「罪の声」☆大人のエゴの代償

35年前に一世を風靡した未解決事件をモチーフにした作品。
本当は犯人が捕まっていないので、あくまで「モチーフにした」となっているけれど、改めて実際の「グリコ・森永事件」を見てみるとこの映画そのもの、いやこの映画がほとんど実際の事件そのものなのだ。

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家の押し入れから亡くなった父の想い出の箱を見付けた俊也(星野源)は、1984年と書かれたテープに35年前日本中を騒がせた誘拐事件に使われた自分の声が録音されていることに気付く。
大日新聞社の阿久津(小栗旬)は平成が終わるタイミングで「昭和の未解決事件」を特集することになり、古い手掛かりを改めて調べ直していた。
そんな二人が遂に繋がり事件の核心に迫るが、俊也の他に声を使われたとされる子供たちは事件に翻弄され、不幸な人生を歩んでいたと判明し・・・

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何も知らなかった時はただ幸せな家族だったのに・・・
冒頭、身代金を運ぶ指示を録音した声が自分の声だと判った瞬間は、私まで全身ぞわっとしてしまった。そこから一気に不穏な展開になり、罪の意識にさいなまされる日々と、真相を究明しようとする気持ちとの間で葛藤しながら真実に向けて突き進む様子は、本当の取材そのものを描いているようで、何の誇大表現も突出した演技もないところが、逆にリアリティーがあって見ごたえ充分。
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物凄い密になってする新聞社の会議。コロナ禍では新聞社の人たちはどうやって仕事していたのかな?

映画は最後「真相」にまで辿り着くので実際の事件とは違ったり脚色しているに違いないわけだけど、番宣で出演していた小栗旬によると「取材ではほとんどが表に出せない事ばかり」なのだそうだから、案外この映画のほうが『本当のこと』を描いているのかも?
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取材は遠くロンドンまで。
過激派や赤軍元メンバーが海外逃亡しているなど、今は遠い昔の話で若い人などはピンと来る人の方が少ないのでしょうが、この映画は海外で逃げおおせている犯人の影で、実は巻き込まれた「当時の子供たち」が苦しい人生を送っていたことを描いている点で秀逸。
後半は涙無くては見られない。
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当事者と記者を結び付けた板前さんがキーポイント。
道頓堀の有名お菓子メーカーの看板も見所☆って、まんまグリコやん!

映画は沢山の人物が登場するので、ちょっぴり混乱する。しかしモブキャラはほとんどなく、全てが重要人物なのでしっかり気を確かに持って観るべし!
ラストの衝撃的な事実までは、京都弁のほっこりした雰囲気が物語の重たさを緩和させてくれる。非常に面白い作品。オススメdesu!

この記事へのコメント

  • セレンディピティ

    まだ~むさん、こんばんは。
    グリコ・森永事件がモチーフというと、高村薫さんの「レディ・ジョーカー」(未読)がありますが、きっとこれはそれとはまた違った切り口で作られているのでしょうね。
    脅迫の声に、何も知らない子どもたちの声が使われていたということでしょうか。
    未解決事件だけに、いろいろと想像をかきたてられますが、衝撃的な結末も気になります。
    2020年11月03日 01:22
  • ノルウェーまだ~む

    >セレンディピティさん
    >
    私も「レディ・ジョーカー」は未読ですが、どうもそちらよりは実際の事件に近いんじゃないかな?と言う印象があります。
    もしかすると取材で得たけど公開できない様な情報を、あえてエンタメと言う形で世に出したのかも~なんて思って観ていました。
    物語の主軸は実は知らないうちに犯行の一端を負わされた子供たちの「その後」にあるんです。見ごたえ充分でしたよ☆
    2020年11月03日 23:21
  • ふじき78

    宇野祥平氏が本当にそう言う体験をしたようにしか見えなくて凄かったです。そんな宇野祥平氏の次回作は女装殺人鬼です。振り幅でかいのう。
    2020年11月07日 00:03
  • ノルウェーまだ~む

    >ふじき78さん
    >
    ええーっ!?それはまた凄いですね?
    本当に彼の演技は最高でした。というか、この映画で一番良かったですよね☆
    2020年11月07日 22:52
  • ノラネコ

    非常に面白かったのですが、私的には新左翼運動への辛辣な見方が一番印象に残りました。
    本作の原作者と世代が近い監督による「マイバックページ」が似たような視点で描かれていて、この見方はやはり世代的なものもあるのかなと思いました。
    まあグリコ森永事件の真相がそうだったかは分かりませんけど。
    2020年11月14日 23:05
  • にゃむばなな

    子供がいる大人が「奮い立った」とか「正義」とかを口にするシーンは、この時代に生きる我々からすると怒りを覚えてしまうフレーズでした。
    もちろんあの時代を生きてこられた方には意義あるフレーズかも知れませんが、でもそれらは子供の人生を台無しにしていいほどの価値があるものでもない。
    本当に大人のエゴって嫌ですよね。
    2020年11月14日 23:59
  • ノルウェーまだ~む

    >ノラネコさん
    >
    そうですね、真相は相変わらず闇の中ですが、上手い結論付けだなぁと感じました。
    「マイバックページ」は見たはずなのにすっかり忘れています(笑
    「正義」を盾に行った行為で、結果的に子供たちを不幸にする大人のエゴについて実に上手い事描いていましたよね☆
    2020年11月15日 23:14
  • ノルウェーまだ~む

    >にゃむばななさん
    >
    本当にそうですね~
    「正義」を盾にして結果的に多くの犠牲を生み出すことに、『大人』になっても気が付かないのはどうなの?とつくづく思ってしまいます。
    ただし、大きな権力に対してデモで戦うことを描いた「タクシー運転手約束は海を越えて」は戦う側から描いていたわけですが、『権力と戦う』ことと『権力に復讐する』ことは全く別のものなんですよね。
    2020年11月15日 23:20
  • ここなつ

    こんにちは!
    これ、面白かったですよねぇ~!
    キャスティングも結構絶妙で。私は宇崎竜童が出てきた時には心の中で小躍りしてしまった位です。
    創作だって判ってはいるのですが、いつの時代でも子供が大人の都合で犠牲になる…辛いことですよねぇ。
    2020年12月08日 16:48
  • ノルウェーまだ~む

    >ここなつさん
    >
    今年はあまりパッとした作品が公開されてなかったので、私の中では結構なヒット作でした。
    宇崎竜童ぴったりでしたね~~
    大人の為に犠牲になる子供、彼らが大人になってどうだったかという視点は結構珍しくて、非常に興味深かったデス☆
    2020年12月08日 17:49

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