新聞記事に載っていた「90歳の男性が麻薬の運び屋で逮捕」という記事にヒントを得て作られた作品。
クリント・イーストウッドが落ちぶれて家族も失ってしまった伊達男の悲哀を、見事なヨレヨレ感で演じている。
「運び屋」 公式サイト
<ストーリー>
デイリリーという1日しか咲かない百合を栽培していたアール(クリント・イーストウッド)は、家族との時間を蔑ろにしてきたことで絶縁されていた。
事業に失敗し家も失ったアールは、「車を運転するだけで儲かる」と言う言葉を信じ仕事をすると、たちまち容易に大金が手に入ってしまった。
一度きりと断ったアールだったが、大金に目がくらみコカインを大量に運ぶ仕事を請け負うようになったのだが…
粋でお洒落な伊達男のアールは、百合のサンプルもタダで配っちゃう
ウィットに富んだジョークを飛ばし、女性を喜ばせる台詞もサラッと言ってダンスも上手、いつもモテモテ。
退役軍人の仲間からも一目置かれ、さらに麻薬カルテルのチンピラたちからも慕われる人気者なのだ。
お金は自分の為にはほとんど使わず(金のブレスレットはしていたけど)、どんどん寄付したり人の為に使ってしまう。『富と名声』というけれど、彼が望んだのは『名声』・・・・というより『賞賛』と言うべきか。
純粋に人が喜ぶ顔を見たい~といった気持ちがこうじての行動だけに、アールじいさんが憎めない好々爺として観客に受け入れられていくようになっている。
金も家も家族も失って、ヨレヨレしているじいさんを演じるイーストウッドが秀逸!
ただ一つ得られなかったのが家族からの賞賛。
なぜ誰からも好かれる好人物が、唯一家族からは冷たくされるのか?
大勢の人からチヤホヤされることのみを優先してきたばかりに、家族への配慮が足りないなんて…
とはいえ、どこの家でも多少は似たような事あるのかも。
遅くまで働いているお父さんの居場所が家になかったり(うちにはあるよ~♪)、毎日料理や家事をやっても誰も褒めてくれないし、しっかり誕生日は忘れられているし~~みたいな?
麻薬捜査官にブラッドリー・クーパーとマイケル・ベーニャ
前半はただただ車で走っているので、ちょっと退屈…麻薬捜査官の捜査の進展もあまりなく~~と思っていると、少しずつ接点が。
妻との記念日を忘れてしまった捜査官に人生の大切な事を語るシーンはグッとくると同時にヒヤヒヤする瞬間。
離婚した妻(ダイアン・ウィースト)だけど本当はお互い愛している
最後は何もかも許してしまう。愛していたからこそ苦しかったのでしょう。
二人の時間が持てたことで、ようやく互いに本当に望んでいた物を得ることが出来た。だからこそ自ら潔く決着をつけたのではないかな。
孫娘の「農場は任せて!」のあとに百合園の映像で、てっきり年寄りだけに保釈されたのかと思ったら…
お話はシンプルなのに、様々なシーンでクスクスと笑えたり、ひやひやしたりとのんびりした中にも緩急が付けられている。
ただ口もきかず絶縁していた父親が麻薬の運び屋と知ったあとに、すんなり和解するのはちょっと違和感。
それにしても、あの状況だとやっちゃうよね…(勿論ダメ!そしてコカイン使うのはもっと駄目よ~はりまやさん!)
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この記事へのコメント
まっつぁんこ
セレンディピティ
おもしろかったですね☆
緩急のリズムのつけ方や笑いのポイント、適度な緊張感に最後はほっこり...とさすがは映画を知り尽くしたイーストウッドと感心しました。
仕事で家庭を顧みないことが許せなくて、犯罪に手を染めることが受け入れられちゃうなんて...日米の文化の違い?も垣間見えました。
ノルウェーまだ~む
爆笑ですかっ!?
ノルウェーまだ~む
アールじいさんのマイペースぶりに、なんだかほっこり見てましたけど、よく考えたらとんでも無い話なのですよね~
家族だって、結局はお金を沢山出してくれるようになったから受け入れ始めたの?ってちょっと思っちゃいましたよ。
そこまでして家族に償おうとしてくれたのね…と思って許したのかなと解釈しましたけど、それにしても~~文化の違いですかね~??
