1作目でも主人公はどこまでも「クソ」だった。
「クソ」なダメ男を描かせたら、小説家又吉氏はある意味右に出るものが居ないのではないかしら。
「劇場」(7月17日公開)公式サイト
店でコーヒーを飲むお金すらない永田(山崎賢人)は偶然出会った沙希(松岡茉優)をナンパしてご馳走になる。
二人はいつしか惹かれあうようになり、永は沙希のアパートに転がり込むが、前衛過ぎる永の劇団は酷評ばかりで劇団員は解散寸前だった。
沙希のバイト代と実家からの食糧で食いつなぐ二人だったが、遂に沙希は夢だった女優の道も服飾系の大学も諦め、昼夜問わず働くようになる。
そんな沙希に優しい言葉すらかけずに、自己嫌悪と自己顕示欲にさいなまされた永は沙希のアパートを出て一人で暮らすうちに・・・
とにかく松岡茉優の演技が自然体で見事。
青森から出てきたばかりの、ちょっとぽわぽわとしてあざとくない程度にブリッこな沙希から10年後27歳になって毎夜酒に溺れるようになった沙希まで、ほとんど沙希の家の中という限定された空間でもここまで自然体なのにきちんと違いを出しているところがまず見事!
もう一つ素晴らしい所は二人のラブシーンが1回も無かったこと。本来ならベタベタのラブシーンがあっても良さそうな物語に、手をつなぐことも恥ずかしい永くんの不器用な愛が見事に描かれている。
対してイケメン山崎賢人はほぼホームレス状態の風貌で、恐れずに(?)とにかくムカつくダメ男を好演している。
そんな彼に共感できるところは1ミリもなく、こういう男性を支えたいと思う健気な沙希の気持ちにも全く共感できなかった私。
いやはや、何が嫌いってこういう男が大嫌いなのだ。
そして「とかく芸術家ってこうだよね♥」と奔放で身勝手なアーティストを支える私ってステキな『自分に酔っている』女性も苦手。愛妻家の芸術家だっていくらでもいるでしょう?
ところが、原作者又吉直樹と行定監督、演者の山崎賢人のインタビューを見るとどうも多くの男性が「これは俺だ」と思うらしい。
そして実際下北沢あたりにはそういった人物がゴロゴロいるのだそう。
互いに心の支えであったのに、その一言が言えずに・・・
事実、沙希は10年間を無駄に永くんに捧げていただけではなく、地方から出てきたばかりの彼女にとって彼が救いであったのは事実。
ほんの少し自分の気持ちに素直になれていたら・・・と永の無駄に高いプライドと他人に嫉妬してしまう小さな自分に気付いてしまう恐怖と抗う気持ちに、少しずつ永に寄り添い始める自分が居る。
80%永のクソっぷりを見続けて、ひたすらムカつく思いに耐えていると、ラストに待っている思いがけない演出方法にたちまち号泣の私。
小説を読むように一人称で語る主人公は、作者又吉氏本人でもあり、彼の憧れ、いや全ての男性憧れの姿なのかも。
映画館公開と同時にamazonプライム配信という斬新な方法を選んだ本作。
今の時代に即した映画公開方法は正解ね☆
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この記事へのコメント
ごみつ
ここのところプライムが全然見れてないのですが、「劇場」が配信されてるんですね!
これは、映画館に行こうかな~と思ってたので、私も見なければ。
「火花」が良かったので、ちょっと期待してるんですよね。予告編も良かったし。
楽しみ~~。!(^^)!
ノルウェーまだ~む
>
私も「火花」は読んで良し、観て良しだったので期待していたんですよ。
劇場へ行く不安なしにお家で見られるのって良いですよね♪
是非、ご覧になってください~~
私はこの手の男が嫌いなので、ややムカつきが大きかったですが、だめんずに惹かれる女性なら共感しちゃうんじゃないかなぁ~
セレンディピティ
私は「劇場」の原作を読んで、「火花」より好みだったので
映画も楽しみにしていました♪
しかも、Amazon Prime で見れるんですね? うれしい~
私も永田みたいなタイプは大嫌いなので
沙希ちゃんの親目線で、沙希ちゃんダメだよ!
とずっと思いながら読んでいました。^^
原作を読んでいる時は、永田を又吉さんと重ねて読んでいましたが
山崎賢人さんだったらまた違った印象を持つかも??
いずれにしても楽しみです。
ノルウェーまだ~む
>
私も永くんは又吉氏を投影しているのだろうなと思いながら見ていました。
これは男女のお話になってますが、芸人さんだと先輩後輩の立場でも置き換えられそう~と思います。
ただ、山崎賢人でも嫌いは嫌いでしたよ~~(爆)
やっぱりお母さん目線になってしまいますよねぇ。娘がこんな目に遭っていると思うと、母は辛いwa~~
Nakaji
実はこの監督がにがてだったので、どうしようかな・・って思っていたんですよね。
配信も同時ってすごく新しいですよね。
ノルウェーまだ~む
>
行定監督苦手なのですか??!
と言う私もよく考えたら、彼の作品はあまり見て無くて「せか中」すら未見でした。
「GO」は凄く好きですよ♬
配信なので気楽に見れますから是非!好きにはなれないかもですが(笑
ノラネコ
もちろんあんなイケメンじゃないけど、沙希ちゃんのような彼女がいたら、確実にヒモ化します。
ぶっちゃけ、私の周りもあのタイプはゴロゴロいます。
ホント女の子がいる家庭は、小劇団関係とバンド関係と映画関係と芸人関係には近づけない方がいいです。
しかしだからこそ、このダメ人間に思いっきり感情移入してしまいました。
ノルウェーまだ~む
>
マジかーっ!?
まあ、夢に向かって突き進む男子はカッコイイですよ、確かに。
そしてあまた居るその手の永田からほんの一握りだけ成功して、それ以外はヒモになっちゃうんでしょうね。
とはいえ、ヒモならヒモでもっと感謝したり沙希ちゃんに愛情を伝えて欲しいんですよね。
そうしたら彼女だってダメ永田を養っていくのは苦じゃないはずだし、むしろ喜びなのは凄く理解できるんですよ~
latifa
せっかくだからコメント残させて下さい^^
先日検索窓に「劇場」って入れたら、色々映画がヒットして出て来て、あ!これもご覧になってる! あ、これ私も好きだった映画だーとか、ちょっと寄り道しちゃった^^
>もう一つ素晴らしい所は二人のラブシーンが1回も無かったこと。本来ならベタベタのラブシーンがあっても良さそうな物語
それ。私もそれ思いました。
あんまり生生しいラブシーンが好きではないので、サラっと流してくれたのは良かった。
下北沢あたりに芸術家の卵、アーティスト系を目指してる人、多そうですよね。
私もヒモ体質の男性は嫌いです!好きにならない自信があります(が、それなのに映画は結構ツボに来ちゃったのが不思議)
さきちゃんみたいな女子、たまにいますよね。
友人だったら、やめとけって止めちゃうなあー。
ノルウェーまだ~む
>
ふふふふ…latifaさんなら私と同じ感想~って思ってましたよぉう🎵
生々しいシーンは特にこの映画では必要ないしね。その辺も又吉氏の原作の特徴が出ているっていう気もしてました。
なんだろう?そういう男女間の濃密な関係を描いているんじゃなくて、ある意味?男女間の何とももどかしい『精神的な濃密なつながり』?みたいなのを描いている点で、この映画はなかなか良かったと思えるんですよね。
ヒットした「花束みたいな~」のとは格が一段上な感じがしてます。