面白い映画。
予告編を見るかぎり、とってもアーティスティックな映画と思っていたら、正しく言うと『面白い事になっちゃってる映画』だった。
しかしアンジェリカのそのミステリアスな微笑みに心惹かれたのは、主人公のイザクだけでなく、私たちまでもすっかり心惑わされてしまったのは間違いない。(別の意味で)
それにしてもまさかのだれも予測しない結末が、そこに待っていようとは・・・・
「アンジェリカの微笑み」 公式サイト(12月5日公開)
<ストーリー>
真夜中に呼び出された青年イザクは、急逝した富豪の娘の写真を撮影するよう頼まれる。
雨の中屋敷へ辿り着くと、横たわっていた美しいアンジェリカは、ファインダー越しににこりと笑う。
一瞬にして心奪われたイザク。帰宅して現像した写真からも笑いかけるアンジェリカが、寝ても覚めても現れるようになる。
川の向こうのブドウ畑を耕す農夫の写真を撮影したり、アンジェリカの墓へ行ってみたりと落ち着かない日々を送るイザク。
下宿のおばさんたちにも様子が変だと心配されるうちに・・・・・
ポルトガルの片田舎で、激しく雨の降る真夜中に呼び出されたイザクの前に横たわるアンジェリカ
ヨーロッパの薄暗い電燈のもと、夜道を走る車と雨とワイパーの音だけが続いている車中の映像がそんなに長く続いたら、今までの私だったらとっくに寝てるよ?
なんとかここを乗り切ると、イザクとアンジェリカのファーストコンタクトへ行きつく。
教会の入口には乞食が待っている
アンジェリカのお葬式にも参列するけど、こんなに人が沢山いるのに、イザクと言葉を交わすのは、この乞食のみ。
入るときに小銭をあげて「神の祝福あれ。」と言われたのだから、出る時は「さっきやっただろ?」と言うのは当然なんだけど、乞食に「神の報いあれ」と返されてしまう。
最初にユダヤ人であるイザクが彼らの聖典を読むくだりがあるので、宗教的にユダヤ人がキリスト教に関連するところへ入る事が許されない何かがあるののかな?と思ったりも・・・・
安っぽい合成なのはあえて?なのか、イザクの見る幻影はどこか漫画チック
宗教の壁と、アンジェリカには彼女を愛する夫がいたことと、二重の壁がより禁断の恋心を募らせることになったという事か・・・?
イザクのことが気になって仕方ない下宿のおばちゃんの存在が浮世離れしすぎたこの話を唯一現世に留まらせてくれているよう。
主人公イザクは監督のお孫さん
多分ご自分を投影しているのでしょう。
となると、106歳でなくなった監督が101歳で撮影したこの作品は、ちょいちょい監督の所にお迎えにきた天使(もしくは死神、もしくは魔女)を映像として残したある種のドキュメンタリー的幽体離脱作品なのかも。
川向うで無駄にブドウの木の根元をクワで耕す農夫たちも、「彼岸の向こうの人たち」と考えるとイザクの奇行も納得がいく。
もしかしたらお屋敷の人たちも、悲嘆にくれるアンジェリカの夫も、高慢な小間使いも、尼の姉も落ち着き払った母も実はこの世のものでは無かったのかな?
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この記事へのコメント
風情☭
天使なのか死神なのか?わからないアンジェリカに
魅入られたイザクの此岸と彼岸の間を彷徨う物語は
おとぎ話であり、ときに小難しい哲学話でありで不
可思議な作品でした。
かなりオフビートな作りなんで、途中おちかけたり
もだったけど、思いのほか心つかまれる作品でした♪
(゚▽゚)v
ノルウェーまだ~む
まさに同感です~
途中必ず落ちかけるのですけど、どこか心つかまれるのですよね。
やはり100歳を超えた方の死生観や哲学は、ひよっこにはまだまだ理解出来ないのかもしれないですが。
とらねこ
やはり幽体離脱をして虚空を彷徨い、どこか知らない場所へ行って戻ってくる…
という内容のものなんです。
私はこれを思い出しました。
これって、全世界共通のものだと思いませんか?
面白いですね。
オリヴェイラは知ってか知らずか、彼のイマジネーション豊かな感性が故か、この境地に達したのでしょうか…。
ノルウェーまだ~む
世界共通となると幽体離脱もいつか出来るかもと期待しちゃうね(笑)
もしかしたら「お迎えが来る」とか、「夢枕に立つ」とかも世界共通なのかも。
私は監督のイマジネーションより、実体験だったと思いたいなぁ。