実際にあったノルウェー少年矯正施設での、虐待と反乱と鎮圧。
凍てつく景色と少年たちのリアルな眼差しに釘付けになる。
公開初日サービスということで、なぜかレッドブルが1缶ずつサービスされた。
不思議な事に年配の人ばかりの客層だったけど、これは若い人や青少年、そして腐女子の皆さんには特にオススメ。
「孤島の王」 公式サイト
原題は「Kongen av Bastøy」 バストイ島の王
バストイのオーはOに串刺し。口の形をオウにしながら、ウーと発音する、ノルウェーの独特のアルファベットである。
<ストーリー>
1915年、ノルウェーの孤島バストイ島の非行少年の矯正施設に、元船乗りのエーリング(ベンヤミン・ヘールスター)が送られてきた。
反抗的な態度の彼のお目付け役は、卒院も近い模範的な少年オーラヴ(トロン・ニルセン)だった。
脱走を繰り返すエーリングと性格は違うが心を通わせていくオーラヴ。
ついに卒院のその日、寮長から性的虐待を受けている少年のことを訴え出たのだが・・・・・
私物は没収され、渡された制服を持ってすっかり裸で入所する
入ったその日に番長にも目をつけられるほどの、体格もよく反抗的な少年エーリングはこの日からC19と呼ばれる。
説明は無いけど体には傷が無数についていて、1通の手紙を大事そうに持っている。
ブローテン寮長(クリストッフェル・ヨーネル)に狙いをつけられた

力仕事が苦手でひ弱なC5は、細身の金髪美青年。そりゃ、まあ狙われるね。
監獄のような生活から抜け出そうと、脱走するたびに反省室へ・・・・
独裁を敷く院長は、ノルウェーの名優ステラン・スカルスガルド。
悪役顔の彼だし、当然そういう目で観ていたのだけど、あれ?案外良識のある立派な院長だよ・・・・と思っていたら、やっぱり!?
裏切らない結末が、少年たちの魂に火をつける!
船での脱出を試みるが・・・
ついに計画は成功して船で海を渡ろうとするも、何しろ海は凍っている!!
舞台になったのはオスロフィヨルドにあるバストイ島。
フィヨルドは海なんだけど、陸地に深く切り込んでいるので波が無くて冬は凍るんだよね。
そういえばサンビカのフィヨルドで、氷に穴をガリガリと専用の道具で開けて、ワカサギ釣りをしたっけなぁ~
少年たちのキャスティングは問題児を集めた
オスロの演劇学校では適当な少年を集められなかったことから、地方の実際に施設に入っていた子どもや、問題児を集めてキャスティングしたのだとか。
通りで、主役の子以外の子どもたちまでもが、抜き差しなら無い目をしているわけね☆
このステラン・スカルスガルド意外はほとんど無名の役者、というのが実にリアリズムを生み出し、この映画を成功に導いている。
優等生だったはずのオーラヴは、卒院の日についにお礼参りをして・・・・
教師の側からみれば「腐ったミカン」の影響ってことなのだろうけど。
しかし本当に腐っているのは、院長や寮長など大人だ。
何しろ、オーラヴは教会の金を盗んだ罪だけで、6年もここでの暮らしを強要されているのだから、どう考えてもおかしい。
ノルウェーのこの地で行われていた『8歳から18歳までの少年に教育をしながら、体罰ではなく、自然の中で労働をする事で問題児を矯正していくシステム』は、当時ヨーロッパでは「見習うべき模範」と考えられていた。
だけど実際は、閉ざされた世界の中で、体罰と恐怖政治によって立場の弱いものを抑え付けるものになっていったのだった。
この様な事はこの施設だけに限った事ではないのだろうけど。
ついに鎮圧には軍隊が押し寄せ・・・・
ノルウェー史上、軍隊が一般市民を鎮圧したのは、このときと1950年のストライキの時のたった2回だけなのだそう。
中には幼い子どももいるのに、子どもたちに銃を向けてまで軍隊が鎮圧に乗り出すなんて。
ラストは切ないせつない。
エーリングの読む鯨の物語は、オーラヴによって記される。絵画のような情景が心の奥深くに刻み込まれる映画だ。
今日のように夏みたいに暑い日には、凍てつく景色を観て涼しくなって、同時に熱い涙を流そう。
この記事へのコメント
みすず
これもこっちでは上映ないよー!
ちょっと辛い感じの映画かな?
