになってしまうよ。

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美しい背中に、竜を彫っていく


これは青春映画だ。
昔から、何かを抱えて悶々とする青春を描いた作品はいくつもあった。

その屈折した気持ちを爆発させたり、暴走させたりしてきた。
それが喧嘩だったり、バイクだったり・・・・
時代によってその形はさまざまに変わってきたけれど、今の屈折した青春の形のひとつが、コレなのかもしれない。



その点で、普段の天然を封印した吉高の、この漂う雰囲気は、かなりいい線をいっているのではないだろうか。
目的もなく、ただ漂う。
生きているのか死んでいるのか分からない毎日だからこそ、痛みがないとリアルに生きていることを感じることができない。


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一途にルイを愛するアマ


吉高が舌ピアスを開けたのなら、高良とARATAもピアス開けまくったのかな?役者さんって大変・・・




せっかく体を張って、ヌードを披露したり、舌に穴を開けたりしているのに、焦燥感に欠けるのは、健康的すぎるから。
何日もビールだけで過ごして、ガリガリに痩せていくところは結構重要なのに、ちっともやつれていかない。
本当に痩せたら、背中にあばら骨が浮き出るんだよ。知ってる?



実際に穴を開けているだけに、リアルな「痛い」シーンは思わず顔をしかめてしまう。

痛いのの、何がいいのか私はSでもMでもないから、ここはさすがに判らないけれど、ピアス屋さんでは、胸にピアスを埋め込むものとかもあるのだそうな。(まだ非合法)
埋め込むっていうのは、胸の皮をべろぉ~んとはがして、内側からピアスを刺して、また皮を元通りに戻す・・・・というものらしい。
(そんなことしたら、ジグソウに狙われそう・・・・)



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舌の穴はもう塞がったのかな?



胸にあいた大きな空洞を埋めるために、体に穴を開ける。
しかし穴を開けても、穴は埋まらない・・・・・・





7つ目のピアスが、ねえねの耳に開いていた。
彼氏は口ピアスに飽き足らず、鼻ピに興味を持ち始めたらしい。

彼女の耳にピアスが増えるたび、私の胸にも1つずつ穴が開いていく・・・・・

この記事へのコメント

  • q

    ダメ~ダイコンっぷり演技合戦で
    zに登録しそうだった作品だよ~
    冒頭
    主役のルイとアマのダイコンっぷり
    ずるーーーっとコケたわ
    ダイコンっぷり炸裂しても
    セックスと喧嘩だけはリアルって
    要は「体当たり」という表現方法
    しか無いのね~等と思ったりして
    ヾ(-д-;)ぉぃぉぃ
    唯一ARATAだけ存在感アリアリ

    私の知り合いにも
    ウルトラサディスト、入れ墨好き
    っていう男がいて・・・
    先日 耳ピアスが12個になってた
    「ルーズリーフだね」
    って言ってしまった


    やっぱ私は「そこそこの美」
    としてのピアスは好感が持てるな
    2010年09月13日 20:01
  • KLY

    むぅ、これはねぇ。映像に関してのフックはかなり多い私が全く興味を持てなかった作品なんよね~。通常の耳にちょっとするぐらいならともかく、それ以外のピアスとかには全く興味持てないのと、蜷川さんがあんまり好きじゃないんよね…。^^;
    2010年09月13日 23:40
  • ねこのひげ

    監督の前で裸になったから主役?というのは、男の助べえ心を利用しているとしか思えん。
    黒澤さんなら、「出直しておいで」と返しちゃうだろうね。
    あれは、本当に穴を開けたの?CGじゃあないの?
    ARATAというのは対談番組に出てたけど、別に穴が開いていなかったな?

