本当に値の張る高価なものは、実は美術館にも博物館にも、バッキンガム宮殿にすら実はないのでは?と思うようなコレクションがここには溢れていた。

セントラルライン ジュビリーライン ボンドストリート下車 徒歩10分 入場無料
よもや街中にある一見普通のお屋敷に、こんなお宝が隠されていたとは!


入り口を入るといきなり豪華な階段。
この手すりはパリの王立銀行にあったものを、このまま輸送してきたのだそうだ。
イギリスの邸宅は、このように入り口からすぐに階段で上の階(イギリスではファーストフロア)に上がっていくつくりになっているのが普通。
しかしここは、グラウンドフロアにお客様をお迎えするお部屋があるのが特徴。
緋色の壁は、王室の血の色を表したもの
ロココ様式のインテリアは、とにかく豪奢。
18世紀 ルイ15世のフランス宮廷から広まったロココ様式は、曲線を多用した繊細なデザインが特徴。
チムニーの白いピースは大理石を貼ったものではなく、全部大理石でできている!
次の間への入り口横のジョージ4世の肖像画の下にあるのが、な・なんと!アイスクリームポットと、ワインクーラー⇩
こちらもセーブルのポーセリン。(右)ガラスケースにずらりと並べられた素晴らしい陶器の数々。(左)


細工の見事なロココ様式のサイドテーブル(1739年)
とにかく1つ1つのデザインがどれも凝っている。
以前見たノーザンバーランド家のアニック城にあったマイセンや、ロスチャイルド家のワデスドンマナーにあった陶器もすばらしかったが、そちらは実用を重視して、手書きにこだわった(又はオリジナルに作らせた)もので、確かに高価ではあるけどシンプルなものが多かった。
それに対してこちらは、ロココ全盛を思わせるとにかく見事なデザインであるかわりに、ポーセリン(転写紙を使用した陶器)。
とはいえフランス革命後、フランス宮廷や貴族の持ち物だった物がイギリスへ流出したお宝であるわけだから、高価でないわけが無い。


カーテンの房は全てデザインが違う(上右)お尻ペンペンのお人形がキュート
100年に渡りこの屋敷を所有していたハートフォード公爵。
その3代目は、身分の低い女優と恋に落ちパリへ。
生まれた息子はハートフォードを正式に継ぐことができなかったが、イギリスへ戻って18歳の時にウォレス夫人との間に子供を儲けた(!)
この子がリチャード・ウォレス氏。
後に結婚した女性も名のある人の娘で、お互いに親からものすごい財産を譲り受け、すばらしい美術品の数々をコレクションしたが子供がいなかったので、「何も加えない、何も減らさない」ことを条件に国に寄付したのがこのウォレスコレクションなのだ。
中央にあるのは無数にダイヤが埋め込まれた時計☆
ダイニングルームからはネオクラシズム(新古典主義)。
それまでのロココ美術があまりに甘美な装飾様式で、絵画等の題材が貴族主義的、退廃的と揶揄されたため、18世紀後半にギリシア・ローマの古典様式を模範とし、洗練させた芸術様式が生まれた。
明るいグレーと直線的なデザインが、すっきりして確かに洗練された趣を感じる。
黒檀と黄銅の黒と金で部屋全体が統一されて、シックで洗練されたビリヤードルームのキャビネット。黄銅にはべっ甲で模様が埋め込まれている☆
キャビネットの両側に、日本とフランスの合作という富士山の模様のワードローブが対になって置かれている。
これがまたかなり上質で、見事!
⇩ヴィクトリア女王が使っていた鏡は裏側がすごい!!!(左・鏡の後ろに裏側が見えるように鏡が置いてある)
マイセンの水差しは、表面が細かい花で埋め尽くされている驚きの細工。


