「わが母の記」究極の私小説

文豪井上靖が書いた自伝的小説「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」が原作。
実際に井上靖の自宅で撮影されたこともあって、普段は知る事のない昭和の文豪の生活を垣間見られるだけでなく、文豪が臆面も無くさらす本質的な弱さを垣間見る事のできる作品だ。



とにかく映像が美しい。
とにかく役者がすばらしい。

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「わが母の記」 公式サイト

<ストーリー>

作家の伊上洪作(役所広司)は、とにかく厳格な父親だった。その上心配性で、常に3人の娘たち(ミムラ・菊池亜希子・宮崎あおい)を必要以上に気にかけていた。
伊豆に住む父(三国連太郎)が亡くなってから、母(樹木希林)の記憶が薄れていき始め、面倒を見る妹夫婦(キムラ緑子)も手を焼くようになってきた。
幼少期に母に捨てられたと思い込んできた洪作だったが、徘徊する母の真実の想いは・・・・・


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妹ふたりは父の台湾駐在で大変な思いをしているので、行かなかった兄さんはラッキーだったというのだが・・・

台湾で苦労していたことを聞いても、自分だけ日本に置き去りにされて、祖父のめかけの家で肩身の狭い思いをして暮らしと思い込んで根に持っている洪作は、意固地になるばかり。

母、樹木希林の若い時を、お馴染み娘のややこさんが演じている。(専門職?)



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父親に反発する末娘(宮崎あおい)は、おばあちゃんにはやさしい

さすがセーラー服も違和感のない宮崎あおいは、唯一学生から大人の女性まで演じられる数少ない女優だ。



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厳格な父親像は、昭和のお父さんそのもの。

厳しすぎて、お手伝いさんから書生さん、妻、娘たち全員がピリピリしている様子は、文豪の家ならではなのかもしれないけど、『厳格な父親像』に慣れてないと、ちょっと厳しすぎるのもねぇと思ってしまう。

でも、ラストのほうで実は妻は、『夫の母に対する思い込みと想いの強さは理解済み』というのが判明して、ははん、妻は夫にかしずいているように見えて、実はしっかり手のひらで転がしていたのだとちょっとホッとしたりして。


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ブーブーくん(運転手 兼 書生さん)の役は、ももえちゃんと三浦友和の息子

あまりオーラを感じない青年は三浦貴大。
これからの彼の将来がやや心配になる。


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介護の大変さがしみじみ・・・・

文豪の家では、お手伝いさんもいるし、書生さんも居るし、この程度では介護が大変とは言わせないよ、とつい思ってしまうけど、映画のテーマはそこではないので。
一人母との想いの行き違いに苦悩する洪作が、母がボケて初めて知る真実に涙するシーンは、号泣。


なのに、洪作があわてて照れ隠しに顔を洗ってしまうと、こちらまで感動の涙が治まっちゃった。
すごく感動物語なのに、『溢れる涙が止まらない』かんじにならなかったのは、そのせいかな?

この記事へのコメント

  • KLY

    邦画では今のところコレがナンバー1です。樹木希林さんの演技の見事なことといったら!出てる人みな本当に一流ですからね、そりゃもう見応えあります。が、多分ヒットしないだろうな。私小説ってこともあるけど、今の日本ってこの手の地味な作品は全然だめだし…。
    2012年04月26日 20:30
  • ノルウェーまだ~む

    KLYさん☆
    本当に一流ばかりを見事に揃えていて、贅沢な映画でしたよね。
    なんせ三国連太郎なんて、死ぬだけですぐ居なくなっちゃうし。ひえー!年取ったぁ~って思っちゃった。
    ただ、エンタメに抵抗のなくなっている最近の年配の方の、見たいと思う映画がGWにあるのはいいことですよね。
    2012年04月26日 21:00
  • まっつぁんこ

    ブーブーくんは中途半端でした。
    どのように発展するのかと思ったらフェイドアウト。
    あおいちゃんの(新)婿にどうだったでしょう(笑)
    2012年04月26日 22:40
  • maru♪

    まだ~む★
    うん!分る! 号泣したりしてるんだけど、
    「溢れる涙が止まらない」感じじゃないんだよね・・・
    やっぱりはぐらかしがあるからかな?
    でも"古きよき日本"って感じがよかったな~
    昔の日本の風景をホントに美しく撮ってたね!
    そして樹木希林の恍惚の表情。゚(゚´ω`゚)゚。ピー
    あの演技はすごい!
    2012年04月27日 00:14
  • rose_chocolat

