廃墟を行く☆大三島「阿奈波(あなば)神社」の磐長姫(イワナガヒメ)の哀しき運命(追記)

大三島の中央部にある「大山祗(オオヤマヅミ)神社」は、日本中の総氏神として栄えていた歴史がある。神社から宮浦港までは石燈籠の参道が続き、かつては宮浦港から船でやってくる参拝客で賑わっていた・・・と想像することが出来る。
何しろ船が唯一の交通手段だった遥か昔は、この神社にお参りし安全を祈願し(通行料を払って)なければ、村上水軍の餌食になってしまったわけで・・・

さて大山祗神社に祭られている大山積大神の二人の娘のうち、姉の磐長姫(イワナガヒメ)をお祭りする神社が宮浦港にあるらしいと知ってやって来た。
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神社からの参道の終点(本当は玄関口)には立派な鳥居。既に陽が傾いていて静かな港はひたすらに寂しく数人の釣り人が釣り糸を垂れているだけ。
案内板もないけど、紅い柱に緑の屋根が竜宮城のような船着き場の、向こうに神社?らしき屋根が見え、石燈籠がそちらの方向へも続いていた。寂れた飲食店?とおぼしき建物が数軒。
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小さな港沿いに歩くと、スウェーデンにあるアンデルセンの人魚姫の像のようなかんじにポツンと建っているのは鶴姫の像のうちの1つ。
16歳という若さで水軍を率いて周防国(山口県)の大内氏と何度も戦い、瀬戸内海に浮かぶ故郷・大三島を守り抜いたと伝わる鶴姫が先ほどの鳥居の方向を見ている。「わが恋は 三島の浦の うつせ貝 むなしくなりて 名をぞわづらふ」と詠んで18歳の若さで海に身を投じた鶴姫の運命は哀しすぎるけれど、この神社の主とは何も関係ない。
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『古事記』では石長比売、『日本書紀』で磐長姫は、桜が彼女の美しさにあやかったとまで言われるほど美しい木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)のお姉さん。天照大神の孫にあたる瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が木花開耶姫に一目ぼれしたことで、アマテラスの兄神である大山積大神が姉の磐長姫と一緒に嫁がせた。(なんで?)
しかしニニギは醜い姉の磐長姫だけを送り返してきた。(ニニギひどい~)岩の様に永遠の命を授ける磐長姫を送り返したことで人間は寿命が短くなり、木の花が咲くように繁栄することだけが約束されたのだそう。

さてもう一つの竜宮城のような赤い柱に緑の屋根を目指すと、そこには驚きの光景が!!!
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赤い柱は海に張り出すテラスになっていて、世が世なら天女が舞を踊りそうなのに、何故か朽ちたソファセットが置いてある。新しく整備されたと思われる石燈籠と参道はどういう訳か草ぼうぼうだし、何かがオカシイ?

草むらをよいしょとまたぐと見るも無残な「阿奈波神社」の姿がそこにあった。
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廃墟巡りが好きとはいえ、想定外だったので本当にビックリ!
後で調べると2016年の土砂崩れで倒壊してしまったのだそう。お供え物があるところをみると参拝客も少なからずいる様子。
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実は『たんぽぽろぐ』さんのサイトを拝見すると、被災前の整然とした神社の写真を見ることがきる。
石の鳥居もポッキリ。どうやら倒壊した部分の片付けの速度より草木が生い茂る速度の方が早いと見え、森に侵食されつつある。
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子宝に恵まれない人や花柳病にも霊験あらたかなことから、かつては女性の下着や男根を奉納する習わしもあったそうな。こちらのお堂は無事。
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かつては海からお参りに来るか、山の上の方から降りてくるしかなかったらしい。せっかく参道を整備しても、自然災害とコロナで荒れるばかりとは・・・(滝泣
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ニニギに送り返され失意の磐長姫は身を引き宮の外に産殿を建てて(ん!?ニニギすることはしてんじゃん!!)移り住んだとされているのが、この「阿奈波神社」
昭和51年にも大きな自然災害で倒壊しており、美人じゃなかったばっかりにここまで酷い目に逢うイワナガヒメの度重なる哀しき運命に思いを馳せてしまうのだった・・・

