アダム・ドライバーがぽっちゃりお腹さすりながら人生に右往左往していく物語。
何も知らずに見たので、初めのディザスターパニックムービーからの自身の死に直面する恐怖、妻の謎めいた秘密のクスリ事件など、一見「マルホランド・ドライブ」的で、皆訳の分からないことを喋って理解が追い付かない感じはまさに「愉快でおそろしい、叙情的で不条理、平凡で終末的」
既に半分近くの劇場公開が終わってしまったけど、Netflix配信で見られるのが有難い♬
「ホワイト・ノイズ」
大学でヒトラー研究を講義して有名な教授(アダム・ドライバー)は互いに4度目の結婚となる妻(グレタ・ガーウィック)と、それぞれの連れ子たちと楽しく暮らしていた。深く愛し合う妻の口癖は「あなたが私より先に死んでしまうのが怖い」
ある日有毒物質を積んだタンカーが事故を起こし、黒い雲に覆われた街は避難警報が出て騒然となる。避難の途中に雨に当たった教授は、少ない情報のなかで死の恐怖にさらされる。避難が解除され自宅に戻るが、妻が隠れて怪しい薬を飲んでいると娘から聞き・・・
アダム・ドライバーは残念なほどお腹ぽっこりの冴えない見た目になっているので、彼のファンだから見るという方は要注意。見た目は冴えないけど、大学ではカリスマ教授という立ち位置なのも、その意図に悩むところ。
ヒトラーを取り巻く群集心理を説いているけど、ド派手な爆発シーンを多用するハリウッド映画を引用して暴力と破壊を講義するエルヴィス研究家の同僚と共に、実は暴力を称賛しているのでは?と思えて、そこがアメリカの現状を示唆しているようにも感じられる。
大学ではハムレットの舞台でも演じているかのような、叙情的な台詞で講義が必要以上に演出される。今の若い人はこんな小難しいことが理解出来るのね?と感心していたけど、多分これは『良く判らない事を堂々と熱く語る人を称賛しがち』ということなのかも。
このあと大学の教授たちはランチルームで下世話な話ばかりをしているし、みな勝手な話をしていてまるで理解不能なのだから。
途中から急にパニック映画のようになり、有毒物質が流出した影響が全く正しく報道されず不安ばかりかきたてられる状況や、教授の息子のほうが落ち着いていて理路整然と群衆に説明をして、避難所で皆を落ち着かせている様子など、様々に皮肉たっぷりな内容は「トント・ルック・アップ」を想起させる。
意図的に度々挿入されるスーパーマーケット。
毒々しい色合いのスーパーで、禁煙のために食べるガムの合成甘味料・着色料の体に与える影響と煙草を吸うのとどちらが健康的かという娘の問いかけは、この映画の核となる部分を言い得ている様な気がする。
死を恐れるあまり怪しい治験に参加し効果のない薬に依存する妻と、自身も死の恐怖から薬に溺れ嫉妬から暴走しはじめる教授、修道院のシスターがキレ気味に神や天使の存在を否定するなど、人が不安を抱える時に頼るべきプラセボは何であるべきか?を問いかける。
一見散漫に見える映画は実はとても深いのだ。
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この記事へのコメント
隆
『マルホランド・ドライブ』のように狂気が混じると、普通の感覚とは違う世界に行ってしまうと思うので、プラセボになるのは、心の問題としては常識的だとか、普通の会話が出来る人間への救済では無いかなと思いました。
瞳
これ、マイリストに入れてあります!(^^)!
ちらっと見たら、アダムのお腹がスゴイことになっててビックリ(笑)
「ハウスオブグッチ」のあのスレンダーさはどこに!?
不条理、でも難しくはないんですね~、良かった。
リストに入れすぎて消化中ですが(笑)見たらまたお話にきますね。
ノルウェーまだ~む
>
宗教に依存する、クスリに依存する、人に依存する・・・色々な形で人間は自らの正気を保とうとしますね。
推しにハマる、スポーツにハマる、ゲームにハマる・・・はその前段階と言えなくもないですが、それは実のところ全てプラセボなんですね。
最終的にこの映画では、スーパーマーケットが人々の癒しになっているwwという結論なのですが、当たらずとも遠からずと思いました。
ノルウェーまだ~む
>
これね、最初の印象は「訳わかんない!」ってなるんですけど、その判らなさがポイントだと思い直すと、とっても面白いんです。
是非、見たらまたお越しいただけると嬉しいです。
いよいよ「ハウスオブグッチ」を見て、アダム祭りをしようと思ったら、アマプラで物凄く高くなってしまって、またしばらくお預けです(涙
Nakaji
なおさら気になりました!!!!見てみよう!!!
アダム・ドライバーは残念なほどお腹ぽっこりの冴えない見た目にも気になります(笑)
ノルウェーまだ~む
>
はい、残念すぎるほどぽっこりさんです。洋服の下に肉襦袢を隠しているのかと思ったら、裸になるシーンもあり更にビックリです。
今はそれもフェイクな場合もあるけど・・・どうかな?
セレンディピティ
この作品、まったく気がつかずにいましたが
アダム・ドライバー&グレタ・ガーウィグ主演なのですね。
どちらも好きな俳優さんです。
ひょっとして...と思ったら、この作品やはりフランシス・ハの
ノア・バームバック監督作品なのですね。
2人ともバームバック監督の常連さんです。
なんとなく作風が想像できますし、たぶん好きな作品だと思います。
近いうちに見てみますね。(^_-)-☆
あー、でもアダムのぽっこりおなかはファンとしては複雑な心境です。
ノルウェーまだ~む
>
ですよね~?アダム・ドライバーファンのセレンさんにお勧めするには、ちょっと・・・と躊躇するところですけど、まあまあぽっこりくらいなので安心してください(笑)
フランシス・ハとはかな~りイメージ違うので、どうかなぁ?
グレタ・ガーウィックのことは観たことあるな~という程度だったのですけど、彼女はノア監督の常連さんなのですね・・・知りませんでした。