ノルウェーまだ~む
東京でもたった1館でしかやってないくらいだから、地方ではかからないのかなぁ・・・
すっごくオススメなのに。
確かにちょっと辛いけど、ちょっとスッキリ・・・な映画だよ。
マリー
こちらで一館しかない単館系劇場で来月以降に公開予定~
途中まで読んで今は我慢したよ☆
観たら来まぁす。
私も好きな予感がするんだよね…
ノルウェーまだ~む
コメありがとう~♪
マリーさんの大好物のイケメンくんは・・・1人くらいかなぁ。基本的に出ないよ(笑)
あとハッピーエンドとは言えないから、どうかなぁ~
でもお勧めなので観てね♪
mig
これ、期待値の方が高まっちゃった。
ラストの方が断然ぐっと良かったんだけど、
ちょっと途中まではフツウに脱獄の話にありがち定番という印象で淡々としてたから。。。
あとは少年犯罪のハナシだと思い込んでたの、だからフツウに良かったくらい☆
こんな寒々しいノルウェーの海で、ワカサギ釣り!!
してみたーい♥
5月映画はまたくるね、明日もめちゃ早いのでまたあらためて!!
ノルウェーまだ~む
今日は頑張って2本観たんだね。
すごくいいって言い過ぎたかな?
私は観終わってすぐは、そこまでいいってかんじしなかったんだけど、思い出しながら書くうちにいいな~って☆
このノルウェーの凍てつく景色と、淡々としたストーリー展開がマッチして良かったよ。
KLY
たった2回のうちの1回が少年たちだけの収容所とはなぁ…。現実に驚くと同時にラストは確かに切なかった…。出来たらもう少し時代背景が知りたかったな。何か全然大したことしてないのにえらいこと収容されてるし。そんな法律だったのかしらん。
ノルウェーまだ~む
多分本当の目的は、「不良少年を更正させる」という目的で作られたものなのでしょうね。
なので重犯罪者は刑務所行きで、こちらは『ほとんど刑務所』のようだけどここは少年院ってことで。
「ヒューゴ~」でも出てきたけど、昔は盗みをしても子供でも刑務所へ入れられていた(つまり盗まれる側の都合のいい法律で)事実があるので、ヨーロッパの時代背景的に普通の事だったと思われます。
私は彼らがどのような罪で収監されているか、どんな時代背景だったか、あえて語らない事で純粋に彼らの心理状態をクローズアップさせていて秀逸と思った私です。
まっつぁんこ
なにかの冗談かと思ったら史実とはびっくりです。
ノルウェーまだ~む
『抑圧された中で爆発する若い力の反乱』は大人のそれと違って軍隊でしか抑えることができなかったということでしょうか。
キリスト教的思考で始まったこの施設が、「愛を持って奉仕すれば更正される」はずだったのに、「力で抑え付けようと」したために、こんな事になってしまったという・・・教育の本質的な部分をついていて深いと思いましたよ。
zooey
でもあまりつらそうならやめようと思っていたのですが
こちらの感想を読んで、益々観たくなりました。
>昔は盗みをしても子供でも刑務所へ入れられていた
まだ~む様はご覧になったんじゃないかと思いますが
「マグダレンの祈り」も、ちょっと似たような感じです。
これは、アイルランドの女子矯正施設「マグダレン修道院」に入所した少女たちの物語なのですが
男の子にちょっと色目を使ったり、主人公のようにレイプされた女の子が強制的に入所させられるのです。
軍隊こそ出てきませんが、いじめとしか言いようのないかなりひどい教育がそこでなされていて
こんなことがまだ近代まで行われていたのかと驚きました。
ノルウェーまだ~む
「マグダレンの祈り」は実はまだ見ていないです。
女子の矯正施設なのですね。今度探して見ます~
弱いものに対する人権の侵害は、100年前も今もさほど変わってないのかもしれないですね。
さすがに万引きでこのような施設に入れられる事は今はなくても、施設で行われる虐待など表に出ない事実が結構あるんじゃないかなぁ。
にゃむばなな
やはりアルカトラズ島でもそうでしたが、孤島に監獄を作るのはダメですね。
ノルウェーまだ~む
難攻不落的な監獄は、より一層閉鎖的であり、強制的であり、より反抗心を掻き立てて、より脱獄しがいがあるんじゃないでしょうかね。
SGA屋伍一
http://hamusoku.com/archives/7243501.html
ほかではいい人な役が多いステランさんが、こちらでは「悪い大人」の代表みたいだったのが辛かったですね。あれ? 『ドラゴンタトゥーの女』でも悪い役だったかな?
アヴェンジャーズは確実に観るので、ドラゴンも観てれば今年のステラン氏出演作品コンプリートだったんだけどな~
ノルウェーまだ~む
ステラン氏は私の中では「悪い人」のイメージ強いかも。
ノルウェー写真綺麗だねー見させてもらったわ。
懐かしい景色やら、あまりに美しく撮られてCGみたいなのとかあったね。
実際は過酷な寒い時期も長い、この映画のような場所ではあるよ。