    穴を開けても穴は埋められない。
    まだ~む、正解!!
    リストカットと一緒です。(ーー;)
    2010年09月14日 05:17
  • ノルウェーまだ~む

    qちゃん、ルーズリーフ!(爆)
    刺青痛いんだろうなー
    痛い思いして、腕に「鶏」って入れている外人さんとか見ると、『字画が多ければカッコイイわけじゃないんだけどなー』って、意味が『チキン』であることを教えたほうがいいのか、教えないほうがいいのか迷う私でした。
    「体当たり」っていっても、見た目に体当たりなだけで、演技は体あたってないよーな。
    2010年09月14日 05:20
  • ノルウェーまだ~む

    KLYさん、こんばんわ☆
    私は結構好きなんですよ、この映画。
    ダイコンじゃなかったら、かなり評価高いんだけど・・・
    KLYさんは、興味持てなかっただけ?それとも理解できない世界だったってことかな?
    きっと理解してほしいところは、ピアスをつけるところじゃなくて、ピアスを開けたくなるくらいの焦燥感だとは思うのだけど・・・
    2010年09月14日 05:25
  • ノルウェーまだ~む

    ねこのひげさん、こんばんわ☆
    「おっぱい見ます?」で主役取るのってねぇー。
    でもアイドル登竜門で写真集出す?で、プロデューサーさんとかプロダクション社長さんとかに呼ばれちゃうって、モデルの知り合いのいる人から聞きましたよ。
    そういう意味では、体張っているのかも(爆)
    舌に開けたのは本当らしいです。
    ここはすごいですよ。だって、穴大きくしてたもの!
    2010年09月14日 06:16
  • hino

    あーーそうだったね、話題になった記憶のある作品。
    原作を読んだほうがいいかもね、私は。
    イノセントワールドは読んだことがあるよ。100円で売ってたから。

    映画は夜中にTVでやっていて、なんだこりゃああと思って観たよ(全部は観ていない)
    可愛い女の子なのに、なんでこの役やっているんだろうとか、物悲しい気持ちになった映画だったよ。男がキモかった。
    若い人が生死を必要以上にフォーカスしてしまう場合(やさしすぎたり、感受性豊かで)、ここは戦地でもないから、いろんな方法が出てくるんだね。穴あけたり。舌とかツノとか。
    アメリカのこれやる専門店の特集みてたら、これはアイデンティティーであり、立派に自己主張だって言ってたよ。
    表現ならファッションでもできるのに、根性を主張しているんでしょうね。入れ墨のこと根性入れっていうんでしょう。
    成人式のとき8個って言ってなかったっけー。
    両方で8個?
    娘を思うまだ~むの気持ちが伝わってくるようで、せずないよう
    なんで、2、3個目あたりで、やめさせなかったのかえ?
    報告してくるって母娘の関係は良好ということでしょう?
    よき理解者なんだと思うわ~。

    ハンサムで頭良さそうなイギリス人の青年が眉毛にピアスつけてて、幼稚園だった下の子が「そこになんかついてますよ」って教えてたことあった
    2010年09月14日 12:56
  • ノルウェーまだ~む

    hinoちゃん、おはよ♪
    ま、2・3個でやめるようだったら、全然楽勝なんだけどね。
    彼氏は赤ちゃんとか大好きで、ちっさい子が珍しそうに口ピをじーっと見てると、くるくる舌で回してみせるんだって。そしたら大抵怖がって泣いちゃうらしい・・・(苦笑)
    2010年09月14日 15:56
  • マリー

    これって、私ってなんて書いたかな~と思ったら
    なんと書いてなかったわ・・・
    やっぱり、あまりにも判らない世界で混乱したようです。。。
    原作は、私もムスメに読みなさいって、当時「蹴りたい背中」と一緒に渡して~
    ムスメは読書感想文を「蹴りたい・・」で書いてました。さすがに幼稚な彼女にはこの世界は無理だった・・・汗

    吉高ちゃんは綺麗な子だね~。
    演技云々より、大画面で見る彼女が美しくてみとれちゃった・・・好みではないけど。

    “痛み”でしか生を実感できないなんて、とっても可哀想な気がするけど、実際多いんだよね???
    2010年09月17日 21:06
  • ノルウェーまだ~む

