ひと夏の忘れられない恋。
昔なら男女の恋愛として描かれていた王道の物語を、現代ならではの同性愛で描く。
二人の恋があまりに眩しく、あまりに瑞々しいのは、北イタリアの乾いた空気に湿度がないせいだからなのか、眩しい太陽と同じくらい大らかなイタリアのママンの懐が深いからなのか・・・・
特筆すべきはEDで魅せる17歳エリオ役のティモシー・シャラメの長回しのアップ。
全てはこれを見る為にあると言っても過言ではないくらいの、17歳にして実力派俳優の見せ場が集約されている☆
「君の名前で僕を呼んで」 公式サイト
<ストーリー>
17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は家族と共に今年も北イタリアの避暑地へやって来た。
大学教授の父の仕事を手伝うべく今年招かれたのは、24歳のオリヴァー(アーミー・ハマー)で、シャイなエリオに比べて、知らぬ間に多くの友達を作り、すぐに人気者になっていった。
そんな彼が気になって仕方ないエリオは次第に気持ちを高ぶらせていくが、オリヴァーの気持ちが判らず悶々と過ごすのだった。
夏も終わりオリヴァーが去る日が近づく。遂に決意し告白したことで二人は深く愛し合うようになるが…
初めは町を案内していたつもりのエリオだったが、オリヴァーの素っ気ない態度に不安になり…
実はほぼ最後の方まで、二人は感情を露わに表現しない。
サングラスで目を隠し、また表情を抑えて演じることで、「本当はどうなの??」と互いに距離を置くしかない不安な気持ちを観客も共有することになる。
特に一方的に熱くなっていくエリオの目線に対し、ポーカーフェイスでこちらも色々とサインを送るオリヴァーだけど、何故かエリオは気付かない(笑)
まるでギリシャ彫刻そのもの!!彼がキャスティングされたのも納得☆
ティモシーは芸能一家で、この若さでもかなりのキャリアがある俳優だけど、キャスティングのポイントはこの顔立ちじゃないかと映画後半で気付く。
実は海底に沈んだギリシャ彫刻を引き上げて研究している教授がスライドを見せるシーンで、端正で肉感的なのに健康的で美しいギリシャ彫刻の数々を、うっとりと眺めるオリヴァーがそこにいるのだ。
家族で食事するシーンが多い
欧米のバカンスは平気で2か月くらいある。
多分ここは別荘で、管理をしているじいやとばあやが居て、他に食事の用意をしたり洗濯や掃除をするスタッフもいる。ユダヤ人だから大金持ちなのか、大学教授って儲かるのか?羨ましい限り…
いずれにしても、自分で掃除しないんだからプラムの汁をベットになすりつけたり、種を床に投げたりしないで欲しい…と、何故かイタリアマダムじゃなく、使用人目線になってしまう私(≧▽≦)
彼女の立場は・・・・?
驚いたのはイタリア女性の懐の深さ。
自分の息子をけしかけるかのような発言のママンにも驚いたけれど、自分の彼氏が男に寝取られても寛容に許せるマルシア(エステール・ガレル)って!!
バイだろうとゲイだろうと、禁断の恋は切なくてなんぼなのに、私はここで鼻血が出ちゃうお年頃の男子の、ただの性欲のはけ口となった女の子を想うと、エリオとオリヴァーの甘美な恋物語が一気に冷めてしまって・・・・
息子にきちんと自分も実は…とカミングアウトする父…まさかパパまでも!?
17歳と言えば反抗期真っ盛りなはずなのに、父に膝枕してもらって母に小説を読んでもらうとか、とにかくファミリーのスキンシップが多く、一見まだまだ甘えているようにもみえる。
そのくせ性のこともあけすけに話題にする、日本の家庭ではおよそ無いパターンに戸惑ってしまうが、真摯に人を愛する事の素晴らしさを息子に説くって、実はなかなか出来るようで出来ない事であり、また実際は大切な事でもあるよね。
自分の名前で彼を連呼するシーンは、思わず涙
同性愛がテーマならば、そこに切なさがなくてはタダの恋愛もの。
ひと夏で終わってしまったことが切ないというのではあまりに陳腐で、ティモシーの名演技がなければ絶賛する気持ちになれないのは「キャロル」の時と同じかも。
報われぬ恋と知ってるならそっと遠くから愛するのが私のイメージする『切ない愛』だけど、自分の気持ちに正直になるのがラテン的本物の愛なのかな☆
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この記事へのコメント
にゃむばなな
ほんと、あのシーンのためにこの映画があるようなものでしたよ。
それにしてもこのエリオの両親は、何と理解のある方々なんでしょう。
あの2人には「性別」という言葉は愛の前ではないのでしょうね。
セレンディピティ
この作品、私もすごく楽しみにしています。
シャラメくんが楽しみ! 北イタリアの美しい風景も楽しみです。
最近男性同士の恋愛映画ばかり見ているせいか、まったく違和感を感じなくなってしまいました。^^
latifa
>自分で掃除しないんだからプラムの汁をベットになすりつけたり、種を床に投げたりしないで欲しい…と、
爆笑!
