なるほど!確かに両作品の主役を演じていたデニーロが、「ジョーカー」にも逆の立場の役柄で出演していたり、類似点もいっぱいあって色々な発見があったyo
「タクシー・ドライバー」(1976年)

タクシードライバー (字幕版)
NYのタクシー運転手26歳のトラビス(ロバート・デニーロ)は、選挙運動の助手をしているベッツィ(シビル・シェパード)に一目ぼれしデートに誘うも、いきなりポルノ映画に連れて行って怒らせてしまう。
何度誘っても無視されたトラビスは、身体を鍛え拳銃を入手する。
選挙戦での暗殺行為が失敗し、夜の街で出会った12歳の娼婦アイリス(ジョディ・フォスター)が働く売春宿へ駆けつけたトラビスは元締めの男たちを撃ち殺す。しかしアイリスの両親からは感謝され新聞にも英雄として報道される。
夜のゆらゆらするタクシーからの景色が続く画面で、何度見ても睡魔と戦う羽目になってしまう(笑)
名作の呼び声が高いけれど、初デートでHな映画に連れていくとか、振られたら拳銃を買ってテロ行為を計画するとか、その辺りの気持ちには全く寄り添えなくて今一つ世間の評価ほどは高くない私。
でもラストのシーンは一回り大きくなった男トラビスにぐっとくるのだ。
「キング・オブ・コメディ」(1983年)

The King of Comedy (字幕版)
コメディアンを目指すルパートは人気コメディアンのジェリーに接触を図るが、なかなか相手にしてもらえない。
熱狂的ファンの女性と手を組んでジェリーを誘拐し、番組出演を承諾させる。
番組では人気を博し無事放送されるが、その場で逮捕される。その後獄中で執筆した本が大人気で遂に不動の人気コメディアンとなる。
同じデニーロとは思えないほど、しっかりコメディアンになり切っている!
確かに映画「ジョーカー」に類似点もある。
特にジョーカーが捉えられた医療刑務所(?)の廊下を右へ左へと逃げていくまさにラストシーンは、ルパートがジェリーの事務所で警備員に追いかけ回されるシーンと全く一緒。
人気番組に出演する夢や妄想に支配されている感じや、最後にメディアや一般市民により英雄として持てはやされる様になる映画の終着点は3作品とも同じだ。
ただ、脳に疾患のあるアーサー(ジョーカー)に対して、ルパートはラストの番組放送までは誰もが『彼は頭がイカレテいる』と思わせておいて、実はよく練習も勉強もしていて実力も才能もある人物だったというところが大きく違う点。
加えて上の2つの作品は男を挙げるのが本当の目的で、『イカれた』行為に走る無鉄砲さを描いていて犯罪そのものには興味を持っていない。
対して「ジョーカー」のアーサーは抗う事の出来ない大きな力に翻弄され『致し方なく犯罪に手を染め』たらいつしか目的が「犯罪」となっていく・・・
いずれにしても『承認欲求』を満たした先が上の2作品と「ジョーカー」では正反対だったことが良くわかり、「ジョーカー」で私が流した涙の訳が判ったような気がしたのだった。
この記事へのコメント
隆
「タクシー・ドライバー」では、捨て身になってでも、意地の為に犯罪をやってしまうもので、誰かに煽られたとか、指導者になりたいというようなものでは無いですね。むしろ、平和な国で全てが磐石な中でのテロというのは、孤独かつ無用な行為なので、いくら成功しても異邦人なのではないでしょうか。
対する、「ジョーカー」は、ゴッサムシティがカオスで、画期的な指導者を求めていたと思います。よくよく観れば、模倣犯や支持者が多数のジョーカーはモテモテキャラで、犯罪を通して、見た目通り、異形の成功を手に入れたと思います。
「キング・オブ・コメディ」はまた観まして、ブログに書きます。
隆
メディアは、毎日放送にあるように、社会や国民との、事件や犯罪、それらへの論評というものを、シニカルなものをも含めてやっていると思うので、とてもスピーディーな産業だと思います。だから、パプキンが成功の階段を昇る為にやってのけた「いかれた行為」も、その後の現場での活躍や功罪によっては清算される事ではないのでしょうか。
デ・二―ロの明るい部分が出ていましたね。
ノルウェーまだ~む
>
そこが2つの作品と「ジョーカー」との大きな違いでもありますよね。
むしろ「タクシー・ドライバー」のほうは、新聞でも大々的にヒーロー扱いされたのは全く意に介せず、堂々と地道にタクシー・ドライバーの仕事を続けるあたり好感が持てるものになっていたと思います。
ノルウェーまだ~む
>
実はあまりデニーロの出演作を見た事が無くて(近年の作品ではちょこちょこ見てますが)、彼がこんなにも凄い役者さんだったんだとこの作品で気付きました!
