まるでドキュメンタリーかと思うくらいにリアルで激しく白熱してる。カンヌでグランプリを受賞したのも判る気がする。
生き生きとしてパワーに溢れ、生々しい熱量を持ち、ドギマギするほどの息遣いに圧倒される。
やがてその息遣いが無音に変わっても、彼らは尚一層パワーを増していくのだ。
「BPM ビート・パー・ミニット」 公式サイト(3月24日公開)
<ストーリー>
90年代の初め、エイズは急速に蔓延しつつあったにもかかわらず、政府も製薬会社もその対策に本腰を入れないことに業を煮やして、エイズ活動家団体「AUT-UP-パリ」のメンバーは日々、白熱した集会を開いていた。
新しくメンバーに加わったナタン(アーノード・バロワ)は、政治的行動派のショーン(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)に恋をする。
温和に対話で進めようとするリーダーのチボー(アントワン・ライナルツ)やソフィ(アデル・エネル)とぶつかり合いながらも、製薬会社に抗議デモへ行ったり、ゲイ・プライドのパレードを行ったりしていたが、遂にエイズの症状が進行し…
寝不足気味だったので、何度も繰り返し出てくる集会のシーンに眠くなるかと思ったら、白熱度がハンパないのでちっとも眠くならない!
とにかくまるでドキュメンタリー。
あまり見かけない俳優たちを使ったのも一つの要因かもしれないけれど、皆さん演技が上手くてどのシーンもとってもリアル。
実際当時アクトアップの活動メンバーだった監督だからこそ作ることが出来た作品とも言える。
まだまだHIVの知識が無かった時代、デモや抗議活動で製薬会社と戦おうとするが・・・・
ゲイ・プライドのパレードはともかく、血液に見立てた赤い液体を製薬会社の事務所に投げつけたりする活動は、正直眉をひそめるものばかり。過激すぎて、爆弾を使わないテロ活動にしか見えなかった。
しかし実際のところ、エイズにせよデボラにせよ、貧困地域に多い病気を治療するための薬は、巨額の開発費を投じで作るメリットが無いため、製薬会社も造りたがらないのが現状。
本物の血液と思って製薬会社の職員が大慌てするのは、新薬開発を促すには絶好のやり口だったのでしょう☆
アクトアップの活動と並行して語られるのはナタンとショーンの愛の物語
高校へ突撃してコンドームを配る活動中(!)恋に落ちる二人。
まだ確固たるエイズの治療法が無かった時代、偏見とエイズの啓蒙活動で戦っていく話というよりは、この活動を通して生を全うし、短い一生を生き生きと激しく生きた青年の話でもある。
圧巻は本当にヤッてるよね?な二人のセックスシーン。生々しいのに何故か美しい☆
これがノンケの俳優さんだったら素晴らしい演技力!と思ったら、監督以下皆さんゲイの方たちらしいww
集会で激論を飛ばし、パレードではしゃぎ、デモで盛り上がって、クラブで陶酔し、セックスする
彼らは偏見や差別や死の恐怖に苦しむというよりは、それキッカケで「生きる事」を楽しんでいるように見える。
それがこの映画の魅力でもあると同時に、複雑な部分でもある。
というのも、少なくとも彼らには恋人がいて青春をこうして謳歌してもいる。仲間がいて団結できる。目的を持って活動できるていのだ。
一般的な人でも、それすら叶わない人から見たら、なんと幸せな人生だと複雑な気分になる。
症状が悪化し入院していたショーンは遂に・・・・
BPMとは音楽の楽曲の速さを表すと同時に、心臓の1分間あたりの拍数でもあるそう。
ショーンの最後のシーンでは音楽の使い方も実に秀逸☆
そして一番泣きたいはずの若い息子を失った母が、次々と知らせを受けて集まってくる仲間たちを見て、息子が実に仲間に恵まれていい人生を送ったことを悟り、デモに使う遺灰を80%も提供するとジョークを飛ばす事が出来たシーンでは思わずホッコリしてしまう。
とはいえ、パーティー会場でご馳走の上に遺灰を巻く行為は、やっぱり眉をひそめてしまったけど…
帰りにコンドームを貰ったyo
1990年当時、実際にアクトアップの活動を目の前で見て取材してきたという、元新聞記者の北丸雄二さんの対談でこの時代の背景がより一層判って、映画では「自分勝手なデモ活動」に映る彼らの行為にも納得が出来てとても良かった。
先日、用事があって出かけた池袋の街角で、端正な顔立ちの青年が目隠しをして、まるでキリストの様にすっくと立っているのを目撃した私。
足元のプラカードには「僕はゲイです。ハグしてください」と書いてあっった。
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BPM ビート・パー・ミニット
Excerpt: BPM ビート・パー・ミニット@エスパス・イマージュ
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Excerpt: 「BPMビート・パー・ミニット」(原題:120battementsparminute)は、2017年公開のフランスのドラマ映画です。エイズ活動家団体「ACTUP」におけるロバン・カンピヨ監督と..
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Tracked: 2019-01-03 05:00
この記事へのコメント
セレンディピティ
この映画、ノーマークでした。これから公開なのですね。
若い人たちが主体的にこうした社会運動に参加していくところは、さすがはフランスらしいな~と思いました。
きっと自分たちの声で主張する、アクションを起こすことの大切さを、小さい時から学校や地域、家庭で教えられてきているのでしょうね。
日本では(私もふくめて)性教育を避けてしまう傾向があるので、HIVに関してもいろいろ誤解がありそうです。考えさせられる作品ですね。
ノルウェーまだ~む
ほんの20年くらい前でもエイズの知識が少なく、それによって病気が蔓延していったり、必要以上に恐れたりした時代が確かにありましたよね。
フランス人の性に対する大らかさと、恥じたり卑下したりせず堂々とした生き方に感銘を受けました。
難しい事を訴えようとするのではなく、なんだか充分に楽しんでいるではないの?と思ってしまうくらいのパワーを感じましたyo
まっつぁんこ
ノルウェーまだ~む
こういった詳しいことを習える状況にない人たちが多く感染が拡大していった状況がありましたよね。
一般的にも風評ばかりが先走って、正しい情報が行渡るのに時間がかかったという記憶があります。
男性はパッと見てお仲間と判ると聞いたことがありますが、タイプだったのかな?(笑)
まっつぁんこ
まわりの人(♂)がけしかけてた。
お仲間ではありません!と言えばあきらめてもらえると思います。
日本は欧米ほどは目立たないけど結構いると思います。遅れているのでカミングアウトしにくいのではないかと推察。
エイズは80年代後半にはうちのような会社でも患者がいました。健康保険で治療受けるもんだから会社にばれていた。地方の工場社員でした。
ノルウェーまだ~む
映画では保険治療がまだできないという話だったと思うので、バレたとはいえキチンと治療できるのはありがたい事ですよね。
様々な事情で病気には掛かるので、そちらのカミングアウトも正しく出来る環境は大切だと思います~
私のママ友のお兄さんがBLカップルで、ご両親を旅行に連れて行くと二人正座させられて「早くお嫁さんを貰いなさい」と説教されると言ってました。
イギリスではスーパーのレジで待つ間もキスの嵐のゲイカップル・レズカップルを多く見かけてましたよ☆