ヘレン・ミレンは言うまでもなく見事だ。
眉の動き、目の表情、シワのひとつまでもが感情を表す。
この彼女の演技力を持ってして、初めて成り立つ物語。
勿論、脚本もいいしライアンの弁護士も立派だったし、名画の他ゴージャスな衣装・小物も素晴らしいのだけれど。
ナチスに全てを奪われたというだけで充分胸を締め付けられ、見事に取り返したとうだけで十分感動的なのに、哀しいかな名画の行く末を思うと実話を映画にする難しさも感じてしまうのだ。
「黄金のアデーレ 名画の帰還」 公式サイト(11月27日公開)
<ストーリー>
アメリカに住む82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、姉の死を契機に、第2次大戦中にナチスに奪われた叔母アデーレの肖像画、クリムト作「黄金のアデーレ」をオーストリア政府から返還すべく裁判を起こす。
友人の息子で新米弁護士のランドル(ライアン・レイノルズ)は、絶対に返還しないと豪語するオーストラリア政府に諦めかけたマリアを説得し、何度もオーストラリアへ飛ぶうちに・・・・
アメコミ史上最もアホっぽい印象だったグリーン・ランタンのライアン・レイノルズも、ちゃんと真面目な弁護士に見えるから役者って凄い
まだまだ新米で、肝心なところで資料を取り落としたり感情的になったりと、頼りない所もいい意味でぴったり。
そんな彼を信頼して、最後まで弁護士として雇うマリアとの心の絆もお話をひっぱっていってくれる大切な要素。
物憂げな表情の肖像画より数倍も美しいアデーレ(アンチュ・トラウエ)
実際のアデーレ本人の写真を見ると、確かに肖像画の雰囲気ある!クリムトさん上手♪と思うけど、アンチュがあまりに美しすぎてなんとなく違和感。
その他の若い時の姉と母、父と叔父まで雰囲気が似ていて、過去話の時には少々混乱し、よほどアデーレを印象つけたいのねと思っていたら、案外彼女の若くして亡くなったエピソードもさらりと会話で済ませて、ほとんど何もなかった。
何故叔母をそんなに好きだったのか、何故この絵画にそんなに思い入れがあるのかが見えてきにくい所は残念。
オーストリアで豪邸に住んで優雅に暮らしていたマリアの青春時代にもナチスの黒い影が忍び寄り・・・
豪邸の装飾品がとにかく見事。
有名絵画に骨董、ダイヤが散りばめられた大ぶりのアクセサリー、ストラリヴァリウスのチェロ・・・・とんでもない財宝がざっくざっくで、これではヒトラーに狙われるよねとつい。
大戦時代の話は最も見どころでもありスリリングなはずなのに、いよいよ亡命前夜のところまで何故か私も誘ってくれたママ友もちょっぴりウトウト。
それでも脱出に成功するくだりはジン・・・と涙が滲む。
オーストリアで手助けをしてくれたのは、記者のフベルトゥス・チュルニン(ダニエル・ブリュール)
「ラッシュ/プライドと友情」ではニキ・ラウダをやっていたということを思い出せないくらい太った?
記者なのだから記事に大きく取り上げて世論を煽るとか、手助けでも何か方法がありそうだけど、特に目立った事はせず、ただ最後まで寄り添って味方になってくれる。
あまり何も無いので、ひげ面だしもしかしたら裏の顔があるのかと勘ぐってしまったwa
返さない!としつこいオーストラリア政府に負けないよう、資料は完璧
映画では最高裁まで持ち込まれるので、途中の裁判が勝てているのか負けちゃってるのか、とにかくオーストリアが返さないわけで。
でも最高裁の判事の気の利いたコメントが本当に最高!(最高裁だけに)
いったいランドルのどんな一言が決め手になったの?今までだって同じような主張をしてきたんじゃないの?と、これで決定的に勝った!感が薄いので、どこに感動のピークを持っていけばいいのか少々迷ってしまった。
しかも、あれだけやってようやくわが手に取り戻した名画たちは、結局個人収集家とギャラリーに売って「黄金のアデーレ」は160億円になったって。
様々な団体に寄付したとなっているけれど、それならオーストリアの美術館にあったほうが、私たちも直接観ることができたのでしょうに・・・・と、せっかく劇中感動したものが最後に萎んできちゃった。
カバンにはいつも飴ちゃんのマリアは二度と踏まないと誓った故郷の地で・・・・
一方ではユーモアたっぷり、おばちゃん風を吹かせるマリアの、何もかも奪われたユダヤ人の苦悩を見事に演じたヘレンは実に秀逸!!
戦後70年、今年度最後の戦争映画としては、ややマイルドな締めくくりだけどそれもまた良かった。
奇しくも「ミケランジェロ・プロジェクト」と内容も公開時期もだだ被り~~(笑)
エンタメで観るなら「ミケランジェロ~」社会派で観るなら「黄金のアデーレ~」というところかな☆
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この記事へのコメント
zooey
もうご覧になったのね?