私も同じ事思いながら見てました、べたべたするよなあ、あれ掃除するの大変だよなーって(^-^;
全てが綺麗で、寛容なご両親、楽しく見ましたが、やっぱり私も女の子の気持ちを考えると、うーーん・・・って思ってしまいました。
ノルウェーまだ~む
本当にその通りですね~~
エリオのご両親の懐の深さと言うか広さには、つくづく感じ入りました。
「愛に素直に生きる」ことを勧めるにしても、ゲイカップルに理解がある…だけでは、自分の息子にも理解を示すのはなかなか難しいことと正直母親としては思うのです。
過去に想いを残す「父」は別としても。
ただ、夫婦であまりベタベタしてないところをみると、案外お互い納得し合っていて(実は気付いている)そういう選択もありって母親も思っているのかもしれませんね。
ノルウエーまだ~む
確かに!
このところ、そちらのテーマの作品が多く作られているのにプラスして、セレンさんも割とよくご覧になっていらっしゃいますよね☆
私も違和感は感じないのですが、あえてそこをテーマにするならば、個人的希望としてはもっと「ブロークバックマウンテン」的切なさが欲しかったところです。
ノルウェーまだ~む
やっぱりそう思ったの、私だけじゃなかったですね!?良かった~(笑)
何だろう…
物語が少女漫画的で、美しく澄んだ上澄みだけを取り出したような気がしてならなかったです。
主役だけが美しい~~みたいな?
せっかくの抒情詩的切ない愛が、なんとなくうーーーんに支配されちゃいましたよね☆
ここなつ
>いずれにしても、自分で掃除しないんだからプラムの汁をベットになすりつけたり、種を床に投げたりしないで欲しい…と、何故かイタリアマダムじゃなく、使用人目線になってしまう私(≧▽≦)
わははは、おほほほ、もう激しく同意です!
もっと言うなら、あんなべたべたの身体でそのまま眠れてしまうのが不思議。風呂場近いんだからシャワー浴びようよ。
シーツ洗う身にもなってくれや。今日の仕事が増えちまったじゃないか、と。いや、もし、まだーむさんがシーツは毎日洗う派だったらそれは大層すみません、なのですが。
…ごめんなさい。本筋大幅に外れていて。
それと、ご存じかどうか不明ですが、私はラストシーンのアーミー・ハマーの電話に、松任谷由実の「青春のリグレット」の歌詞「夏のバカンスを胸に秘め 普通に結婚していくの」をまんま思いだしてしまったです。
ノルウェーまだ~む
全てに同感ですね~
外国のセレブの考えることって…(≧▽≦)
シーツを毎日洗う派では当然ないので、自分で料理もしないのにお客をホイホイ呼んじゃう人とか、その辺にゴミをポイポイしちゃう人とか、バスルームのあちこちにパンツを引っ掛けちゃう人とかの気持ちに寄り添えなかったです(爆)
ユーミン!バブル期ならではの歌ですね~~
実らぬと解っていても貫いて愛するのが本物の愛なのか、大切ならばそっと見守るのが真実の愛なのか?
私は後者こそ本物と思う人なのでどっぷりとハマれませんでしたwa
ノラネコ
この映画で一番面白かったのは、実は父ちゃんとの関係で。
最後の二人の会話はとても興味深かったです。
まあ83年はもちろん、現在でもなかなかいないタイプの親だと思いますが、アカデミックな雰囲気も作品の高尚なイメージにつながってました。
ノルウェーまだ~む
ちょっと浮世離れしたセレブ感はありましたが、アカデミックで知的な両親とマルチな才能の少年の瑞々しい初恋がなんとも眩しかったデス。
息子が彼氏を連れて来たらどうだろう?と考えてみたりもしましたが、相手が女性だろうと男性だろうと私も応援すると思います。ただ未来に結ばれることが無いと解っている恋愛ならどちらの場合でも背中を押すことはないでしょう。
ごみつ
さっき、私もやっとこさ記事にしました。(最近、やっとこさ続き(;^ω^))
美しい映画で、せつなかったけど、結構幸せな気持ちで作品を鑑賞しました。
あの彼女は、確かに可愛そうでしたね。あの娘、エリオの事、真面目に好きだったもんね・・。
そんなこんなもあわせて、人を好きになるっていう気持ちの胸苦しさみたいなのを、久しぶりで体感できた気がしました。
これ、原作は2人が老境に達するまでお話が続くらしいです。まだあのラストシーンの続きがあるんですね・・。ちょっと読んでみたい気もしています。
ノルウェーまだ~む
原作は老後まで書かれているって、ほんと何だかそそられますね~
つまりはそれぞれがパートナーもいて幸せに年を取って行くけれど、この若き日のかけがえのないひと夏の愛を、老後になるまで忘れられずにいた…くらい想い出に残る真剣な愛だったという話なのかな?
性別はともかく、誰にでもある切ない恋の胸の苦しさを共感出来た作品でしたね☆