「エセルとアーネスト ふたりの物語」☆英国版『この世界の片隅に』が素敵過ぎる!

思わずうっとり、そして愛おしくてため息が出ちゃう☆
本当の幸せは何なのかを教えてくれる何とも素敵な映画なのだ。

「スノーマン」でお馴染みの原作者のレイモンド・ブリッグズが自分の両親の結婚してから亡くなるまでの『ごく普通のありふれた生活』を描いた作品。
それはどこにでもいるお母さんとお父さんであり、自分の両親であり、はたまた自分自身なのだ。
思わずほっこりとして、にこにこが止まらない、そして終始うるうるしてしまったのは私だけでは無かったはず。
エセルポスター.jpg
「エセルとアーネスト 二人の物語」公式サイト(9月28日公開)
<ストーリー>
アーネストは出勤途中で見かけたエセルと恋に落ち二人は結婚する。
念願の男の子を出産し大切に育てていくが、大戦の影響が色濃いロンドンを離れ息子レイモンドは疎開する。
息子の手紙に一喜一憂しながらも戦禍を自作の防空壕で明るく乗り切り、息子もようやく無事に帰ってきた。
優秀な成績で学校を卒業して喜んだのもつかの間、エセルの希望する学校ではなく美術学校へ進学し髪をロン毛にしはじめた息子に・・・

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結婚して割とすぐ25年ローンでそれなりに立派なセミデタッチ⇧(長屋)を購入するので、一見『中産階級』のようにも思えるのだけどかなり切り詰めて生活している。
ついぞ亡くなるまで『カフェでお茶をする』事も無かったのに、二人はいつも幸せそう~~これ、これなの!!
この映画の素敵なところは、つつましく生活する二人が『つつましい』こと=贅沢できない生活を不満に思う事もなく、身の丈に合った生活を楽しんで幸せに感じているという所なのだ。
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そこここにほっこりとした笑いも散りばめられている。
二人は自分たちが『労働者階級』ではないと信じ込んでいて、新聞を見て労働者階級の平均給与より「牛乳配達」の自分の収入が少ないのをずっと不思議に思っていたし、勤続37年で定年した証書を自慢の息子の大学卒業証書と並べて額に飾ったりする(笑)
そして自分たちに学がないのを恥じることもないし、夫に不満を言ったりもせず、人と比べてギスギスすることもなく、むしろお隣の奥さんに息子の成績が良いのをちょっと自慢したりする。
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ドイツ軍の毒ガス攻撃に備えてガスマスクをしてわちゃわちゃしながら戦争中もまったりと幸せそう。
ロンドンなので爆撃もありガラス窓も全部割れてしまうのに、裏庭のバラが無事なことを喜んだりもする。
大変な事も辛い事もあったはずなのに、肩に力が入る事も無くどこかふわりとしているのだ。
エセル戦争.jpg
お母さんあるあるがいっぱい☆これは『息子の格好良く破けたジーンズを繕ってしまうお母さん』の物語なのだ(そういうシーンはないけど)
例えばフィアンセを連れてきた息子の髪の毛がボサボサなのが気になってバッグから櫛を出して「髪をとかしなさい」と言っちゃうとか、これうちのお義母さんと一緒だ!!!って思ってしまったwa(←事実)
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英国あるあるもいっぱい☆
パンかジャガイモしか食べないのに立派な食器をいっぱい飾っていたり、常に紅茶を飲んでいたり、アンティークと称して中古品を上手に買い求めて家を立派そうにせっせとリフォームしたり、上等な服を着て労働者階級の人と間違われないようにしたり(笑)
あと、字幕では「下品な事は言わないで!」とエセルがアーネストに注意するシーンがあるのだけれど、英語では「コックニー訛りで話さないで」と言っている。
これはイギリスがどうにもならない階級社会だったりすることが大きく影響していて、アーネストが東ロンドンのコックニーという下町育ちなことを表しているのだ。


飛び出す絵本のような、グリーティングカードみたいなやさしいタッチで丁寧に描いた英国の風景も本当に素敵☆
でも最も感動したのはエンディングでこの夫婦が同じ年に亡くなっていると知った時。
小さな幸せが何とも愛おしくてたまらない☆超おすすめデス

