「ヒメアノ~ル」☆最後に大粒の涙一つ

ざわざわしてみぞおちの辺りがぎゅーっとなって、不穏なドキドキが見終ってからも止まらない。
映画としての完成度がこの上もなく高い映画。
予告編の期待度をはるか超えて、そして最後に一粒の涙がポロリ。


これは秀逸!!今年の日本映画はかなり良いのでは??!


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「ヒメアノ~ル」 公式サイト

<ストーリー>

毎日何も起こらないことに焦りを感じてただ、ダラダラと毎日を過ごしていた岡田(濱田岳)は、同じ職場の先輩(ムロツヨシ)から恋のキューピットを頼まれる。
カフェの人気店員ユカ(佐津川愛美)は実は岡田に一目ぼれ。
先輩に内緒で付き合おうとするが・・・・

一方、カフェに足しげく通う森田(森田剛)はユカをストーキングしていたのだが、実は彼は・・・・


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味のある役者だけを使ったこの映画。
先輩が「キモイ」ということを除けば、予告編の前半のように、最初はクスクス笑いが溢れるほのぼの映画なのだ。

ただしそのキモイ先輩が、岡田の抜け駆けを知ってショックを受け、部屋にチェーンソーを置いていることが判ったあたりから物語は見事に一変する。

その『ほのぼの』な前半1/3が過ぎたあたりで、ようやくオープニング。
暢気なテレビドラマ風の映像が、ここでいきなり映画調に変わり、少々ざわざわとしつつも静かに上り詰めていたジェットコースターが、ここから一気に降下し、それはラストまで容赦なく失踪し続けることになる。

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実は森田は原作ではこんな魚顔

原作は「ヒミズ」の古谷実。
あの話も容赦なく若者が虐げられ、その精神的残酷さは得も言われぬものだった。
何しろ『落ち込んでいるときに絶対見てはいけない?鬱(うつ)漫画まとめ』
で「ヒミズ」も「ヒメアノール」も入っているって、古谷実っていったい・・・・

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先輩とのやりとりは、なさそうでありそうで・・・・

どこにでもありそうな退屈だけど平和な日常がいかに幸せだったか、この時二人はまだ気が付かない。
キモイ先輩と、未だ童貞の岡田、カワイイけど実はビッチなユカとのあるあるネタが笑える。・・・・うちは良かった。

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内緒で付き合っちゃえ~~~(≧▽≦)

そりゃこんなかわいい子に言い寄られたら、先輩のこと裏切って付き合っちゃうよね。
キモイ先輩はちょっと危ない雰囲気も醸し出しているけれど、実はそんなの序の口だった・・・

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森田役の森田くんが凄い!!
原作では完全な「快楽殺人者」として描かれている森田らしいけど、映画ではその過去が少しずつ解ってくるほどに、別の意味で胸がわし掴みにされていく。

「アノール」とはトカゲのこと。つまり「ヒメトカゲ」
猛禽類のエサとなる小さなトカゲのことで、捕食されるもの(=社会的弱者)ということなのかな。


原作とは違うアプローチなのだとしたら、脚本は見事。
思いがけないラストに思わず大粒の涙が1粒だけこぼれた。





この記事へのコメント

  • yukarin

    こんばんはー
    原作の森田は....全然違うのね。
    私は原作は読んでないのでかえって良かったかもです。
    剛くん...本当に怖かったですね。
    なのにラスト....泣かされました...切ない。
    2016年06月04日 23:04
  • ノルウェーまだ~む

    yukarinさん☆
    私も原作は読んでないのですが、どんな絵かな?と思ってみたら、イメージが全然違うのねー!?とびっくりしちゃったのでした。
    剛くん静と動の凄みがどちらもキレッキレでしたね。
    ラストの豹変ぶりも!
    2016年06月05日 11:16
  • ノラネコ

    うん、これはやっぱラストですね。
    それまでの積み重ねがあって、森田の中に残っていた、ほんの僅かの無垢な心に涙しました。
    犬は轢けなかったんでしょうねえ。
    2016年06月07日 21:49
  • ノルウェーまだ~む

