久しぶりの会場試写会。やっぱり大きなスクリーンで観られるの嬉しいし、何より席が1つ置きなので、座席に傾斜が無い試写会場で前の人の頭で観づらいことが多かった私には本当に有難い。コロナも悪い事ばかりじゃないね・・・♬
「空白」 試写会(9月23日公開)
親から受け継いだスーパーの店長をしているアオヤギ(松坂桃李)は、万引した中学生女子かのんを追いかけていったが、逃げる途中車に轢かれて無残な姿で亡くなるという事故を引き起こす。
漁師で荒い気性の父みつる(古田新太)は、事故の前日娘が何か言いたそうにしているのに聞いてやれなかったことで、学校にいじめがあったのでは?と怒鳴りこんだり、謝罪に訪れたアオヤギに対しても殴り掛かる勢いで謝罪を受け入れようとしなかった。
行き場のない怒りでアオヤギを着け回し、追いつめられる店長。世間は両者に対して誹謗中傷を繰り返し、見かねたスーパー店員の草加部(寺島しのぶ)は彼の味方になろうとビラ配りなどを始めるが・・・
正直キツイ映画。誰にでも起こりうる事象なだけに、他人事ではない怖さがある。
とても万引きなどしそうにもない大人しい娘。すぐ怒鳴り散らすから父には何も言えず、離婚して別の家庭を作っている母に買ってもらった携帯も庭へぶち投げられてしまう。
「一番近くにいるのに、一番分からない」
年頃の子供を持つ家庭は、こんな荒くれの親でなくてもそんな不安を抱えている人も多いはず。一見理解し合えているようで、見えてない部分があるのは誰にでも経験があるのでは?
泣いても土下座しても何をしても許してくれない。
マスコミの悪意ある報道でより追い込まれていく店長を、松坂桃李が実に見事に演じている。「孤狼の血 」とのギャップすごっ!
確かにトラックに巻き込まれ顔も判らない状態の娘を見たら、怒りが込み上げてくるのは仕方ない・・・とは言え、行き過ぎた父親の暴走が、周囲の人間を不幸に突き落としていく。
彼の暴走は結局のところ、娘の事を何も知らない自分に対しての怒りを他者にぶつけているだけなのだけれど、娘を亡くす辛さを想うと一概に悪者として片づけられないのが、この映画の最も辛い部分なのだ。
ボランティア活動に励むスーパー店員の草加部は、ひそかにアオヤギに好意を寄せていた。
親切心と『好意的に思われたい』気持ちで突っ走る草加部さん。ボランティアに熱を入れてるオバサンがこんなにもウザいのだとしたら、気を付けなくちゃとこの映画のもう一つのキツかったポイント。
ボランティアを人に強要するわけでも、褒めてもらいたくてアピールしているわけでもなく、ただ単に活動に興味を持ってくれたらいいな♬という程度なのに、こんな風に偽善者扱いされるのだったら、もうボランティアのボの字も口に出せないな・・・と真剣に思った私。
とはいえ、下心があったうえに空気を読めない草加部はボランティア仲間に対する態度も酷くて残念過ぎる人物像。
飛び出してきた中学生を最初に轢いてしまった女性は、何度も謝りに来るのだが・・・
人格者の母が発した言葉で、それまで荒ぶっていたみつるに心の変化が訪れる。
もう登場人物みんな救いようのない所まで落ちてしまうけど、唯一みのるを見捨てなかった若い漁師(藤原季節)がこの物語をわずかな光のさす方へ導いてくれる。
最後、イルカの雲で涙腺崩壊、会場は怒涛の涙と拍手が沸き起こったのだった。
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この記事へのコメント
ごみつ
この映画、きつそうだな~と思いパスしようかなと思ってた映画です。
実際、こういうのって、「孤狼の血」みたいな作品よりずっときついと思うんですよね。
ヤクザVS警察ものは、一般人にとってファンタジー要素が強いけど、この映画のテーマは等身大で誰にも起こりえる事ですしね。
それにしてもまだ~むさんの感想を聞かせていただくとかなり良さそうですね。時間がとれて、気持ちに元気があったら行ってみようかな。
ノルウェーまだ~む
>
そうなんですよ~
キツめの映画が好きな私でも結構やられました。
やはり誰にでも起こりうる身近なテーマという点と、勧善懲悪的な悪者を悪く描いて胸のすく映画ではないし、誰もがモヤモヤした気持ちをどこにぶつけていいのか迷っているあたりも胸につまされてしまうのです。
色々な意味で、それでも多くの人に観て欲しいと思う映画です。お元気な時に是非!
まっつぁんこ
ノルウェーまだ~む
>
細かい所は省いたのも、逆に良かったかもですね。
あとは言いやすい人に過剰に絡んでいくっていうのもありがちですね。
にゃむばなな
自分の意見を押し通すか、もしくは自分の意見に固執するか、他人の話を聞いているふりをしているか。
意思疎通が出来ていないからこそ生まれる空白。聞く姿勢さえ持っていれば、添田ももっと早くに娘の「イルカの雲」の絵で親子で語り合えただろうに。
ノラネコ
残されたものたちにとって、その空白にどう向き合うかという重い問いかけに頭がグルグル。
とりあえず、父親にってMVPは気づきを与えてくれた片岡礼子でしたね。
自分の娘のことを何も知らなかった、でも同じ空を見ていた、ここでジーンときました。
ノルウェーまだ~む
>
年ごろの子供を持っていると、誰でも意思疎通が難しいですね。添田は結局妻の話も聞かず離婚に至ったのだと思いますが、それでも辛抱強く聞く姿勢を示していくのが親子だし家族ですよね。
自分では理解している・・・と思い込む事で軋轢が生まれる~~明日は我が身と反省することが多い映画でした。
ノルウェーまだ~む
>
そうなんです!同じ方向を見ていた・・・と分かったシーンは涙溢れましたよ。
実際真正面から見合うと反って見え難い事も、相手が何を見てるのか?と考えることで、互いの気持ちに気付くことってあるのかもしれませんね。
私は実は店長が娘を追いかけながら、わずかに微笑んだのを見逃さなかったのですが、だからと言って性癖に問題ある人なのかは示されてないし、単に今度こそ捕まえられるぞ!という微笑みかもしれないし・・・
敢えて空白部分をつまびらかにしないのが、この映画の良さでもありますね。
latifa
>漢字二文字の邦画にハズレなし
確かに!
笑ってしまいました。
そうそう、ボランティアやら親切のおしつけが激しい草加部さんの存在もインパクトありましたね。
これ、演じるの嫌だっただろうなあ・・・。
いいなあー!試写会でこの映画を見られるなんて、とてもラッキーでしたね。
ノルウェーまだ~む
>
こちらにもありがとうございます!
それぞれが自分で良いと思ってやっていることが、他人には押しつけがましかったり、不快に思われたりと、それぞれの正義のベクトルが違うのがとっても興味深かったですよね。
ふじき78
ノルウェーまだ~む
>
やっぱり教官しやすい最も一般的な人物と言ったら松坂桃李くんの店長ですよね。
苦しい想いを胸に秘めて、社員の為にもじっと頑張る姿は何とも忍びなかったです。