ラージ ダイニングルーム
色の濃い壁紙でも、直線を用いたデザインなので、さっぱりとして見える。


マリーアントワネットが使っていたキャビネット。(左)彼女の好きな柄なのだそう。
このウォレスコレクションの顔となっている、『どや顔』の絵画 「笑う騎士」(1624年) (右)
当時まだ無名だった26歳のオランダ画家フランス・ハルスのこの絵を、ロスチャイルド男爵と競り合った4代目ハートフォード子爵は、推定額の6倍もの値段で競り勝ったと言われる。
以来彼は、17世紀を代表するオランダ画家となったのだそうだ。
とっても表情があって、私は大好き♪
とにかく絵画のクオリティーが高い
レンブラント、ルーベンス、ベラスケス、ヴァン・ダイク、ドラクロワ、フランス・ハルス、フラゴナールとそうそうたる画家の作品が並んでいるのだから当然だけど、私の考えはこうだ。
ここのあるのは、いわゆるコレクション。
マナーハウスやバッキンガム宮殿、ハンプトンコート宮殿にある絵画は、多くは貴族や王様がおかかえの画家に、好みに合うように描かせた絵が多い。
そうやって画家は資金援助をしてもらうかわりに、領主や王様の気に入るような絵を描かなければならなかったのだ。
そのせいなのか、どこで絵を見ても、その人物は死んだような顔をしていて表情がない。
ところがここにある絵は、「笑う騎士」を筆頭に、表情も動きもある豊かな風景や人物が描かれている。
つまり大金をはたいても欲しくなるような素晴らしい絵は、「実はこういうところにある」というわけだ。


ブーシェ作「ポンパドール夫人の肖像」(1759年)左
19歳で銀行家と結婚しながら、手を尽くしてルイ15世の公式愛妾となったポンパドール夫人は、レースや花飾りなど、ロココを代表するような優雅だけど愛らしいいでたち☆(次の愛妾は、あのベルサイユのバラにも登場デュバリー夫人)
どう手を尽くしたかというと・・・・・・↓
フラゴナール作「ぶらんこ」(1767年)右
スカートを覗き込む男性に、わざと靴をとばしてみせるポンパドール夫人。後ろでぶらんこを押しているのが、ご主人なのだそう。むむむ・・・
見ているだけだと分らないような美術品の説明は、美術史文化講座の吉川先生のお話で。
質問にも親切に答えてくださり、もっともっと時間をかけて色々お話を聞きたかったくらい。
事前に予約をして、個人的にもリクエストにお答えいただける。
http://www.mixb.net/les/les_detail_f.php?id=786 イギリス情報満載 Mix B に詳細が載っているyo
最後のシメはウォレスカフェで
ウォレスカフェに再度行ったので写真を追加


