オンライン試写「あなたの顔の前に」☆今の幸せに気付くこと

寝ている妹の手を起こさないようにそっと撫でる姉。この冒頭とラストのシーンで全てが語られる。なんとも美しく清らかな一瞬。@cinema_cafe

じゃあその後の全く別の人が撮ったかのような、ほぼ定点カメラなドキュメンタリー的な映像は何だったのか?
登場する人たちとまあまあ同年代の私。全て役者のアドリブだったのか?と思うようなドキュメンタリー感は、まさに主人公は観る人そのものだと言いたかったのかも。だからタイトルが「『あなたの』顔の前に」だったのね。

「あなたの顔の前に」 (6月24日公開)公式サイト 
顔の前ポスター.jpg

アメリカで長年暮らす元女優のサンオクは、突然帰国し妹のところで寝泊まりしていた。
妹と散歩をしカフェで他愛のない話をしたあと、一人で想い出の地を巡り、出演オファーをしてきた監督と打ち合わせと称して居酒屋で飲んだが、酔った勢いで彼女は・・・

サンオクの詳細は全く語られず、ただ会話の端々から『若い頃女優をやって人気もあり、今も美しく良い生活もしているが、家族にはそれがきっかけで距離を置かれアメリカで独り寂しく暮らしている』のがかろうじて判ってくる。
顔の前ベッド.jpg
この冒頭のシーンで彼女の余命が短く、昔の想い出を辿りに帰国してきたことはおおよそ理解出来る。
彼女が語りで「過去も見ない、未来も見ない、今顔の前にあるものが天国なのだ」と語るそれが全てこのシーンに凝縮されているといっても過言ではない。
顔の前姉妹.jpg
一転、ただただお茶を飲んで、途中喧嘩になりかかりながらも、良くある姉妹の会話が続く。
なんだかスマホで撮ったのかな?と思うような何の変化のない画角とテレビドラマのようなクリアで平面な映像。
今までホン・サンス監督作品を見たことが無かったから、彼の作品の傾向を知らないので何とも言えないけれど、ベルリンやカンヌ映画祭の常連と思うと、引きも寄りもなくあえてドラマチックに仕立てなかったのに訳が無いはずがない・・・と逆に目が離せない。
顔の前居酒屋.jpg
映画と言うものは意図があって台詞を決め、意図を持ってそのシーンを撮影していると思うので、この監督はあえて定点カメラで長回しをして、役者に『何もかも』委ねて撮影しているのではないか?という気がしてくる。
劇中の監督が予定を変更してまで居酒屋を貸し切ったことが、酒の勢いとはいえ『私はまだまだいける♬』というちょっぴり嬉しい目の前の出来事に繋がっていく(?) 

過去にあまり思い出したく無い事もあったし未来は余命も短いけど、『今日ちょっぴりいい事があったらそれが天国』
今目の前にある幸せを見つけていくことの大切さを教わった気がした。

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