(追記)
実は瀬戸内の小さな島「興居島」には磐長姫を祭った神社があるそうな(パパン報告)
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周囲34mもある花崗岩の巨石がご神体で、この神社の木を切るとたたりがあると伝えられている。きちんとお祀りしてあって、狭い島に70種類もある樹木はこうして代々守られているということだった。

この記事へのコメント

  • ごみつ

    こんばんは。

    磐長姫を祀った阿奈波神社、土砂崩れでこんな姿になってしまったのですね。
    もとに戻す予算がないのかな。神社をこんな状態にしておくのは凄く良くない気が・・。
    だから時々、近所の方がお参りしているのかもですね。

    彼女のエピソードと重ねると、確かに悲しいですね。
    2022年12月28日 22:34
  • ノルウェーまだ~む

    >ごみつさん
    >
    ね~哀しすぎますよね!?
    しかもコノハナサクヤヒメを祭る神社は、富士山にある浅間神社他たくさんあるのに、イワナガヒメを祭る神社はちょっとしかないんですよ!
    実際土砂崩れの前は美しい船着き場に石燈籠が夜になると灯る整備された参道があって、神社もきちんと手入れされていたようだけど、コロナだったり観光客がしまなみ海道を通り抜けちゃうだけで大三島に寄ってくれなかったりして、度重なる修復の財源が確保できないのかもしれないですね。
    彼女の悲痛な叫びが聞こえるようで、涙が出そうでしたよ・・・
    誰かイワナガヒメ物語を作って盛り上げて欲しい!!(女優さんがブサイク役が嫌かも?)
    2022年12月28日 23:55
  • 神社と森とか、自然のあり方の不思議というか、建物は、土砂崩れですか、、で崩壊していても、活動の少ない廃墟と言う事では無くて、島全体がちょっとした清らかな引力の場のような感じがしませんかね。

    土建のおじさんが作った道路とか、箱物は崩壊によってただのガラクタになる事があっても、神社とかお寺とか、文化財もそうでしょうけど、遺跡になってこそ、今の観光客を惹き付けるものがある、そんな気がします。

    鶴姫の悲劇が印象に残りますね。一応、地元の為に戦ったという事で、祀られては居るのでしょうかね。ぶしつけながら、鶴姫の像が、ちょうど浅瀬で小魚釣りには良い場所だなと思いました😅
    2022年12月30日 08:44
  • ノルウェーまだ~む

    >隆さん
    >
    鶴姫伝説は実は歴史的文献が遺されているわけではなく、唯一の女性の鎧が宝物殿にあり、戦国時代に伊予にいたとされる伝承上の女性を、昭和41年に三島安精が小説『海と女と鎧 瀬戸内のジャンヌ・ダルク』に書いたことで有名になった人物だそうで(wikiより)、愛媛県が観光資源として活用しているといった印象でした。
    鶴姫像を3体も造るなら、もう少し阿奈波神社の修復にお金をかけて欲しいです。
    とはいえ、仰るように整然とした神社より、より一層心を惹きつけるものがあったのは確かです。
    2022年12月30日 09:16
  • セレンディピティ

    まだ~むさん、こんにちは。
    廃墟マニア?のまだ~むさんも、今回の廃墟発見は想定外だったのですね。
    ひょっとしたら廃墟の方が、まだ~むさんを呼び寄せているのかもしれません。
    磐長姫の哀しき生涯と、その後の阿奈波神社の惨状には心が痛むばかりですが
    興居島のかわいらしい神社を拝見して、ようやくほっとしました。
    (パパさん、グッジョブ!)
    2022年12月30日 10:53
  • ノルウェーまだ~む

    >セレンディピティさん
    >
    廃墟呼び寄せちゃいましたかね~?(笑
    全くこの現状を知らずに行ったので、本当に驚きました。
    ただ、コロナの影響なのか?大三島にはチラホラと目立つ場所に廃墟を見つけましたょ。ちょっと立ち寄る時間が無かったのが悔やまれますが・・・
    同じ様に風水害があったはずなのに、興居島の神社は巨石がしっかりとしていて凄いですよね♬
    まさにご神体と崇めてしかるべきと感じました☆
    2022年12月30日 23:46

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