この記事へのコメント

  • zooey

    ロンドンで道を聞くとコックニー訛りで返事されて
    聞き取りにくくて大変なことがよくありました。
    レイモンド・ブリッグズ大好きだったからこれ、是非観たいのだけど
    東京は岩波ホールしかやっていないのね?
    う~ん…
    2019年09月13日 12:01
  • ノルウェーまだ~む

    >zooeyさん
    >
    コックニー訛りはともかくブリティッシュイングリッシュが実に心地よい響きでしたよ♪
    東京は岩波ホールだけなのは、ちょっと残念ですよね。
    もっと多くの人に見てもらいたい素敵な映画でした☆
    2019年09月13日 12:05
  • ごみつ

    こんばんは。

    この作品、とても良さそうですね~。

    お話をうかがうと、「風が吹く時」(こっちは恐ろしい話ですが)にとてもよく似ている感じがして、作品の素晴らしさが伝わってきました。

    絵も凄くきれいですね!(*'ω'*)

    アニメは劇場には見に行けないかもですが、今度、原作は読んでみます。
    2019年09月15日 21:02
  • ノルウェーまだ~む

    >ごみつさん
    >
    「風が吹く時」は未見なのですけど、多分似た感じだと思います。ただ、戦争の部分はごく一部で、彼らの人生のほんの一部という形になっています。
    原作も良さそうですよね~
    アニメも流れるほっこりとした雰囲気がとても良いので、いつかご覧になってみてください~☆
    2019年09月16日 09:04
  • セレンディピティ

    まだ~むさん、こんばんは。
    優しい絵柄に、なんとなく見たことがあるような... と思ったら
    スノーマンのレイモンド・ブリックスなのですね。
    最近では繊細なアニメーションは日本の独壇場?といったイメージがありましたが
    こんなに繊細で美しい作品があるなんて、と感激しました。
    ていねいにつづられていく、慎ましやかな家族の物語、
    豊かな時間が流れていますね。
    2019年09月17日 00:39
  • ノルウェーまだ~む

    >セレンディピティさん
    >
    そうなんです~
    スノーマンほどふわりとしたタッチではないものの、お話自体がふわりとしていて充分にレイモンド・ブリックスになっているんですよ☆
    慎ましやかがこんなにも豊かであることが、新鮮な驚きでした☆
    2019年09月17日 08:28
  • さっちん

    観てきました!最初、実写から始まったのであれ?これってアニメーションじゃなかった?って思ったけれど(これってレイモンド・ブリックズ本人?)素敵なお話でした。英国版「この世界の片隅に」ってほんとそのとおりだなって。夫と観れたのがよかったな。こんなふうに一緒に年取っていくのかなとかいろいろ考えちゃったよ。
    2019年10月11日 10:21
  • ノルウェーまだ~む

    >さっちんさん☆ありがとう~~!
    とーってもウレシイよ☆何度もやり直してもらって申し訳なかったwa~

    きゃ~ご主人様と観たのねーっ!?それは大正解YO☆
    ほっこりしつつ色々考えたりできて、観た後お二人はどんなお話されたのかな??

    そうそう、冒頭の実写はレイモンド本人らしいよ。
    彼が両親を想う気持ちが、最初の実写でより一層伝わってきたよね。
    2019年10月11日 20:05
  • ノラネコ

    本国公開から3年もかかってしまったけど、これは素晴らしかったですね。
    まさに愛に溢れた記憶の器。
    もう一つの「この世界の片隅に」
    何気に本国公開は「この世界」とほぼ同時期なのも縁を感じます。
    レイモンドのご両親の物語であり、世界中のお父さん、お母さん、子供の物語ですね。
    2019年10月28日 21:09
  • ノルウェーまだ~む

    >ノラネコさん
    >
    世界中の誰にでも当てはまるこの「平凡さ」が実に良かったですよね~
    特にイギリスの話って、ドロドロと暗いものか、もしくは王族の話、歴史的人物が多いので、より一層身近な物語が胸に響きました☆
    2019年10月29日 00:24

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