まっつぁんこ
ノルウェーまだ~む
あ、なるほど!!
でもその発言納得です~
娘の「会いに行くわ」は、今まであんなに拒絶しておいて何??と思いましたけど(笑)
ノラネコ
私が娘だったら、やっぱり呆れ果ててると思うから。
でもそんな部分も含めて映画的嘘として納得できちゃうのがイーストウッドですねえ。
レジェンドの存在感が圧倒的でした。
にゃむばなな
別に私の父は運び屋なんてしない性格ですけど、時々もう少し自分の失敗を語れるほど柔らかい性格になってくれればと思うことがあるので。
でも家以外のどこかでブラッドリー・クーパーのような、気持ちを吐露できる人と知り合っているのかも。
ノルウェーまだ~む
今までのイーストウッドだったらやらないようなラストの展開でしたけど、彼がそうするのならOKみたいな気持ちになりますね(笑)
私もあんなに拒絶していたのが掌を返したようで、お金沢山援助してもらったのかな?とか、それもまた都合良い話だ…とか思っちゃいました。
ノルウェーまだ~む
このアールじいさんの場合は思うに、仕事人間で家族を蔑ろにしていただけでなく、女性問題も色々あったのだろうな~と言動と妻の怒りの具合を考えると想像できますから、団塊世代で頑張りすぎた日本のお父さんたちとはちょっとまた違うのかもしれないです。
でも家庭に居場所がなくなって、外に心の安らぎを求めてしまう寂しい気持ちも理解しないと…なのかもですね。
ごみつ
私も今日見てきました!
イーストウッドらしい、良く出来た映画で、安心して鑑賞できました。
本人の主演も久しぶりだし、お年を召した姿に少ししんみりしてしまいました。
もっともっとたくさん映画を撮って、楽しませて欲しいです。
車の運転シーンは、色々な曲が流れるので、私は凄く気に入りました。アメリカのロードサイドの風景が心地よかったです。
ノルウェーまだ~む
わかるわかる~!
あえてヨレヨレなおじいさんを演じているとはいえ、かなりお年をかんじられる佇まいに、ちょっとしんみりしちゃいましたよね…
往年の大スターたちが今、老齢になられて映画界も老人ラッシュですけど、まだまだイーストウッドには監督も役者も頑張ってほしいですよね!
zooey
私も納得できませんでした。
遂に犯罪にまで手を染めてしまった父親なのにね。
まっつあんこさんの爆笑地点、
私も同じでした~!(^^;
ノルウェーまだ~む
すんなり和解はすんなりすぎて違和感ありましたよね~
もう少し和解の気持ちに至る経過を見せてほしいところでした。
犯罪よりも身近で落ち着いた環境(?)に居てくれることが重要だったってことでしょうか?(爆)
ここなつ
この作品、クリント・イーストウッドが良かったのは勿論なんですが、カルテルの大ボスやガレージにたむろする下っ端、麻薬捜査官たちのタッグなど、じわじわと個性的なキャラを描いていて、そこもとても面白かったです。
イーストウッドの作品ってそういう所もイイんですよね~。
ノルウェーまだ~む
確かに!!たむろする下っ端との「心温まる(笑)」交流とか、捜査官の側もとっても良かったですよね。
ふつうはどちらか一方の目線で、悪役を作りたがるものですが、これはどちらからの目線で見てもいいかんじでしたよね♪
さすがイーストウッドです!
SGA屋伍一
こちらみる限りではまだ~むさんの旦那さんはきちんと家族を顧みるいい夫のようですが…?
ノルウェーまだ~む
そーですねぇ。
良い事しかブログには書きませんからね(笑)
週末の夜、毎週釣りに出かけては翌日昼寝してばかりでも、ゴールデンウィークの良い季節が毎年夫の実家の草むしりでも、爆発せずに時々「私っていい奥さんだと思わない~?」とニコニコしながら言うと結構効果テキメンです♪