レストラン&コートヤードで、ポンパドール夫人になったつもりでロココな気分を味わって☆
今度はゆっくりレストランのほうでお食事もたのしみたいな。
#ウォレスコレクション#イギリス#ロンドン
この記事へのコメント
mig
詳しいレポ、大変だったねー!
ヴィクトリア女王が使っていた鏡みれるなんて
マリーアントワネットのはヴェルサイユ宮殿じゃなくこちらにもあるのね。
無料公開っていうのもすごいよね。
ロココ好きの乙女にはたまらないよね~
タイムトリップしたところで私は今からご飯して英語れっすんいってきまーす
ノルウェーまだ~む
ロココは乙女心をくすぐる女性らしいデザインだから、本当にうっとりしちゃうね。
フランス王室が倒れてから、王室の宝はあちこちに流出したのだと思うよ。
あと贅沢しすぎてお金が無くなった貴族が宝物を売ったりね。
SGA屋伍一
それはともかく、まだ~むさんのゴージャスレポート楽しませていただきました。うーん、なんだか18世紀のヨーロッパの歴史がひとつの邸宅にぎゅっとおしこめられてるようですね。すごいや
「画家が注文どおりに描かねばならなかった」という話は、『宮廷画家ゴヤは見た』や『レンブラントの夜警』などで、主役の画家が注文客の機嫌を損ねて冷や飯を食わされるエピソードがあったのを思い出しました・・・
みすず
わぁ、すっごいゴージャス~^^
これが無料公開なんてびっくり!!
うんうん、乙女心くすぐられるわねー^^
わたしもじっくり観たいよ^^
ヴィクトリア女王が使っていた鏡なんて凄い!
入ってすぐの階段もゴージャスで素敵♪
時間が経つのも忘れそうね^^
ランチも美味しそうだわー^^肉の量が凄い!
ノルウェーまだ~む
「宮廷画家~」も「レンブラント~」も見てないけど、飾られている絵画が、それを教えてくれるよ。
絵は口ほどに物を言うっていう気がする。
日本にいると、絵画展も学校で習う美術の時間も、当然のことながらいい作品しか登場しないから、今まで気がつかなかったけど、『そこそこ』の絵とかもいっぱいあるんだよね。
特にハデハデしい衣装を着た肖像画は、絵に生気を感じられないもの。
ノルウェーまだ~む
スモークサーモンの量がハンパないから、お友達に手伝ってもらってもまだ多すぎて、最後は飽きてきちゃったもの。
カフェは人が多かったから写真はあれだけなんだけど、とっても素敵なところよ☆
xtc4241
(いま2月14日12:00頃です)
「何も加えない、何も減らせない」ことを条件に寄贈したという。
「なにも足さない、なにも引かない」ってモルトウィスキーの広告コピーみたいですね。
確かな自信がなくちゃ、こうはいえないのでしょうが、でも、子どもがいなかったっていうところに、なにか寂しさを感じますね。
ノルウェーまだ~む
確かに聞き覚えがあると思ったらシングルモルトですね!
ハートフォード家の財産も、ウォレス家の財産もそのお嫁さんの実家の財産も合わせた巨額の遺産がありながら、結局引き継ぐものがいないとは、本当に哀しい話ですね。
でもそのおかげで、どこにも四散せずに完璧なお宝が拝見できる私たちは、幸せです。
まみっし
Happy Valentine's day!
バフタでも、『英国王のスピーチ』が総取りしましたね。
クラシックな雰囲気が、やたら情緒に響く今日この頃です。
沢山の人を喜ばせて下さる遺産の生かせ方が出来る方って素敵ですね。どう転んでも、そういう事が出来ない自分にとっては憧れ意外の何ものでもありません。
メンテも大変でしょう。
ノルウェーまだ~む
ウォレスコレクションは入場無料でこれだけのものを見せてくれるのだから、凄いことですよね。
イギリスの国の懐の深さとでかさを痛感します。
日本の何でも入場料を取るのにショボイ観光地はもう少し考えた方がいいですよね。
メンテはよくされていて、壁紙も新しく美しさが保たれていました。
hino
ウォレスっていうとブレイブハートを思い出すよ~。
タッセルだ~(^^)
エメラルドグリーンのお部屋もなんとも素敵。
シャンデリアも、アロマポットも。
いいもの観させてもらいました。
でも、この眼で実際に観ないとねっ(^^)b
マリー
豪華絢爛とはこういうのを言うのでしょう~。
素晴らしいよね。
どや顔に笑った!
そういえば、有名な絵画ってあんまり表情ないね~
どや?どや!?っていうのがいいな。
マリー・アントワネットさん、こういう柄がお好みで?なんか意外・・・
サーモンがめっちゃ美味しそう♪庶民はここに目がいくのだ・・・あはは。
ノルウェーまだ~む
何しろクラクラするような豪華さだったよ、本当に。
特に他のマナーハウスに比べて、壁も塗り替えているし、壁紙も新しくしているせいか、すっごく明るくて綺麗だったわ。
(他所は当時のまま残しているので、ちょっと薄暗いし薄汚れていたりする)
タッセル!房とかかいちゃったけど、タッセルだよね。(笑)
ノルウェーまだ~む
初めてであったのよ、どや顔の肖像画。
これは「騎士」となっているけど、本当はコスプレをした商人らしいので、どーや?って顔になっているのだと思うわ。
もっとアップでお見せしたかったわ☆
q うぉぉぉぉぉぉぉぉっっツボに入った
それは自然と絵を観たり
町並み、美術館巡りとなった私
びしっとツボにはまったぜ
今。ざっと考えただけだけど
バラスター は1720年制かなぁ?!
待て!!
オノレ・フラゴナール「ぶらんこ」だぞ
瑠璃色を持たないメーカーは一流ではない
とまで言わせたセーブルブルー
うっわほ~~
あ!でも!イギリスは同時期頃は
「ボーンチャイナ」誕生だもんさ
つまるところ
美は人によりて守られる
それは現在にても普遍
静に美は存在する
って~感じかね
以前。倉敷の大原美術館で
「エル・グレコ」を観たの
もー涙を流してしまったqとqママ
あ~~いーな~~~
(∇〃)。o〇○ポワァーン♪
カフェって
Oliver Peytonが運営してんじゃなかった?!
ノルウェーまだ~む
私もぴたーっとツボにハマッタ博物館だったよ。
カフェはその通り、Oliver Peyton'Sカフェってなっているね。
入場無料なのでカフェにだけ行くのもよさそう♪