シリアルキラーものシリーズ第3弾。
①で紹介したような歴史の影響を強く受けた殺人鬼や②で紹介したような生い立ちに影響を受けた殺人鬼と違って、今回のシリアルキラーは残忍さは全くなく、映画もあくまでも美しく刹那的に描かれ、ほぼ彼の犯行をそのままなぞっているだけなのにまるでアート作品のように仕上がっている。
「永遠にぼくのもの」 公式サイト
70年代アルゼンチン。掃除機のセールスで真面目に働く労働者階級の家で育ったカルリートス(ロレンソ・フェロ)は、子供の頃から盗みを働き少年院から出て来たばかり。転校先で出会ったラモンに惹かれて家に招かれ、犯罪一家の手伝いに加わることになる。
ゲームを楽しむように盗みを繰り返していたが、警備員などを簡単に殺すようになり犯行はエスカレートしていく。
ラモンが俳優の道を進み始めたことで失望したカルリートスは…
シリアルキラーと聞いていたので、さぞ悲しき生い立ちがあって冷徹な殺人鬼に育ってしまったのかと思いきや、当の本人はまだまだ子供で、ただスリルを楽しむために「窃盗」を楽しみ、ラモンの気を引くために過激さに拍車をかけているだけのように見える。
何しろグンゼ的パンツを履き、ぽっちゃり体形のベビーフェイスはともすると13~14歳くらいにも見えてしまうのだ。
殺人に関しても、急に目覚めた警備員に驚いて思わず撃っちゃった・・・といったかんじで、人を撃ったらどうなるか判ってない子供のよう。
「黒い天使」と呼ばれた実際の犯人はこんなかんじ。再現率高い!!
基本的にシリアルキラーものを見るにあたって、いわゆるクライムサスペンスを見る様に犯罪者を応援する気も無いし、美しい犯罪者だからといって肩入れする気も刹那的に生きる彼をカッコ良いと思う訳でも無いのだけれど、この美少年さと子供のような無垢なかんじ、ラモンとの関係があえてすん止めされているところなどを含め、非常に良いバランスを保つことでアート作品へ昇華させることに成功している気がする。
良識のある真面目な家庭に育った彼なのに・・・
反抗期の年齢だったとはいえ、父親が厳し過ぎたわけでもなく、母親が過保護だったわけでもなく、家は貧しかったけどお金に困って盗みをしていた訳でもなく、何も不満が無い彼はどうしてこのようになったかは一切描かれていない。
唯一感情移入出来るとすればカルリートスの母親。愛情たっぷり注いで育てていたのに・・・
現在60歳を過ぎて美しい巻き毛のブロンドもすっかりハゲちゃびんになったカルロス・ロブレド・プッチは今は何を思っているのだろう?
永遠に僕のもの(字幕版) - ロレンソ・フェロ, チノ・ダリン, ダニエル・ファネゴ, メルセデス・モラーン, ルイス・ニェッコ, ピーター・ランサーニ, セシリア・ロス, ルイス・オルテガ, ルイス・オルテガ, ロドルフォ・パラシオス, セルヒオ・オルギン
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この記事へのコメント
瞳
あっ!これ気になっていたのに、見逃してました。
生い立ちに何か不幸があったとか、育った環境とか、そういうわけでもなかったんですね。
気を引くための殺人・・・何もわかっていない、無邪気すぎる怖さ・・(>_<)
レンタルか配信で探して観ますね。
ノルウェーまだ~む
>
是非ぜひ、ご覧になってみてください~☆
どこか浮世離れした主人公に戸惑いが隠せませんが、ことさら感情移入もなく、かといって不快感もないほどにサラリと犯行を行う彼の、最後の涙がポイントです。
映画サイトの点数ほどには悪くなかったと思いますょ☆
セレンディピティ
美しいスチールを見て、私も気になっていた作品です。
シリアルキラーの実話に基づく映画だったのですね。
タイトルから察するに、親友の心をつなぎとめるための殺人だったのかな??
どことなくグザヴィエ・ドラン映画の雰囲気も感じるし
南米の映画ということも惹かれます。
探せたら私も見たいです。
実際の写真と... ほんとうに再現率高いですね!
ノルウェーまだ~む
>
シリアルキラーと呼ぶにはあまりに幼すぎて、また目的が殺しなのではなく、「盗みに入るスリル」というところに、今までの殺人鬼とは違ったものを感じました。
なのでグロいシーンは一切ないし、セレンさんにも抵抗感ないと思います☆
ただ愛する息子が何故犯罪に手を染めるのか?母の気持ちに寄り添う程複雑な気分になります。