ああ、いい涙を流させてもらった☆たとえラストが是枝エンディングでも。
(最後にラストに触れています)
是枝監督を父に韓国映画を母に、胸キュンでもコメディでもなければ誰も死なずグロくもないという、韓国映画にとってもまさに新しいジャンルが生み出された瞬間。
「生まれてきてくれてありがとう」
「ベイビー・ブローカー」 公式HP
借金を抱えながら小さなクリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)は、ドンス(カン・ドンウォン)が働く施設の当直の時に赤ちゃんポストへ預けられた赤ちゃんをこっそり連れ帰り、子供を欲しがる夫婦に高く売りつけようと画策していた。
翌日思い直して赤ちゃんを引き取りに来た母親(イ・ジウン)。警察に届けられる前にと正直に全てを打ち明けると、彼女も養父母探しに付いてくることになる。ベイビーブローカーのサンヒョンとドンス、若き母親に加え施設の子供までついてきて珍道中が始まった。
一方彼らを現行犯逮捕しようと女性刑事たち(ペ・ドゥナ)は張り込みをしていたが・・・
この映画で韓国人俳優初のカンヌの主演男優賞を取ったソン・ガンホ。韓国のトムハンクス(私が勝手に命名)とも言うべき、彼の出演している映画にハズレなしな俳優さん。
ちょっとだらしないけど根は良い人をやらせたら右に出る者が居ない絶妙なキャスティングが今回も光っている。
「万引き家族」のように、バラバラだった人たちが疑似家族のようになっていくのに対し、自分の本当の家族からは縁を切られるという、真逆の状況を対として描いてみせるところもさすが是枝ワールド。
ブローカーを現行犯逮捕しようと、何日も張り込みを続け家族(夫)にも会えない日々が続く女刑事に名作「空気人形」のペ・ドゥナ。あのお人形さんが!!?
「早く子供を売ってくれなきゃ逮捕出来ない。」と、まるで犯罪を望んでいるかのような刑事たち。やる気満々の刑事たちは張り込み中、常に何かくちゃくちゃと音を立てて食べていて『生きる』に貪欲だ。
後輩刑事が「売らない様にするべきでは?」と言うと、「未然に防ぐのは福祉の仕事、捕まえるのが刑事の仕事」と言ってのける。しかし、そんな女刑事も詳しくは語られないけれど、子供を持てない何か葛藤を抱えているようで、これがラストへ繋がっていく。
相対して、次第に「売らずに5人で家族としてやっていきたい・・・」と思うようになっていくドンスたち。
サンヒョンたちは同じ様に旅をしているのに食べている様子はほとんど映らない。それはまさに親に捨てられた彼らが、『生に対して無気力』つまり『生まれてきて良かったのかを常に迷っている』ことを表している。こうした些細な演出が仕事に貪欲な刑事たちと対になっているという出色の出来に感服するほかない。
さっさと売り逃げてしまえばいいのに、最高の養父母を探して東奔西走するうちに・・・
ここで大事なのは、ブローカーの彼等は赤ちゃんを売ってしまえばそれまでなのに、最初からベビーチェアも用意しているし、常に抱っこ紐で抱っこしている。最近の『自分の子供なのに置き去りにしてUSJなど行って我が子を餓死させる』ような親に比べて余程親らしいのだ。
それは表立っては「善意でやっている」と言いながら実はお金儲けという裏に、孤児院で育った自分たちのようになってほしくない=親に捨てられた自分の過去を救いたい…という本音が根底にあるからに違いない。
ラストは是枝エンディングで、是枝監督作品が苦手な人にはちょっと・・・かな?
全てを明らかにしていないところは観終わった人があれこれ話すのにいいかも。
私としてはヒッチハイクしていた孤児院の少年ヘジンを拾ったのはドンス(ヘジンが誰に乗せてもらったか黙ってるはずがないから)で派手な黄色いバンだったことから何か仕事はしていて、サンヒョンは別の車で?そっと見守っていたってことなんじゃないかな☆
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
セレンディピティ
赤ちゃんポストとか、人身売買?とか
テーマとしては重いのに、どこかハートウォーミングな雰囲気も
感じられる作品のようですね。
悪人になりきれない主人公に好感が持てます。
是枝監督らしいラストというと、結末がはっきり描かれず
見る者に委ねる、というスタイルでしょうか。
私、そういう作品好きです。そして語り合うのが好きです。uu*
ノルウェーまだ~む
>
是非是非、ご覧になられたら語り合いましょう!!
まさにあれはこういう意味だったのかな?とか、彼はきっとこうしたかったんだよみたいに盛り上がるはずです!
ソン・ガンホの情けないおっちゃん感が、ブローカーと言う一見悪そうな人たちから人間味のある人物像への移行を容易くしてくれています。
本当におすすめです!!
にゃむばなな
男性が母親役を担うなら『東京ゴッドファーザーズ』という名作があるだけに、ちょっと物足りなかったですね。
ノルウェーまだ~む
>
あの作品も名作でしたね。
私としては男性が母親役でも、仮に預かっている女刑事や、子供なのに関わろうとする孤児院のお兄ちゃんが世話役でも、その子供を愛おしく想う人が居る「幸せ」に変わらないのだなと思ってぐっときました☆
ここなつ
是枝監督っぽい作品でした。
設定も役者さんも韓国なのに、是枝ワールドが不動というのがすごい。
食事の設定…確かにおっしゃる通りですね。
食に貪欲ということは、生にも貪欲ということですものね。
ノルウェーまだ~む
>
国や役者までも違うのにしっかり是枝監督でしたよね。しかも韓国らしさも出ていて脱帽しました。
フランスで撮影した「真実」は未見なのですがそちらはどうだったでしょうね?
こうなったら様々な国でその国の是枝ワールドを展開していってほしいです。
latifa
韓国のトム・ハンクスって、言えてますねー。
ソン・ガンホさんが出てると、そうそう外さない気がします。
ラストはハッキリさせてはいませんでしたが、かなりハッピーエンド感ありましたよね。
私もノルウェーまだ~むさんと同じ推理です♪
ノルウェーまだ~む
>
記事を探して下さってありがとうございます❗
どちらかというとトム・ハンクスは、ほぼ善い人しかやらない…と言うか彼がやるとみんな善い人になっちゃうところ、逆にソン・ガンホはいい加減だったりちょっいワルだったり、お人好しだったりと役の幅が広い気もしますね☆