その3大泣いてしまう絵本とは
「泣いた赤鬼」
「ごんぎつね」
そしてこの「グスコーブドリの伝記」
それがまた、こういう絵本に限って、何度も読んでほしいとせがまれるのだ・・・
「グスコーブドリの伝記」公式サイト(7月7日公開)
ご存知「泣いた赤鬼」は、友達の青鬼のために自分が悪者になって住処を出て行くお話。
「ごんぎつね」は、漁師が母親のために獲ったどじょうを盗んだゴンが、その母が死んだと聞いてから気の毒になって毎日栗やまつたけを届けるが、 泥棒にきたと勘違いした漁師に銃で撃たれてしまうお話。
そしてこの「グスコーブドリの伝記」は、飢饉に困る農民のために研究を続けるブドリの話を書いた宮沢賢治の小説だ。
家族は楽しく暮らしていたのだが、冷害の続くある晩、ついにお父さんは「森へ行って遊んでくる」と言い残して家を出てしまう・・・・
<ストーリー>(ラストに触れています)
イーハトーブの森で両親と妹のネリと幸せに暮らしていたブドリは、度重なる冷害によって食べ物も底をつき、ついには子どもたちを置いて両親は家を出てしまい、ネリは知らない男にさらわれてしまう。
ネリを追いかけるも力尽き森で倒れていると、てぐす工場の工場長にひろわれ、森にてぐすを掛ける仕事を貰うのだった。
仕事が終わるとブドリは里へ降りていき、そこで出会った赤ひげの沼畑を手伝う事になる。
しかし翌年からの干ばつのため、ブドリは礼を言って旅に出る。
大きな街で念願のクーボー博士の授業を受けたブドリは、彼の紹介で火山局に勤めはじめた。
火山の研究から天気を左右できると学んだブドリは、再び襲ってきた冷害を解決する為に、「ぼくにもできることがある」とひとりカルボナード島へ渡り、命に換えて火山を爆発させるとイーハトーブにはまた明るい笑い声が聞こえるようになったのだった・・・・・
↑猫が宙を舞う幻想的なシーンは、まるで夢オチだったかのようだけど、実際にはちゃんとてぐす工場で働いている
そもそも何でネコなのか?
それは宮沢賢治の世界を限りなく忠実に漫画に描いている『ますむらひろし』がキャラクターデザインをしているからだ。
彼のデザインで過去にも『銀河鉄道の夜』が映画化されている。
実はパパンの婿入り道具の中に、ますむらひろしの「アタゴオル物語」の他に、この宮沢賢治シリーズの「グスコーブドリの伝記」「風の又三郎ー雪渡り」などがあったのがこのネコとの最初の出会い。
彼の作品は一文字一句宮沢賢治の文章ままに、主人公をネコに置き換えて、彼の幻想的な世界を見事なまでに表現している素晴らしい漫画なのだ。
ますむらひろしのファンタジックな世界観が大好きなパパンは、この映画を何よりも楽しみにしていたわけで。
↑ますむらひろし作品には欠かせない『ひでよし』風ネコも登場
過大に期待しすぎないで観よう~と心していたけど、なんのなんの。
思った以上に美しい大自然と、描き込みの細かいレトロな近未来都市は中々の出来栄え。
音楽も美しく情緒豊かで壮大、素晴らしい映像とマッチして、夏休みに向けて子どもと一緒に鑑賞するのにぴったりだ。
ぜひこの映画を観て→ますむらひろしの漫画を読んで→宮沢賢治の本を読んで、夏休みの読書感想文を仕上げよう!(必ずこの順序で!)
ただし映画は壮大すぎて、お疲れの方は安らかな眠りへ、小さすぎるお子様は途中で飽きてしまうだろう・・・・と思いきや、案外子どもたちのほうが純粋に賢治の世界に入っていけた様子。
「周りお母さんと小さな子どもばっかりだなーと思ったら、コレ親子試写会じゃん!」と帰るなりねえね。
どうしてもパパンと観たいって言ってたでしょ?間違いなく親子だしっ
↑ややジブリ?
