久しぶりに邦画を見たくなったので、気になっていたけど見逃した作品をいくつかチョイス。
「望み」(2020年)
望み - 堤真一, 石田ゆり子, 岡田健史, 清原果耶, 堤幸彦, 奥寺佐渡子
部活を辞めてから遊び歩く反抗期の息子(岡田健史)が夜に出掛けたまま帰らなかった。
他殺体が発見され息子の友人と判明すると、周囲は息子も加害者ではないかと疑惑の目を向け、仕事はキャンセルされ嫌がらせや妹もいじめを受けるようになってしまう。ネットの噂でもう一人被害者がいると知り、加害者であっても生きていてほしい母(石田ゆり子)と被害者であっても無実でいてほしい父(堤真一)は心がすれ違う。
役者の演技も素晴らしいけれど、とにかく映像での表現が素晴らしい!
冒頭とラストに幼少期からの家族写真を全く同じように映すことであえて事件後の心象が違う様子を表現したり、被害者ではと疑っている最中に見上げる我が家が斜めになっている中盤と、息子の無実が証明されたあと同じアングルから見上げて真っ直ぐに建っている家。空からのアングルで冒頭眩しいほど明るかった庭は、家族みんなの平穏な未来が約束されたのにラストでは隣の家の陰になって庭が暗くなっているなど、一言も言葉にせず家族の心情を映像だけで表せるのは映画だからこそと感服した。
全ての子を持つ親と同じように、どの立場のどの感情にも心底共感できてしまい胸が苦しい。
「人間失格」(2019年)
人間失格 太宰治と3人の女たち - 小栗旬, 成田凌, 二階堂ふみ, 千葉雄大, 高良健吾, 宮沢りえ, 藤原竜也, 瀬戸康史, 沢尻エリカ, 蜷川実花, 早船歌江子
献身的に尽くしてくれる身重の妻(宮沢りえ)がいながら女と心中を繰り返す太宰(小栗旬)は、文才のある静子(沢尻エリカ)の日記を参考に「斜陽」を生み出すべく彼女と燃え上がる恋をする一方、戦争で帰らぬ夫を待つ富江(二階堂ふみ)とも関係を持っていた。
結核に体を蝕まれながらも、文壇で評価を得られぬ事に加え作品が書けない苦悩でさらに女に溺れていく。太宰の才能を信じていた妻は・・・
蜷川実花監督だし映画サイトの評価それほど高くないし・・・とハードル低めで見たのが良かったのかも☆
愛人のターンでの監督お得意の極彩色と、妻が暮らす家や真剣に執筆しているシーンでの抑えた色調と緩急をつけた映像美が秀逸。
普通ならこんなクズ男の話なんて!と思う物語も、女性が放っておけない太宰の甘えっぷりのクズ加減と、どっこい捨てられたはずの女性の清々しいまでの強さが小気味よい。
何よりキャスティングがこれ以上なく見事!ねえねは藤原竜也の坂口安吾が素晴らしかったと文壇ファンならではのコアな評価(笑
「検察側の罪人」(2018年)
検察側の罪人 - 木村拓哉, 二宮和也, 吉高由里子, 松重豊, 山崎紘菜, 山﨑努, 原田眞人, 原田眞人
エリート検事の最上(キムタク)に憧れる沖野検事(二宮和也)は、夫婦殺害事件の容疑者として浮上した松倉の取り調べをするうちに、最上が彼を容疑者に仕立てようとしている事に気が付く。松倉が過去に容疑者として浮上しながら未解決に終わった事件と最上の関係を知り監視していると、別の容疑者を拉致した形跡があった。失望した沖野は検事を止め松倉の国選弁護人に協力するのだが・・・
キムタクもニノも演技は素晴らしく申し分ないのに、物語が盛りだくさん過ぎて説明不足の部分も多く、それで評価が低かったのだと納得。
原作にない太平洋戦争をねじ込んだのが中途半端、親友の命を賭してまで暴きたかった妻の不正?と謎の教団についてがさらっとしすぎて判りにくいのも敗因。何よりでっち上げのためにここまでする?という違和感が大きい。
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この記事へのコメント
ここなつ
「望み」の方ですが、まだ~むさんは、映像の方でもメッセージを感じ取られていたのですね。素晴らしい。
私はただただ直情的に鑑賞してしまったので、細部まで目が行き届いていませんでしたぁ。
しかし、子を持つ親としてだけでなく、現代の少年犯罪やマスコミの在り方までも問う作品だったのではないかと思います。
ここなつ
「検察側の罪人」は正におっしゃる通り!
詰め込み過ぎなんですよねぇ~謎の教団については引いてしまう位でしたし。
ノルウェーまだ~む
>
本当ならどの親も母の気持ちだと思います!
私もその場になったら感情としてはそうなるかも~~
多分父親から見た息子は絶対的無実だと信じていて、母や義母のように「もしかしたら?」と息子を疑ってしまう気持ちが嫌だったんじゃないかなぁとも思ったりしました。
生きていてほしい=犯人であることを望むのと、潔白であってほしい=死んでいると望む、そのどうにもならない感情の部分(多分本人たちにも言い表せない)を映像で表現していたのだと感じました☆
ノルウェーまだ~む
>
追記もありがとうございます~
謎の教団は新興宗教をバカにしすぎてるような?(爆
そういう意味では人殺しまでして犯人をでっちあげようとする検事っていうのもあり得なくて、ドン引きでした~
セレンディピティ
「望み」はタイトルだけだと今ひとつ印象が弱いですが
なかなか見応えのある作品のようですね。
映像表現にも注目して見てみたいです。
「人間失格」は蜷川実花さんの作品なのですね。
蜷川さんの映画、一度見てみたいと思いながら
今に至っています。
彼女の映像世界にひたってみたい♪
太宰は神格化されすぎてる?と私は感じていますが
映画を見たら少しは考えが変わるかしら?
役者さんたちの演技も見応えがありそうですね。
ノルウェーまだ~む
>
「望み」という簡単なフレーズからは想像もできない重厚で深い深い内容になってるんですよ~
セレンさんも息子さんをお持ちなので、かなりのめり込んで見られると思います。是非ご覧になったら感想伺いたいデス!
こちらの太宰は神どころか人間臭いまさに人間失格なダメ男としての太宰を描いているので、そういう点でかなり面白く、セレンさんの考えも180度変わることでしょう(笑