キューブリック「シャイニング」VSスティーブン・キング原作

時は満ちた。
前作「シャイニング」見たし、原作上下「ザ シャイニング」も読破したし。

随分前に何度かスタンリー・キューブリック監督「シャイニング」を見たけれど、今回改めて見るとやっぱり傑作だなぁと思うのだった。
練りに練られて、寸分の隙もないかんじ。
「シャイニング」(1980年)
Clipboard018874445.jpg
冬の間閉鎖されるオーバールックホテルの管理人としてやってきた小説家志望のトランス(ジャック・ニコルソン)は、ホテルに憑りついた何者かの影響で次第に精神を病んでいく。
霊感(シャイニング)の強い息子のダニーは様々なものを目撃するが、豪雪に阻まれたホテルからは逃れる事が出来なかった。
遂に斧を振り回してトランスが妻と息子のダニーを殺そうと襲ってくる。

Clipboard015534443.jpg
何でも左右対称がこんなにもざわざわするとは・・・と実感したのは、今年の夏福島で泊まったホテルでのこと。(「GRAND XIV(エクシブ)那須白河」☆高級志向ゴージャスホテルでキューブリックの世界に浸る
似ている双子ですら何だか怖い・・・(自分も双子だけど・笑)
Clipboard0133311.jpg
徹底的にビジュアルにこだわったキューブリック監督。何もしないのにホラー顔のキャストで既に100%成功していると言っても良いのかも☆
私が凄いと思ったのが、映画ではすっかりカットされているキングお得意の人物描写「カッとしやすいジャック・トランスという人間」をジャック・ニコルソンの何ともいえない『悪そうな眉毛』で全て表現しているところ(爆)
Clipboard016661122.jpg
ただしキングが描きたかった本当のところがこの部分であって、『アル中でDVの父親の血を引き、思うような職も得られず自分の弱い部分を克服できない主人公』と『不遇な環境やトラウマを乗り越えて成長するまだ幼い男の子』はどちらも自らを投影したものであるから、バッサリとカットされたらやっぱり嫌だったのでしょう。
新装版 シャイニング (上) (文春文庫)
新装版 シャイニング (上) (文春文庫)
新装版 シャイニング (下) (文春文庫)
新装版 シャイニング (下) (文春文庫)
パパンの愛蔵書を借りて読破した私。まさか表紙がこんなに可愛いとは!?ほのぼのした話と間違えて買った人いたらビックリするよね?

私の感想としては父親として・母親としての葛藤をじっくり描いた点で原作は秀逸。
しかしキング作品で私がどうしても好きになれない『悪魔の仕業がB級ホラー的映像として描かれているところ』はキューブリックもバッサリカットしているので映画の方が私好みかな☆
ただジャック・ニコルソンでは主人公が知的職業(教師)だった人物にはちょっと見えなかったのは残念。

原作の結末ではホテルが大爆発して終わるのだけど、映画「シャイニング」も原作も両方リスペクトして二つの間を取った・・・という「ドクター・スリープ」はさて、どうなっているのか??もう楽しみで仕方ないwa~~

この記事へのコメント

  • アメリカは進んでいる、と言うべきか、閉店中のホテルの管理人を家族ぐるみで請け負って、ついでに田舎で休暇を過ごすって、グリーンツーリズムの典型だと思います。好きなものは好きと言うべきなんですが、多分、このホテルを中心として、不思議な現象が起きているんでしょうね。

    作品の季節は師走かな?ちょうど良いセレクトだと思います。

    都会のイルミネーションは、豊かさを誇り、その幸を分かち合ってくれますが、この異人たちというか、不思議の国の住人達は、生きる人間を必要としているのでしょうね。ジャックの狂気然り、明るさはありませんが、多分、これは、人が恐れるのを見る側、つまり、心のプレデターにとっては、飛んで火に入るというか、祭りのようなものなんじゃないでしょうか。

    昔見た時は、映像的にも不思議な恐さがありましたが、心理戦というか、風の音とか羽音、小動物の足音などですら、恐かったです。何か、恐怖の快というか、矛盾の心理が広がって行く感じでした。でも心地良いんですよね。
    2019年12月08日 10:55
  • ノルウェーまだ~む

    >隆さん
    >
    スタンリー・キューブリックは視覚的・聴覚的に怖がらせる天才といってもいいですよね。
    具体的に何がどうと言えないような、感覚的に不安になる要素がてんこ盛りでした。
    不思議な怖さがありましたね~
    2019年12月08日 17:56
  • セレンディピティ

    まだ~むさん、こんばんは。
    ほんとだ! シャイニングの原作って、こんなにかわいい表紙だったのですね?
    映画の方は最初から、ホラー感満載でしたものね。
    映像や美術に対する緻密な計算は、さすがはキューブリック監督ですが
    それ以上にジャック・ニコルソンの存在感が印象に残っています。
    映画の評価が独り歩きして、原作者としては複雑な気持ちかもしれませんね。^^
    2019年12月08日 21:54
  • ごみつ

    こんばんは。

    「シャイニング」、私も久しぶりで鑑賞しましたが、やっぱり素晴らしい映画ですよね。

    キングはこの映画を「空っぽのキャデラック」って言ってるそうなんですが、そのキャデラックが見事なキャデラックなもんで、やっぱ凄い!って思っちゃいます。

    あと、音楽も良いですよね~。あのテーマ曲が流れると、「うわ~、オーバールックホテル!!」ってなります。(;^ω^)
    2019年12月09日 00:15
  • ノルウェーまだ~む

    >ごみつさん
    >
    「空っぽのキャデラック」って言い過ぎですよね(笑)
    私はそういう発言をしちゃうキングが、ジャック・トランスを彷彿とさせるなぁと常々思うのです。
    自分の作品に思い入れがあるのだと思いますが、自分自身を投影させた部分をバッサリやられたことで、ぷん!ってなったのでしょうね☆
    2019年12月09日 01:11
  • ノルウェーまだ~む

    >セレンディピティさん
    >
    内容と表紙のギャップ、激しすぎますよね~(爆)

    そうなんです!映画はとにかくジャック・ニコルソンも妻もホラー顔なので(笑)もう怖さが最初っからさく裂しちゃうのです。
    その点、原作はもう少しじっくりと心理描写がなされていて、誰にでも共感できる人間の弱さやマイナスの感情をジェットコースターの様に揺さぶられるところが見事なのです。そこバッサリされちゃって、確かに原作者も複雑なわけですね。
    2019年12月09日 01:23

この記事へのトラックバック

人気記事