    マリーさん、こちらにもありがとう☆
    お嬢さんが何歳のときに、読ませたの??
    「蛇にピアス」で読書感想文には向かないかもね・・・

    この世界が理解できないのは、仕方ないとしても、彼らを色目で見ないであげてほしいなぁ~と思うのでした。
    2010年09月18日 01:07
  • うーやん

    こんにちは。私はこれをコミック化されたものを読みました。でも1度きりです。これはやはり原作を読んだ方がいいんだろうな、とまだ~むさんのレビューを読んで思いました。

    私自身15歳で自分でピアスを開けましたが、田舎の学校で不良でもなかった私の耳をみた担任の真剣な表情を思い出しました。きっと危険信号だと思ったんだろうなあ。(ただの好奇心でしたが)

    まだ~むさんが娘さんに勧められなかった気持ちが温かいと思いました。
    2010年09月28日 10:45
  • ノルウェーまだ~む

    うーやんさん、こんにちは☆ そう言って頂けると、なんだか嬉しいです。なんだかじわりとしちゃいましたよ。

    コミックですか~
    ちょっと違うような気がするなぁ・・・
    行間に込められた想いは、コミックでは表現しきれないと思うし。

    昔と違ってピアスはほとんどの人が開けているから、人と違うことをして自分をアピールするためには、沢山開けたり色々な所に開けたりになっちゃうのでしょうね。本人は大人が思うより、軽い気持ちで開けているのでしょうけど、やっぱり心配にはなりますよね。
    2010年09月28日 17:05
  • xtc4241

    まだ~むさん、こんにちは
    (いま日本時間12月2日11:30頃、ちょっと時間が空いたので、過去の映画レビューを見させてもらってます)

    この映画、レンタルしたときは、確かにヌードにも興味がありました。でも、なぜ蜷川さんがこんな世界を描いたのだろうという疑問がありました。

    僕は、蜷川さんは舞台とは違う世界観を描きたかったのではないかと思いました。
    それはまだ~むさんがいう「痛みがないと、リアルに生きられない」現代の若者を描いきたかったのではないでしょうか?
    ばかげてると言えることかもしれないけど、でも、そこにも真実に近いものがある。そうです、最近観た「ファイト・クラブ」にも似たアブノーマルにみえて、みんながその要素を持っている世界。

    だから、「彼らを色目でみないであげてほしい」というまだ~むさんの言葉に深く共感しました。

    ところで、主演の吉高由里子、ダイコンだからいいんじゃないか(笑)と思いません?
    2010年12月02日 11:38
  • ノルウェーまだ~む

    xtc4241さん、おはようございます。
    今ヨーロッパの大寒波で、雪がもっさもっさ降り続いて、辺りは真っ白です。
    ノルウェーと違ってスノータイヤを履いてないため、車が出せず、色々予定が狂います。

    「ファイトクラブ」は未見ですが、ボクシングや格闘技、マラソンにしたって自分の肉体を究極まで痛めつける点では、私にはどれも同じように理解できない世界だし、そういう意味ではちょっと似ているのかもしれないですね。
    それが評価されるかされないか。
    できれば人の役に立つことに入れ込んで欲しいとは、大人の意見ですけど・・・
    吉高由里子のダイコンは、いい味だったと私も思います。最近のドラマを見ると、まったく別人のようだし案外芸達者なのかも?
    2010年12月02日 16:50
  • けいちゃん

    吉高さんたちのピアスは全てCGですよ(´・ω・`)
    2010年12月14日 00:51
  • ノルウェーまだ~む

    けいちゃんさん、はじめまして。
    吉高さんの舌ピアスを本当に空けていると、どこかで聞いてビックリしていたのですが、CGなのですね。
    ちょっと安心・・・
    2010年12月14日 02:28

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*『蛇にピアス』* ※ネタバレ少々
Excerpt: 2008年:日本映画、金原ひとみ原作、蜷川幸雄監督、吉高由里子、高良健吾、ARATA共演。 ≪DVD観賞≫
Weblog: ~青いそよ風が吹く街角~
Tracked: 2010-10-10 00:15

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