久しぶりに1つ開けの座席ではない試写会に参加した。
今回は第72回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門でスペシャルメンションを贈られた作品。
監督と主演の嵐莉菜ちゃん(ViViモデル)と映画「マザー」から2度目の映画出演の奥平大兼くん、そして自身もハーフの川和田恵真監督が登壇し、みっちりと30分のトークショーが開かれた。
写真はスポーツ報知より拝借
トークショーではお人形さんみたいに可愛くてニコニコの莉菜ちゃんが、髪を真っ黒に染めて憂いを帯びた悩める高校生を好演している。
「マイスモールランド」 公式サイト
小さい頃から日本で育ち普通の高校生活を楽しんでいるサーリャ(嵐莉菜)は、亡くなった母の代わりに幼い弟の面倒をみながら、厳しい父の元クルドの文化を大切にしつつ近隣に住むクルド人のために翻訳もしていた。
難民申請が認められなかった事からある日突然父親が不法就労で入管に収監されてしまう。唯一の心の支えはバイト仲間の聡太(奥平大兼)だけ。
家賃を払えなくなった上に真相を知ったバイト先もクビになり、パパ活でお金を工面しようとするが…
埼玉の蕨市に「ワラビスタン」という地域がある事は前から知っていたけれど、それがクルド人の難民の人たちだということを今更ながら知った私。
現在2000人ほどのクルド人が住んでいるのだそうな。
そして驚いたことに難民認定された例はほぼ無いのだとか。
父と姉サーリャはクルド語で会話もするが、中学生の妹と小学生の弟は既に日本語しか話せない。
厳格な父はラーメンを音を立ててすする事を禁じるが、妹は豪快にすすって食べ素知らぬ顔。長女のサーリャだけがクルドの文化と自分の中の日本人としてのアイデンティティーとの間で一人苦しむのだ。
亡くなった母をクルドのオリーブの木の下に埋めたと話していることから、下の弟が生まれてすぐ?くらいに亡くなって、割とすぐに日本に来たという事なのかな?それにしても家庭内ではクルド語を使っているわけだから、何年外国に暮らしてもちっとも喋れるようにならなかった私にとっては、日本語しか話せないようになっちゃうものかな?とちょっとそこは不思議。
友達にも打ち明けられなかったことを、聡太には話せる。
この微妙な心理をトークショーで主演の莉菜ちゃんが語ってくれて、ストンと納得できた。
彼女はワールドカップで「どこの国を応援するの?」と友達に聞かれ、『自分は日本を応援したらいけないのかな?』と思った経験がこの映画のシーンでも使われて良かったと話していた。この何気ない言葉が、実は彼女自身を追い詰めていることに我々は全く気が付いていない。
彼女は既に日本人である自分を持っていて、当たり前に過ごしているのに、ハーフであるとか外国から来て日本に住んでいるだけで、『他所の国の人』扱いをされてしまう。勿論、私たちに全く悪意もないし他意すらもないのだけれど。
再び難民申請が通らず困惑する家族。
現在、ウクライナから避難してくる人には1人あたり幾らかの生活補助が出されると新聞に載っていたけれど、何故ウクライナ市民は保護され、クルド人は難民申請が通らないのか?
帰る国などなく二度と会えなくなるのに、自分の命と引き換えに強制送還に同意した父の本当の想いを知って溢れる涙が止まらなくなかった・・・(号泣)
いじめに遭っているわけではないのに、自分を「宇宙人」といって友達から距離を置く下の弟が涙を誘う。
彼の何気ない一言がこの深刻なテーマの映画をほっこりとさせてくれ、この姉妹たちの生きる原動力となっていくのも素晴らしい。
監督はこれが初めての長編映画ということで、少々テンポがゆるっとしているのが難だけれど、役者たちも含めこのたどたどしさがよりドキュメンタリー感を生み出していて逆に秀逸。
映像の美しさに加え、ラストのサーリャの力強い眼差しもピュアだからこそ、誰も何も手を差し伸べられない現実をまずは知る事が大切なのだと思った。
この記事へのコメント
ノラネコ
嵐莉菜も素晴らしい。
あのW杯の話は彼女の実話だったんですね。
日本の去年の難民認定数は70人ちょっとで、それでも史上最多なんだとか。
ももう少し何とかならないかと思います。
ノルウェーまだ~む
>
ある意味タイムリーな映画だったんじゃないかと思います。
今まで人知れず辛酸を舐めて来た難民の方たちに少しでも光が当たると良いなと思いました。
私は今年、非課税所得者への給付金に関する仕事をしていましたが、多くの「就労不可」の外国人の方たちを見かけて、学生?それとも?と謎だったのですが、こういうことか!?と納得しましたyo