ウィーンのベルヴェデーレ宮殿でクリムトの「接吻」に感動して
これは観なくちゃ!と思っていますが
ちょっと微妙なようですね…
セレンディピティ
先日、ミケランジェロ~のところでこの作品のことに触れようと思っていたのですが...予告を見て楽しみにしていました。
結末は納得いかない部分もあるようですが、それも事実ということでしょうか。
ヘレン・ミレンの演技が楽しみです。
ノルウェーまだ~む
クリムトの実物をご覧になったのね!?うわ~羨ましいです。
結末は私の個人的な印象として微妙だっただけで、いわゆる絵画は取り戻せたのでちゃんとハッピーエンドになっているのですよ。
ただ私が超お金持ちだったユダヤ人のあまりの豪華絢爛な生活に嫉妬しただけ~(笑)ヒトラーと一緒だ!
映画祭とでも満点だったので、ちょっと期待し過ぎたのもあるかも。
ノルウェーまだ~む
人間きれいごとでは済まされないのが現実なので、当然の要求であると同時に、思えば人生をめちゃくちゃにされたのだから、復讐してもいいくらいなわけで…
納得いかないことはないのですけど、せめて数点は手元においておけばいいのに~~と、つい思っちゃったのでした。
まっつぁんこ
ついでにブロードウェイへ。その前に英語の上達が要る。
やりたいこと多すぎて早期リタイアが必須です
ノルウェーまだ~む
いいですね~
リタイア後の計画、目的があれば何でも上達が早いですし。
未来が輝いて見えますっ
yukarin
「ミケランジェロ・プロジェクト」もおなじナチスに奪われたもの同士ということで公開日を合せたのかと思いましたよ 笑
最後はギャラリーに売ってしまったけれども、それまでの経緯がわかったのは勉強になりました。ぜひ本物を生で観たくなりました~
ノルウェーまだ~む
多くの人に観てもらうためにギャラリーに売ったのは納得なんだけど、あれだけ伯母さまに思い入れがあって頑張ってきた裁判だけに、売ってしまうって~~と思ってしまったわ☆
金箔の中のレディを、私も生で観てみたいな~
オリーブリー
まだむさんと同じく、ラストちょっとあれれ~?って思っちゃったし(苦笑)
まあ当然、お金のことは絡んでくるとは思ってはいましたけど(苦笑)色々と複雑な感情が絡むのは仕方ないことですね。
ノルウェーまだ~む
ですよねー?
逆に憎んでいたオーストリアに一泡吹かせてやる!くらいハッキリしてたら、それもまた潔いと感じられるのだけど、ちょっといいかんじに盛っているのが煮え切らないので、余計にラストあれれ?になっちゃったのでした。
それでも多くに人の目に触れる機会ができたこの作品はまだ良かったほうなのかな。
風情☭
まぁ実話なんで、仕方がねぇと言えばしかたが
ねぇところなんすけど、数奇な背景を持つ絵画
の行く末…アメリカに渡ってしまったことにい
ささかムムっとなっちゃいますね。
あの絵自体、ウィーンにとどまりたかったよう
に思えてなりませんでしたし。
なんにせよ、家族や一族の歴史等の物語は見応
えがあってオモシロかったです♪ (゚▽゚)v
ノルウェーまだ~む
確かに実話通りなので仕方ないのでしょうね。
本人の手元に戻る話なら大喝采なのですけど、結局アメリカに渡ったあと他人に売ってしまったのね…となんとも言えない気分になりました。
数奇な歴史は見ごたえありましたね。
セレンディピティ
私、この絵をノイエ・ギャラリーで見ていたのです。
ナチスの存在を知らずに亡くなったアデーレの立場からするとと、オーストリアにあった方が喜んだのでは?と思いましたが、ノイエ・ギャラリーはオーストリア美術の美術館で、マリアの邸宅ともどことなく似ているのです。
マリアの心の傷を思うと、これもまた正しい決断だったのかな?と思いました。
ノルウェーまだ~む
なんと!実物をご覧になっていらっしゃるのね!?
素晴らしいわ~~
アメリカにおけるオーストリア美術専門の美術館というのなら、かなり納得ですね。
それで多くの方に観てもらえるなら、確かに正しい決断とも言えますっ!ようやくスッキリしました♪
たいむ
ただ、いまになってふと思うことは、マリアにも苦悩はあれどやはり色々な意味で幸運なのですよね。
絵が、今後も繋がれていくことを今は祈るばかりです。
ノルウェーまだ~む
確かに両方を合わせてみることが出来ると、より一層背景を理解できますよね☆
マリアは何もかも奪われてしまったけれど、ギリギリでも脱出できた事も米国でそれなりに成功したことも、幸運だったと私も思ったわ。もともと持ちすぎてたとも言えるし…