「やくざと家族 The Family」☆面々と受け継がれる親子の情

ホラーでもグロい映画でも平気な私は、ヤクザ映画がちょっとだけ苦手。
だって痛そうなんだもの。
アクション映画の格闘シーンもリアルを追求して本格的に殴ったりする映画が増えているけれど、それは殺陣を練習して行われる撮影なわけで。
勿論ヤクザ映画だってそうなんだけど、想像できうる生々しい痛みにはやっぱり耐えられない。

それでも多くの人が昨年のベストに入れている作品だもの。観ない訳にはいかないよね☆
「やくざと家族 The Family」 公式サイト
ヤクザ家族ポスター.jpg
覚せい剤で父を失った賢治(綾野剛)は、馴染みの焼き肉屋に居合わせた柴咲組の組長(舘ひろし)の命を救ったことで親子の契りを交わし、組のサブへとのし上がっていく。
敵対する侠葉会に組長が狙われ、代わりに仲間が殺された報復で柴咲組の若頭の中村は侠葉会の若頭を刺殺。賢治は彼を庇って身代わりとして刑務所で14年の刑に服するが、出所してみるとすっかり組は落ちぶれヤクザには住みにくい社会へと変化していた。
足を洗った仲間からも距離を置かれ、愛する人からも拒絶された賢治は・・・

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ペティナイフのように尖がった10代から、ヤクザで絶頂期の20代、社会から排除され居場所を失って憔悴しきった30代後半までの変貌ぶりを実に見事に演じている。
ヤクザ家族父.jpg
本当の家族からはみ出てどこかに居場所を創ろうとするのは、誰でも経験のあること。
登場する人物は皆家族の愛と温かさを求めていて、互いに親が居ないことで(または実際の親との縁が希薄なことで)共感し合い、疑似家族となろうとする。
それでヤクザになっちゃうかどうかは別の話として、舘ひろしのように優しくされたら、そりゃ包み込まれたくなっちゃうよね~
ヤクザ家族恋人.jpg
暴対法により世間からも居場所がなくなり、愛する人も傷つけてしまう哀しさ。
義理と人情でお馴染みのヤクザがなりを潜め、冷酷無比な半グレ集団が取って代わった世の中は果たして住みやすくなったのだろうか?
一般人には手を出さないヤクザに対し、半グレは一般人がターゲット。オレオレ詐欺や覚せい剤の蔓延を招いたのは、案外、暴対法の副反応なのかも?
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賢治をけん坊と呼んで息子のように可愛がってくれた焼き肉屋の女将(寺島しのぶ)の息子は、ヤクザにさせたくなかった母の気持ちをよそに成長して半グレ集団のボスとなるのは皮肉な話。

赤の他人であっても情で繋がり家族になれる。
この愛情深く育てて貰った恩を次の世代に紡いでいこうとするラストはバットエンドを爽やかに回収してくれて秀逸。磯村勇斗のこの演技で一気に綾野剛に肩を並べたのは見事としか言いようがない。

この記事へのコメント

  • ここなつ

    こんにちは。
    コレ、良かったと思いませんか?
    決してヤクザ稼業を賛美する訳ではありませんが、時代の流れに乗り切れなかった男の哀しみが綴られていて、傑作だったと思いました。
    書かれていらっしゃるように、磯村優斗の演技、秀逸でしたよねぇ。
    2022年01月20日 09:23
  • ノルウェーまだ~む

    >ここなつさん
    >
    ベストにここなつさんが入れていらっしゃいましたね~
    従来のやくざ映画とは一線を画したホント傑作だったと思います。
    キレッキレのチンピラから哀愁漂う男の哀しみを見事に演じた綾野剛も、ラストの磯村勇斗も素晴らしかったです!
    2022年01月20日 22:16
  • ごみつ

    こんばんは!

    「やくざと家族」、タイトルからかなり観客をしょぼってしまいそうなんですが、凄い良い映画ですよね。
    たくさんの人に見てもらいたいです。

    これはヤクザ映画っていうよりも、一人の男の人生のドラマとして見ごたえがあるんですよね。
    また綾野剛がうまいんだよね~。

    そうそう、それと磯村優斗もめっちゃ良かった。心に余韻を残すラストシーンと、最後のセリフでしたよね。
    2022年01月22日 23:15
  • ノルウェーまだ~む

    >ごみつさん
    >
    あ、やっぱりごみつさんもご覧になっていましたよねー?
    いくつかヤクザものの映画見ていらしたと思って一生懸命探したのですけどレビュー見つけられなくて・・・

    そうそう!これは男の人生のドラマですよね。
    たとえばバブルの頃に大企業でぶいぶい言わしていた男が、会社が倒産して町工場で使われる身になった・・・みたいな話にも通じるように思います。切ないラストが余韻を残しました☆
    2022年01月23日 23:26
  • ノラネコ

    ヤクザを「家族」として括るのは、意外と日本映画では見られない視点で、むしろマフィア物などに近いですね。
    半グレの存在なども含めて、邦画離れした時代観を持つ独特の作品でした。
    2022年01月25日 22:32
  • ノルウェーまだ~む

    >ノラネコさん
    >
    確かにそうかもしれませんね。マフィアはファミリーと言いますけど、ヤクザは組ですからちょっと違うのかもしれません。
    とは言っても兄弟の盃とか親子の盃とか交わしますね~
    ただやくざ映画としては新しい視点なのかもしれません☆
    2022年01月25日 23:48
  • ふじき78

    ヤクザで家族物はそう言われてみればあまりないのかもしれない。「仁義なき戦い」以降の実録物で、盃を交わした親を親とも、子を子とも思わないみたいなパターンが多いですからね。最初からして金子信夫のダメ親に苦しめられる菅原文太兄いですからね。
    2022年01月26日 01:03
  • にゃむばなな

    『万引き家族』同様、血の繋がりよりも心の繋がり。それを大事にしてきたヤクザが衰退し、心の繋がりよりも金の繋がりを大事にする無法者が増えてしまったのは、まさに暴対法の副反応かも。
    なんでもかんでも完全悪と考えるのはダメですよね。
    2022年01月26日 11:01
  • ノルウェーまだ~む

    >ふじき78さん
    >
    古いやくざ映画はそれこそあまり見ていないので判りませんが、どうでしょう?
    仁義あるヤクザの栄枯盛衰でしたね。
    2022年01月27日 18:54
  • ノルウェーまだ~む

    >にゃむばななさん
    >
    本当にその通りですね~
    心の通った者同士のつながりを大事にする任侠の世界だからこその掟が消え失せ、自分の利益ばかりの弱い者いじめを平気でする半グレがのさばる世界に変えてしまったのは、何を隠そう暴対法なのでしょう。
    そんな中でも繋がりを予感させるラストシーンは救いでしたね。
    2022年01月27日 22:29

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