    ノラネコさん☆
    最後の白いわんちゃんで、一気に彼が『最も楽しく生きていられた頃』が蘇って、崩壊した人格の部分がぶっ飛んで『素』に戻ったわけですが、人間を壊すほどの「イジメ」がどれだけ酷い事なのかと改めて感じさせられましたね~
    2016年06月08日 09:10
  • ふじき78

    濱田岳くんで一目惚れするなら森田剛に一目惚れしろよ、と言いたいところだけど言えないようなオーラが森田剛くんから出てましたね。
    2016年06月14日 23:45
  • ノルウェーまだ~む

    ふじき78さん☆
    原作の森田ならいざ知らず、私も同じこと思いました(笑)
    ただ、やっぱりストーカーするような人のオーラって、何か不穏な空気がありますよね…
    2016年06月15日 00:24
  • にゃむばなな

    ラストを迎えるまでは森田は極悪人だと思っていました。
    でも彼の心の奥にはまだ幸せだった頃の記憶が残っていたことが示されるあのセリフ。
    もう誰にも麦茶2つ持ってきてなんて頼めませんよ…。
    2016年06月16日 23:01
  • ノルウエーまだ~む

    にゃむさん☆
    本当ですよねぇ。
    本来の森田の人生はあの夏の日でストップしていたのですよね。
    極悪人森田は、あどけない森田を守るために全く別人として出現していたのだと思うと、また一層切なくなりました。
    2016年06月17日 11:35
  • ここなつ

    こんにちは~。
    私、実はこの作品を鑑賞する気持ちはあまりなくて(原作も未読だし)、ところが某番組でのインタビューに答える森田剛クンが思いの外…あれれっ?と思う位ひと皮剥けていたので、これは観なきゃだわ、と。
    想定以上に素晴らしい作品でした。表現ちょっと変ですが、登場人物の持つ力のこもったバランス、がとれていて。
    この作品を観ることができて良かったです。
    2016年06月17日 12:44
  • ノルウェーまだ~む

    ここなつさん☆
    森田剛クン、濱田岳くんとキモイ先輩のムロツヨシさんの二人に負けない存在感がありましたねぇ。
    作品的にも素晴らしかったです。
    ほんと、想定以上で私の中では今年ベスト3に入ると思ってます☆
    2016年06月17日 23:56
  • SGA屋伍一

    女性からしてみたら森田君のような男は嫌悪感しかわかないのでは…と思うのですが意外にも同情的な意見が多かったりして。みなさん懐がおひろい。あと傑作だとは思いますがツイッターではこの映画が今年の邦画でナンバーワンくらいの人気を誇っているのも意外です。どの辺にひきつけられるのか好きな人にじっくり話をうかがってみたいですね
    2016年07月16日 23:23
  • ノルウェーまだ~む

    伍一くん☆
    あれ!?それほどでもなかった?
    私も邦画のナンバーワンに近いかなって思っている人です~~
    森田君を森田君がやっているからっていうのも、最終的高評価に繋がるとは思うのだけどね。
    人畜無害だけど結局は先輩を裏切り美味しいところを持って行って、過去にも自分可愛さに森田君を裏切った「良い人の岡田くん」と、身の毛もよだつ悪魔のような森田の苦しすぎる過去を対比させたところが秀逸だったなって思ってます。
    2016年07月17日 13:10
  • とらねこ

    そうなんです!
    『ヒミズ』の原作がすごくすごーく面白いのですが、とある友人に「自分はヒミズもいいけど、ヒメアノ~ルの方が好き」と言われて、見なくちゃ〜と思いつつ、漫画を読むのはもうかったるくてそのままになっていました
    今回さすがに映画の前に読もうかと思ったんですが、全然違うから比較すら要らないらしく
    そう言われて読むのやめちゃいましたトサ
    でも読んでみたいなー、いつか(笑
    漫画喫茶一緒に行きます?
    2016年07月18日 21:27
  • ノルウェーまだ~む

    とらねこさん☆
    そうそう、映画の方が良いみたいよね?
    そういうのって珍しいわ~
    ヒミズは読んだのね?私はどちらも未読だけど…
    絵がちょっと好きじゃないの~~(汗)
    今すっごく面白くて気になっている漫画は「セトウツミ」、これは映画より漫画が面白いよね♪
    2016年07月19日 00:23

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