「リリーのすべて」☆せつなさ100%

妻のゲルダを演じたアリシア・ビカンダーが何しろ素晴らしい。
納得のアカデミー賞助演女優賞受賞だゎ。
せつなく唇を震わせて涙をこらえる妻の姿に、真実の愛を感じずにはいられない。


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「リリーのすべて」 公式サイト

<ストーリー>

シャイだけどデンマークでは一流の画家アイナー(エディ・レッドメイン)は、同じ画家の妻のゲルダ(アリシア・ビガンダー)にモデルの代わりを頼まれたのをきっかけに、自分の中の女性に目覚めていく。
次第にこっそりと女装をするようになり、そんな夫を認めて、女性としての夫をモデルに描いた絵は爆発的な人気に。
パリに居住を移し、有意義な日々を送るゲルダに対し、いよいよ追い詰められたアイナーは・・・・


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男性として生きるアイナーと、女性性が表に出ている時のリリー、リリーが出始めてからの男装のアイナーと、見事に演じ分けるエディに脱帽!!

男性でもカマっぽく演技をするのは、テレビでよく見かけること。
しかし、男性なのについカマっぽい仕草になってしまうのと、男性っぽくふるまっているのにちょっと女っぽい所が出てしまうのとはやはり違う訳で。
ここをきちんと演じ分けられるエディは、ひとかたならぬ役者であることに間違いはない。

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対してさばさばと男っぽい妻のゲルダ

服装も当時の女性にしてはあっさりとしたデザイン。
出会った時にゲルダから声をかけたりと、そもそも男性役のゲルダ女性の立場でいたアイナーと、実は運命は既に決まっていたのね。

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モデルを頼んだばっかりに「夫」を失うゲルダ、「自分」を見出すアイナー

シャイで繊細なアイナーだけど、ちゃんと夫として夜のおつとめもしていた時は、しっかり男っぽかったのに、リリーに目覚めてからは、ただそこに立っているだけなのに、その『男っぽさ』が消えている!
同じスーツで、同じように絵を描いているだけなのに~~~っ

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最初は遊びで女装していると思っていたゲルダが、「本気の夫」に気付いた時の、あの表情は忘れられない。
アイナーの気持ちにも寄り添いたいけど、妻としての寂しさも同時に表現する、この見事な演技力といったら!

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女性になると決めてからは、理解し合っているようで、心と体の距離は開いていく

一番の理解者でありながら、最も愛する人の心が遠くへ行ってしまうせつなさ。
手術の日に「ついてきていいよ。」というアイナーに「自分のことばかりね。」と初めて本音を言う妻。
「お願い、ついてきて。」と言い直すシーンは、自分も苦しいけれど妻もとても苦しんでいるということに気付いた瞬間。
今思い出しても涙があふれてしまう・・・・


ムンクがそうであったように、北欧の画家はえてして作風がとても暗く、何か深刻なものを抱えている。
鬱屈しているからこそ、その作品が唯一無二で素晴らしいものになるとも言えるのだ。

心が解放されてからは、作品を描くことが出来なくなったアイナーも、故郷の大自然に解き放たれたラストシーンは、素晴らしいハッピーエンドになったと涙をぬぐいながら思う私だった。

この記事へのコメント

  • まっつぁんこ

    「アリシア・ビカンダーが何しろ素晴らしい」同意。
    助演というより主演では?と思わなくもありませんが
    エディもすばらしかったけどレオがもっとすごかったのでしょう。楽しみです。
    2016年03月26日 07:27
  • ノルウェーまだ~む

    まっつぁんこさん☆
    彼女は確かに主演と言ってもいいくらいでしたね。
    でもそれだと「ルーム」の彼女との賞レースがあるから、助演女優賞で正解なのかも♪
    2016年03月26日 18:29
  • にゃむばなな

    そうそう、男性が女性を演じるとオカマっぽくなるところを完全に女性らしく演じるエディ・レッドメインは本物の役者ですよね。
    そしてその凄さに負けじ劣らず、いや逆にリリーがより女性らしく見えるからこそ強く見えるゲルダを演じ切ったアリシア・ヴィンキャンデルも凄い!
    2016年03月27日 23:18
  • ノルウェーまだ~む

