「君は永遠にそいつらより若い」☆自主映画の香りをまとった物凄く深い社会派映画

津村記久子のデビュー作で第21回太宰治賞を受賞した「君は永遠にそいつらより若い」が原作。
今流行りの長い題名といい、大学生のキャンパスライフやら予告編で垣間見せる女の子同士の恋愛を匂わせる感じで、勝手にその手の映画かな?と思ったら大間違い。
実際中盤までは、まるで自主製作映画風のたらたらとした「いまどきの大学生」ライフが続くので舐めてかかっていると、突然メガトン級の重さが降りかかってきて、まんまと押しつぶされてしまうのだ。
「君は永遠にそいつらより若い」公式サイト
(9月17日公開)オンライン試写会
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児童福祉士としての就職も決まって、ダラダラとバイトと大学を往復する生活を送っていたホリガイ(佐久間由衣)は、ひょんなことから知り合った3年のイノギ(奈緒)と不思議な関係を築いていく。
自分に自信がないホリガイは将来の仕事に不安を感じていたが、サークルの飲み会で紹介されたホミネが亡くなってから、その気持ちに少しずつ変化が訪れるのだった。
そんなときいつもニット帽を深く被っているイノギの秘密を知って・・・

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若い演者たちは皆自然体でいながら独特の雰囲気を持っていて実に素晴らしい。
サークル仲間からの言葉の暴力もさらりとかわしている様に見えて、実は大きな傷を負っている姿は誰にでも思い当たるシーンだろう。
そんな中出会ったイノギのふわふわとした雰囲気は、それがホリガイでなくても癒されるところ。
しかしイノギが時々垣間見せる陰が、予想通り、いや予想以上の衝撃で主人公ホリガイと我々観客に重くのしかかってきて、胸が押しつぶされそうになる。
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唯一誠実な同級生の吉崎を演じるのは、俳優小日向文世さんの息子さん!
この優しい雰囲気、穏やかさも誠実さもお父様から譲り受けたものなのかも~~

飲み会で紹介した吉崎の親友ホミネが、団地の階下に住むネグレクトされている子供を助けたのに警察に連れていかれた件や、吉崎が彼を救えなかった痛みに耐えかねてホリガイに冷たく当たっていた件が全て、彼女の児童福祉士としての覚悟へとつながっていく。
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チ〇コがデカすぎて女の子と出来ない後輩の悩みも、実は無関係ではない。

どんな小さな事でも、たとえ抱えきれない大きな事でも、赤の他人の痛みに向き合おうとする気持ち。
気付けなかったことで助けられなかったもの、気付こうともしなかったもの。
これは将来に迷い不安を抱く若者特有の悩みだけではない、全ての人に感じて欲しい、気付いてほしい。何ができるのか?何をすればよいのか?その一歩を踏み出す垣根は案外低いのかもしれない・・・

それにしても「君は永遠にそいつらより若い」という言葉で救い出すには、あまりに過酷な人生だ。

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