演技素晴らしかったデス。
セレンディピティ
先週あれから「ジョーカー」を見に行きました!
期待以上にガツンとくる作品でした。
ジョーカーが今回ご紹介された2作品にインスパイアされているというのは聞いていましたが、私はあまり意識しないで見ていました。でも続けて見ると類似点もよくわかって、興味深い発見がありそうですね。
「タクシー・ドライバー」はずいぶん前に見ましたが、実はその時には今ひとつよくどこがいいのかわからなくて... 改めて再見したい作品のひとつです。
今なら感じるものがあるかもしれません。
「キング・オブ・コメディ」もいずれ見てみたいです。
デニーロはすごい役者さんですよね。
ノルウェーまだ~む
>
そうなんですよ~!私も何度か「タクシー・ドライバー」見ているのですが、どうも今一つ良さが解らずで…
でも2つの作品はどちらもいわゆる『男の美学』なのかなって、今回思いました。
だから女性には理解しにくいのかもしれないですね。
とにかくデニーロを楽しむために、一気に2作品をご覧になられることをおススメします☆
にゃむばなな
その彼がデートで失敗するとかは自然なことであり、それこそが元々精神が壊れかけていた男の精神が完全崩壊するから凄みがあるんですよね。
その辺りが『ジョーカー』と似ていると私は思いましたよ。
ノルウェーまだ~む
>
こちらの記事にもコメントありがとうございます。
なるほど、夜眠れなかったりと既にベトナム帰還兵の精神崩壊の兆候は出ていましたものね。
ただラストの自信にあふれた振る舞いは、崩壊しきった(?)後とは思えない冷静さもありましたね☆
ごみつ
わ~、早い。2本ともご覧になったんですね。
「タクシー・ドライバー」は、私にとっては70年代ベスト映画の一本、スコセッシの最高傑作だと思ってる作品です。
「タクシー~」「キング・オブ・コメディ」そして「ジョーカー」に共通してるのは、主人公が精神を病んでしまっている事ですよね。
人生の中で辛い経験をし、やがて妄想と現実の区別がつかなくなってゆく・・。(解離性障害っていうらしいです)
「キング・オブ・コメディ」はその中でも一番のんびり見られる作品の様でいて、パプキンの芸のシーンで彼のそれまでの人生がわかり、私、固まってしまいましたよ。
3本とも怖い映画だし、悲しい映画だし、現代社会の病巣を感じる作品でもありましたよね~。(;´・ω・)シミジミ
隆
ノルウェーまだ~む
>
解離性障害はある意味、現実から逃避することで辛い現実から自分の身を守る一種の防御の表れですものね。
その辛い現実こそが現代社会の病巣という点で確かに3作品は共通していますね。
何十年経ってもそんな社会は変わってない・・・というのが何しろ哀しいです。
ノルウェーまだ~む
>
再びありがとうございます。
師匠の所に鬱陶しく通い詰めて、やっと認められてのち芸を磨いていく人たちは昔なら成功物語としてよくありましたよね。
パンプキンの出所後の人生も見てみたいですよね☆