    私もこれは邦画の中では好きな部類ですね。
    こういうキャスティングだと、女優陣は宮崎あおいにシフトしたつくりなのかなって考えてしまうんですが、決してそうじゃないところがいい。
    決まり切った配分だとつまらないですよね。キムラ緑子さん、真野恵里菜ちゃん、菊池亜希子さんなどの脇もしっかり存在感あってよかったです。
    2012年04月27日 10:37
  • ノルウェーまだ~む

    まっつぁんこさん☆
    そうなんです、ブーブーくんのところでひと悶着あるのかと思ったら、案外スルーと終わってしまって・・・
    これぞ私小説というかんじの展開ですね。
    2012年04月27日 11:23
  • ノルウェーまだ~む

    maruちゃん☆
    樹木希林のだんだんと恍惚の人になっていく様子が、本当に巧くてそこは素直に感動だったね。
    役者あっての物語だったわ。
    2012年04月27日 11:25
  • ノルウェーまだ~む

    roseさん☆
    丁寧なつくり、見事な演技で邦画の中ではかなり上質でしたね。
    それも豪華な役者を集めて、結局散漫になっちゃうのと違って、それぞれが完璧に役をこなして、全てのバランスが完璧でした。
    2012年04月27日 11:27
  • たいむ

    こんにちは!
    そうそう、あそこで一気に涙がそそられるのだけど、後を引かない感じは私も思いました。それまでの流れもあるのかな?

    で、私も奥さんがちょっぴり皮肉も込めて今だから言う本当の話のトコが好きです。
    夫は大切な稼ぎ頭だし、やはり真に家庭を仕切っていたのは妻でしたねぇ(笑)
    2012年04月30日 14:33
  • ノルウェーまだ~む

    たいむさん☆
    本当にそうですね。これを「妻の鏡」っていうのでしょうね。
    しっかり家長を立てておいて、実は何もかもお見通しっていうのが本来あるべき姿なのでしょうか。
    見習わなければ☆
    2012年04月30日 23:15
  • AKIRA

    ドライなのに優しさが伝わる世界感が好印象でした!

    見事な演技も含めて,
    画面のすべてが美しかったですね~
    2012年05月01日 18:04
  • にゃむばなな

    この映画のもったいないところは、涙腺が緩む刺激が持続しないところなんですよね。
    ですから溢れる涙が止まらないにならない。
    誰もが感じる母親への思いを描いているだけに、そこは溢れる涙が止まらないようにしてほしかったですわ。
    2012年05月01日 20:29
  • ノラネコ

    丁寧に作られた良作でした。
    十年間もの歳月を使って描かれたのは、結局かけがえのない拠り所としての家族の姿だったというのも良かった。
    昭和家族史として見応え十分でした。
    感動の寸止め感があるのは、本作が良くも悪くも原田眞人のテクニックで見せる映画だからでしょう。
    常に動き続けるからタメがないのです。
    2012年05月01日 23:06
  • ノルウェーまだ~む

    AKIRAさん☆
    本当に良質の作品でしたね!
    何しろ映像が美しい、話も美しい。
    演技も見事でした。
    2012年05月01日 23:52
  • ノルウェーまだ~む

    にゃむばななさん☆
    そうなんです!
    案外あっさり涙が止まっちゃって、あれれ?って。
    あれだけ長い人生ひっぱってきたこだわりなんだから、作品の最後まで引っ張って泣かせてほしかったです。
    2012年05月01日 23:53
  • ノルウェーまだ~む

    ノラネコさん☆
    原田眞人氏は常に動き続けるテクニックなのですね。
    もうすこしタメを利かせたら、涙だだもれになりそうでしたのに・・・
    ベタに泣く作品が好きなわけじゃないのですが、何か物足りなさを感じました。
    2012年05月01日 23:56
  • SGA屋伍一

    観客は涙は止まっちゃうかもしれないけれど、わたしはあそこで井上先生が顔洗ってなんでもないフリをするのがよくわかります。男とゆうのはあんまし人前で涙を見られたくないものなのでね。「男子たるもの親の葬式といえども涙を見せるべからず」 『魁!男塾』の有名なセリフにもそうあります

    冒頭で出てきた天城のわさび田、もしかしたら夏にみんなで立ち寄ったところじゃないかな? 天城にはああいう畑がいっぱいあるのかもしれませんが…
    2012年06月19日 15:57
  • ノルウェーまだ~む

    伍一くん☆
    私もあれ?伊豆のわさび田!?と思ったのですが、ちょっと景色が違うかも・・・と。
    いくつかあるのかもしれないですね。

    男塾は知らないんだけど、そうかー、男とゆうのはそういうんですかぁーふむふむ。
    そこのところふまえても、もう少し顔を洗うシーンで余韻を残してほしかったかも☆
    2012年06月19日 22:11

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