パパンと観に行かなくて良かった・・・観たら絶対ノマドしそう~~
もともと年代的にヒッピー世代である上に、自身の父親から「お前は少し気を抜くとホームレスになりやすいから気を付けるように。」と言われていたらしい。
「いつか蜂を育てながら、花の咲く地域を日本全国旅しながら暮らしたい。」と真剣に話していたこともあったし、家の本棚には「TOKYO0円ハウス 0円生活」やら「インドで暮らす 働く 結婚する」などの本が並んでいたし。
私がどんなにひやひやしながら生活していたかお察しいただきたい。
「ノマドランド」
夫に先立たれた上にリーマンショックの企業倒産で社宅も失くしたファーンは、想い出の品だけを古びたバンに乗せ旅に出た。過酷な環境下で生活していくうち、季節労働先で知り合った人に勧められノマドが集まる集会に顔を出す。
自由に放浪生活を楽しんでいる人々に感銘を受け、様々な場所で大自然と共に生きる素晴らしさを知るとともに、また孤独とも向き合うのだった。
物語の冒頭は車上生活を余儀なくされたばかりのファーン(フランシス・マクドーマンド)の不安げなアップや、雪に閉ざされ寒さに震える狭苦しいバンの中など、街の中の駐車場で暮らす制限のある生活が描かれる。
しかし後半に行くにつれて画角は広がり、ファーンは大自然の中に取り込まれてポツンと小さな存在になっていく。
マクドーマンドの他にはファーンに好意を寄せるデイブ(デビット・ストラザーン)のみが俳優で、後は皆さん本物のノマド。
その生活にスルッとマクドーマンドが入っていくという斬新な撮影手法を使っているのだそう。
そんなことが出来るのも彼女だからこそ。
それで余計にドキュメンタリーのようだなと感じたのかも。
そんなノマドの一人リンダは仲良くなって色々なノマドの生活とその喜びを教えてくれる良き仲間となるわけだけど、彼女はすごく自然体で、ふつうに役者なのかな?と思ってしまったくらい。
こんな年齢になっても働かないといけないなんて~と思う反面、働きたい=社会の一員として役に立ちたいという気持ちは何歳になっても同じなのだと気付かされるのだ。
大自然を独り占め~~憧れの生活のようであり、老後のその先を考えると不安にもなる。
若い時から家族を置いてずっとドサ回りしていたデイブですら、息子のところへ定住する道を選ぶ・・・というのもこの映画の面白い所。
決してノマドという生き方を推奨するでもなく、非難するでもない、このスタンスが映画最大の魅力なのかもしれない。
「ミナリ」にしても移民を描いたロードムービーだし、これはアカデミー賞の最近の傾向なのかな?
よその国からやってきて、開拓する土地が決まるまでは放浪の旅をしていたに違いないアメリカ人のルーツを今一度思い出そうということか?
自由を愛し、自然を愛し、孤独すら愛してまた旅に出る。どこかで野垂れ死にしても静かに追悼してくれる仲間がいると言う事が支えなのかもしれない。
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この記事へのコメント
セレンディピティ
この作品も「絶対に見たい!」と思っています。
ミナリにしても、本作にしても、リアルなアメリカが描かれている
良質な作品という感じがしますね。
声高でないところがまたいいです。
ノマド生活は私には無理と思うけれど
こういう放浪の旅、ちょっと憧れます。
ノルウェーまだ~む
>
半分憧れ、でも本当の厳しさも描かれていて、その世界で生き抜くのは甘くないのだと認識を新たにさせられましたよ。
原作の題名の『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を見ると、高齢になってその生活を余儀なくされた人たちという視点なのだろうなと思いますが(未読です)映画ではそれを誇りとして昇華して描いているのが良かったです。
ノラネコ
ノマド生活、彼女らが背負ってるものが重過ぎて、憧れてるとか言いづらいのですが、やっぱちょっと憧れてしまいます。
知らない誰かとでも、通じ合い思いやることができるというのは、コロナ禍に見ると余計に刺さりますよね。
ノルウェーまだ~む
>
本当にその通りですよね~
色々なことに縛られずに、大自然の中でただそこに居るという暮らしは、一定期間の事なら憧れますが、病気をしたり後期高齢者の年齢になったりしたらやっぱり辛いことのほうが多そうです・・・(汗
今やアメリカ人の原点を思い出すことが出来るのは、ノマドの他には後から遅れて入植してきたアジア人くらいなのかもしれないですね。
ここなつ
本作、心に沁みる作品でしたよね!
でも…
>パパンと観に行かなくて良かった・・・観たら絶対ノマドしそう~~
以降には思いっきり笑わせていただきました(笑)
マジな話では、世間との折り合いと自分自身との向き合いとは、いくつになっても色々難しいのだよなぁ、と思っているところに、こんなノマド生活を見せられると、心にさざ波が立ってしまいます。
でも、それは温かな波なんですけどね。
ノルウェーまだ~む
>
笑いをお届けできて良かったです♬
彼の心の中にはノマドが息づいているので、最後は釣り場と思ってまして、退職の記念に移動した記録がスマホに送信できるスマートウォッチをプレゼントしておきました。
しかしこんな風に自由に生きるノマドな生活は、誰にとっても一種の憧れでもありますね。
ただ容易に憧れだけでは生き抜けない過酷な生活を知ることも出来ました。
にゃむばなな
でもフランシス・マクドーマンドと一緒にいると俳優に見えてしまう。
いや逆に本物のノマドであるリンダと同じように見えるフランシス・マクドーマンドが凄いんだと気付かされました。
そうなると、いつの日かフランシス・マクドーマンドに3度目のオスカーを期待したくなりますね。
ノルウェーまだ~む
>
自然体で演じられるリンダも凄いし、すっかりノマドに溶け込めちゃってるマクドーマンドも素晴らしかったですね~
あと、何となく気分屋?のスワンキーにスタッフが振り回されている感も感じられて、ドキュメンタリーとの境界線がないのも凄く興味深かったです。
zooey
多くの人が感動したと言っている中で言いにくいのですが
あんまり刺さるものがなくて。
アメリカという国を舞台にしてこそ、成立した映画なのかもしれませんね。
ノルウェーまだ~む
>
従来の感動を呼び起こすタイプの映画とは違ってましたね。
静かで、どことなくフランス映画のような小津作品のような、ザ・アメリカンではない新しいアメリカ映画を、アジア人監督が撮影したことが注目されたのだと思います。
セレンディピティ
先週見に行って、ようやく感想を書いたところです。
明日のアカデミー賞の結果はどうなるでしょうか?
個人的にはミナリの方が好みですが、本作もすばらしかったですね。
ただ、こういう生き方はとてもできないな。。。と思いながら見ました。
マクドーマンドの演技も、他のノマドの方たちの自然体の演技も
すばらしかったですね。
ノルウェーまだ~む
>
再度コメントありがとうございます!
確かにそうですね。生半可な気持ちでは貫き通せない、自由だけど過酷な生活でもありますね。
3か月くらいは暢気に日本全国、もしくはヨーロッパを放浪してみたい気持ちはありますが、それも終わりがあるから楽しいのであって・・・
アカデミー賞明日でしたね!?楽しみ~~
ボー
ノルウェーまだ~む
>
うん、違う!