    にゃむさん☆
    レッドメイン見事でしたね~
    演じ分けられる技量はただただ驚くばかりでした。
    そして勿論アリシアも見事!
    可愛い妻、強い妻、優しい親友、どのゲルダも思わずぎゅっとしてあげたくなる愛に満ちていました♪
    2016年03月27日 23:40
  • yukarin

    こんばんは。
    エディ・レッドメインの演技は素晴らしかったですね。
    中盤あたりからはリリーがとても綺麗に見えてきました。
    本当に演じ分けもお見事でした。
    それとアリシア・ビカンダーも助演女優賞受賞は納得の演技でした。
    2016年03月28日 23:31
  • たいむ

    もし「本気の夫」を知ってしまったら自分はやっぱり唖然とするばかりなんだろうなぁ。
    アリシアのオスカーは納得ですね。

    女っぽい男と自分を女だと思っている男は違うんだと思います。エディのそこの演じ分けは本当にお見事でした。
    彼は個性的な人物の本質をとらえるのが上手いのだと思います。
    2016年03月29日 15:05
  • ノルウェーまだ~む

    yukarinさん☆
    何だかんだ言っても、人目は引くけどやっぱり男性だってわかるでしょう?と最初は思って見ていたけど、次第に本当に綺麗になっていってたよね。
    どちらも素晴らしい演技でした!!
    2016年03月29日 21:53
  • ノルウェーまだ~む

    たいむさん☆
    本当にそうですね~
    エディの微妙なさじ加減というか、人間の本質をとらえるのが上手いって確かにってかんじ!
    アリシアのオスカーも誰が見ても納得ですね☆
    2016年03月29日 21:55
  • とらねこ

    エディ・レッドメインが、ピンクのスーツでウキウキと街を出歩いていて、突然二人の男達に絡まれて殴られるシーンありますよね。
    こうした演技で世界に認められることも、もしかしたらそれを見て良く思わない、妬む男達は居るかもしれないわけで…。
    そう考えると、本当にエディ・レッドメインは凄いなと思います。
    2016年03月30日 13:56
  • ノルウェーまだ~む

    とらねこさん☆
    私もあのシーンはとっても印象的だったわ。
    本人にしてみれば女性だけど一応男性の格好をして…のような複雑な立ち位置さえも見事に演じていたよね。
    男性なのに・・・
    彼のこれからの役者人生、目が離せないね!
    2016年03月30日 17:43
  • セレンディピティ

    こんにちは。
    楽しみにしていた本作、ようやく見てきました。
    エディは、ホーキング博士に続いての難役をみごとに演じていましたね。少しずつリリーの部分が大きくなって、体がどうしても受け入れられなくなる、という心の微妙な変化が手に取るように伝わってきました。
    夫婦ってだんだん性別を超えた親友のようになっていくものだけど、若くしてこれから...という時期にそれを受け入れなくてはいけなかったゼルダはつらかったですね。
    2016年04月05日 13:47
  • ノルウェーまだ~む

    セレンさん☆
    妻目線から見ると、本当に辛い立場で切なくなってしまいますね。
    究極の愛の形が、性別を超えた親愛だったりしますが、だからこそ同性として距離を置かれるようになっていくは辛すぎます~~(涙)
    エディの演技力、本物ですね!!
    2016年04月06日 14:14
  • ふじき78

    そうか。そう言えばアカデミー主演男優賞でエディーはレオ様に負けたのか。エディーが勝つ為には二人の暴漢にボコボコにされるシーンを野生のクマに置き換える必要があるという事だな(違!)
    2016年09月08日 22:29
  • ノルウェーまだ~む

    ふじきさん☆
    エディの演技も素晴らしかったですが、さすがにあのレオ様の氷点下の演技には敵わなかったですね。
    熊+雪が必要です!
    2016年09月08日 23:57

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