ノンフィクション大賞に輝いた元英国人将校エリック・ローマネスクの壮絶な戦争体験を描いた自叙伝の映画化。
戦争体験とかけ離れた現代の恋愛が美しく描かれ、当時の記憶とのギャップがより一層際立っている。
真田広之が出ているとは知らずにいたので、その重要な役どころにびっくり☆
KADOKAWA映画というと、邦画の王道エンターテイメントなものが印象に強く、こと戦争映画に関しては「戦国自衛隊」などの記憶が強烈過ぎて、どうも英霊を美化する傾向があると勝手に決め付けていた私。
そんなわけで最初にKADOKAWAと出たところで、急激にテンションが下がってしまったのだった。
しかし、そんなことは杞憂に終わり・・・
「レイルウエイ 運命の旅路」公式サイト (4月19日公開)
<ストーリー>
鉄道好きのエリック・ローマネスク(コリン・ファース)は列車の旅の途中で出会った美しい女性(ニコール・キッドマン)に一目ぼれする。
幸せな結婚生活を始めたものの、ひどく悪夢にうなされるエリックは第2次大戦での捕虜生活で受けた苦しみを引きずっていたのだった。
退役軍人の会のフィンレイ(ステラン・スカルスガルド)から、当時日本兵の通訳をしていた男がまだ生きていると聞いたエリックは・・・・
「The Railway Man」というエリック・ローマネスクの自叙伝を映画化したものだけど、直訳すると「電車男」!?
「電車男」同様、鉄道オタクのエリックが、絶世の美女のハートを射止める。
前半の二人の恋愛時代は、まるでこの映画が純愛ものだったっけ?と思わせるほど、美しい情景で描かれる。
特に海で無邪気に遊ぶシーンは、絵画のよう☆
寒そうにどんよりした天気が、大人の恋をしっとりと演出する
スコットランドならではのどんよりしたお天気ばかりなのに、とても美しい景色の数々。
だけど、ずっとどんよりしているんだもの、益々過去の嫌な記憶も思い出すよね・・・
実際イギリスもスコットランドも雨や曇りの日が多いから、この国で元気ハツラツにしていられる方が不思議なくらい。
退役軍人の会でも何も語ろうとしないエリックに、戦友のフィンレイは重大な事実を告げる
妻との平和な日々、退役軍人の集まりと、比較的静かなシーンが続くのでちょっとだけうと・・としてしまった。
それで見逃したとは思えないのだけど、フィンレイが取った行動は説明不足というか、合点がいかなくて。
ただ自叙伝だけに全て事実な訳で、そう思うともう少しエリックだけでなく、フィンレイも背負っているものが見えてくるべきだったような。
かつて通訳をしていた日本兵の永瀬(真田広之)がいるタイへ、運命の旅路をいく
景色は一転して南国の景色。
エキゾチックなタイの風景に見惚れている場合ではなく、第2次大戦中へと場面が移ると、途端に戦争映画へと変貌する。
ここからはクワイ河マーチでも有名な『戦場へかける橋』のモデルとなった泰緬鉄道建設の過酷な強制労働の場面になるわけだけど、先ほどとは打って変わった太陽いっぱいのタイは、口応えした英国兵士への殴打や、エリックが受けた拷問以外は、何故か悲壮感が思ったよりない。
コリン・ファースの若き頃を演じたジェレミー・アーヴィンは「戦火の馬」でデビュー
いいかんじに雰囲気が良く似ているコリンとジェレミー。
彼のこれからも楽しみだわ☆
演技とはいえ、拷問シーンはいやいやいやそれはマズイでしょう?なシーンの連続。
かつて自分が拷問を受けたその場所で、通訳だった永瀬は戦争体験を語る仕事をしていた
自分たちが加害者の側であったところで、戦争体験を語る仕事?と、やや疑問もわきつつ。
永瀬自身はあくまでも通訳だった・・・・という事で、戦犯を免れていたり、ありのまま通訳せずに都合よく(?)伝えていたりしたのとか、そのあたりはどうなの?という気持ちがぬぐえない。
フィンレイが命を賭してまで託したもの、大きな覚悟でタイまで来たエリック、この日が来るのを覚悟していた永瀬・・・・
実際に体験して初めて戦争の恐ろしさが判って謝罪するというのでは、その覚悟も本当はあったの?と思ってしまい、ラストの感動場面もやや引き気味になってしまったのは事実。
そのあたりの心の動きをもうすこしじっくりと見せてほしかった。
ただし、以後ふたりが友情を育むことが出来たのが事実である以上、自らの力で復讐の連鎖を断ち切ることが出来る人間とは偉大であると、胸をなでおろさずにはいられない。
KADOKAWA映画も侮れないぞ。
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この記事へのコメント
セレンディピティ
「戦場にかける橋」が好きで、コリン・ファース主演ということで、この作品、是非見たいな~と思っていたのですが、壮絶な拷問のシーンがあると聞いて、躊躇してしまいました。(バイオレンスがとにかく苦手なので)
「戦場にかける橋」に登場する日本人将校はサムライ魂を持った好人物に描かれていましたが、それはまれなケースだったのかもしれませんね...
真田広之さんは、ハリウッドでいろいろな名優たちと共演されていて...これからのご活躍がますます楽しみです。
ノルウェーまだ~む
わたしも「戦場にかける橋」は何度も見ました。
敵であるのに、酷い人物には描かれてなかったですよね。
実はこの強制労働を強いられた人たちの証言からいくと、あくまでも「戦場にかける橋」はお話で、事実とはかけ離れたものも多いみたいです。
実際には8万人のうち4万人が怪我・栄養失調・病気で亡くなったそうですが、アジア人労働者に対しての扱いが一番酷かったとも。
拷問シーンは「それでも夜は明ける」ほどは酷くないですよ。
まっつぁんこ
エリックが永瀬さんの生存を知ったのは、永瀬氏がNYタイムズかなんかに投稿した「戦場にかける橋の嘘と真実」という記事だそうです。エリックは永瀬氏に手紙を書き、永瀬氏はただちに返信を出した。そこから交流がスタートして二人は会うことになりました。映画の進行とは全然違います。
ノルウェーまだ~む
えーっ!そうなのですか?
自叙伝を元に・・・ということなので、かなり事実そのままなのかと思いました。
うーん、それなら逆にそのままやったほうが良かったような・・・?
rose_chocolat
演技自体はベテラン揃えててよかったとは思うんですが、奥歯に物が挟まった感じの映画はいかんです。
ノルウェーまだ~む
事実を良い方向へ変えたのならいいけど、奥歯にモノが詰まったかんじに変えたら、確かにいかんですねー
ノラネコ
今では「ハンガーゲーム」など洋画も結構手がけてますよ。
これも地味な作品ながら、じっくりと人間心理を見せてくれる秀作。
真田広之は海外行ってから一番良い役をもらいましたね。
ノルウェーまだ~む
『殺陣をやらせたら右に出るものはいない』真田広之のオハコは封印しても、十分に通用する演技力をアピールできたことは、何よりですよね。
これから益々ハリウッドで活躍していってほしいです。
KADOKAWAはなるほどそんな大きくなっているのですね。これから偏見を持たずに観たいです☆