幻想的な世界観が実に宮沢賢治にマッチしているますむらひろし。
なぜキャラクターデザインだけでなく、全ての絵コンテを任せなかったのだろう?
これではジブリだよ。
途中挟んできた原作にも無い『夢か現か』の謎のマントの男のシーンは、まるまるジブリだし。これならいっそのことこの部分無い方が、ずっとスッキリそして短くできたんじゃないかしら?
お終いのほうは、残念ながらまったりしすぎて肝心な感動部分でウトウトしちゃったよ。
↑クーボー博士はぶっとんでいて、柄本明の声がぴったり!
相変わらず声優を役者にやらせるのはどうよ?と思うけど、ブドリの声の小栗旬と博士の柄本明はなかなか良いね☆
ただしネリは下手すぎてイライラする~
ぶっとんだ博士は宮沢賢治自身らしい。
彼も教師のとき、時々窓から外へ飛び出したり、授業と称して森を子どもたちと散歩しながら「ほほーっ」と奇声を上げたりしたのだそうだ。
↑窓から飛行船に飛び移る~
さて、話を戻すと「泣いた赤鬼」「ごんぎつね」そして「グスコーブドリの伝記」
この3冊に共通しているテーマは・・・・・・・そう『自己犠牲』だ。
加えて3冊とも特徴的なのは、ラストの1ページに描かれているのが、感情でも表情でもなく事実だけということ。
この事実に全ての感情を詰め込んで尚、読者に主人公の感じた事、本の伝えたい事全てを集約し尽くしているのだ。
ここが実に素晴らしいのである。
↑あの時の緑の畑が蘇り・・・・・
肝心のこの映画のラストはと言うと・・・・・・・・・・・・・・・あれぇ?
子供向けに残酷な真実をボカしたのかなー?
原作と違って、まるで死神のような「謎のマントの男」がブドリを連れ去る事で、火山の噴火という自然現象を引き起こしてくれたみたいになっている。
もしかすると精神力が持たなくて大切なそのツボの部分を見逃したのかな?
ブドリの大切な一大決心が、コレでは何だか判らないよぉう!
私が滝のように溢れる涙を拭くために準備しておいたハンカチの使い道を教えて欲しいものだ。
この記事へのコメント
みすず
これ試写会が当たったんだ~♪娘と一緒に観てくるよ!
ノルウェーまだ~む
試写行くのね!感想楽しみにしているよ~♪
みすず
とっても良かった~^^
映像が凄く綺麗だったし^^音楽も良かったし!
ますむらひろしさんの絵はいいね~♪好きだわ♪
こっちも親子試写だったけど、高校生の女の子を連れたお父さんがいたよ~^^一番前に座ってたけど、大丈夫だったかしらね^^
そうそう、小さい子ばかりだからうるさいかな?って思ったら意外とみんな熱中して見てたのか静かだった~♪
ノルウェーまだ~む
やっぱりいい作品というのは、幼い子ども達にもちゃんと伝わるんだね。
それだけ宮沢賢治はすごいってことかな。
とにかく映像が素晴らしいから、大画面で観たいよね。
ますむらひろしの漫画も見てくれたのね♪いいでしょ~
KLY
最後が改変されてたんだってね。地熱発電ってのを聞いたとき、やっぱり3.11以後の再生可能エネルギーを意識したのかなって思ったよ。だとしたら、宮澤賢治の世界観を残した上手い改変だったかなって思います。
ノルウェーまだ~む
最後が改変なのかなぁ?
私は原作を読んでいるので、もう頭からそういうつもりで見ていたせいか、気が付かなかったくらいなのだけど、地熱発電ではなくて、火山の噴火を管理する火山局だったんだよね。
でもあえて改変したんだ?
宮澤賢治&ますむらひろしの世界なら、そういう具体的な表現はふさわしくないと私は思うんだけど・・・
電気など使わずに何でも動くファンタジックな世界が本当はこの話にはあるのに~とちょっと残念でした。