子供の時にテレビで確かに見た、あの伝説のロックンローラーエルヴィス・プレスリー。世界同時放送のコンサートだったのか、亡くなった時の報道で見たのか?その時は既に結構なおじさんの体形で、襟の高いあの白い派手な衣装が子供心に奇異な印象だった記憶しかない。
当時、世界でたった一人のスーパースターの生涯を描いて、まるでエルヴィスが蘇ったかのように感じられる今作。いつもいい人なトム・ハンクスが見事な悪役で怪演している。
「エルヴィス」 Netflix配信
父親が刑務所に入ったことで黒人の住むエリアで生活することになったエルヴィス少年は、日々ブラックミュージックを聞いて育ちその感性が磨かれて行った。ライブハウスで歌を歌うようになったエルヴィス(オースティン・バトラー)は、独特のダンスで若い女性たちを魅了し爆発的に人気者になっていく。
そんな彼の専属のマネージャーを申し出たトム・パーカー(トム・ハンクス)の手腕で、瞬く間に世界を魅了するロックンローラーとなったエルヴィスだったが・・・
決してそっくりさんじゃないのに、歌い出したらもうそっくり!!
あの独特な歌い方を完コピしているっていうだけでも凄いのに、当時の映像を時々挟んできても全く違和感がないのも驚き。
前半はオースティンの声のままで、後半はエルヴィス本人の声を混ぜているというけど、その違いは全く判らないくらい!
でっぷりとした特殊メイクで、エルヴィスから金と命をむしり取ったマネージャーのトム・パーカーを憎々しげに演じているトム・ハンクス。
スウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」のリメイク「オットーという男」まで、いい人しか演じてなかったと思ったら、これが悪役だったww
ただし決定的に悪いようには描かれてないので、何となくムズムズする。何しろ途中からこのトム・パーカーの語りで話が進んでいく・・・つまり主人公というべき人物なのだから。
指示に従わず独自の道を歩もうとする姿は、父親と反抗期の息子のよう。
自分から離れて行こうとするエルヴィスを見て涙ぐみ、離れようとしながらも寂しそうなマネージャーを見てエルヴィスもまた涙ぐむ。
若くてひよひよしている時はともかく、だんだんと貫録を付け(何故か色黒になって)ワイルドさを増し、馴染みのある皮のジャンプスーツ姿になると、もう彼そのもの。
激しいダンスで歌い踊る汗まみれのステージは、そりゃ消耗するよね?と言う感じ。70~80年代あるあるのクスリ漬け生活も致し方ないと思っちゃう。とはいえ、そうやって身体は蝕まれていったわけで。
妻と子よりステージでの陶酔を選び、互いに共依存していく姿は、ミュージシャンを描いた映画で一方的にマネージャーを悪として描き切っている「ロケットマン」や「ボヘミアンラプソディー」と比べて、勧善懲悪になっていないのもスッキリしない原因かな。
私としてはアカデミー賞ノミネート作品?という印象なのだった。
この記事へのコメント
latifa
そうそう、あちこち同じ!でした。
私もプレスリーって子供の頃のイメージで、もう中年になったおじさまの印象が強くてね。
でもこの映画とか等で、若い頃は痩せていたし、カッコ良かったんだなーって後から知ったわ。
そうそう、スッキリしないですよねー。トムハンクスがマネージャー役をやってるわけなんだけど・・・
これがアカデミー賞?っていうのも同じです。
決して悪い映画ではないし、主演の男優さんのなりきりも凄かったんだけど。
ノルウェーまだ~む
>
よくある伝説のミュージシャンの成功物語の域は出てなかったですよね~確かに決して悪い映画ではないんだけど・・・
でも話には聞く「あの」伝説のエルヴィスの生涯と言う点では、知らない事が多くて色々ビックリでした☆
顔は良く見るとさほど似てないのに、そのなりきりでもうそっくりなんだから、主演のオースティンがどれだけ凄いかって思いました!
きさ
最初にエルヴィスが登場するシーンが素晴らしい。
エルビスの音楽のルーツがブルースとゴスペルとカントリーである事を描きつつ衝撃的なデビューを見事な演出と音楽で見せます。
ですが、晩年はパーカー大佐の支配に苦しむ描写がちょっとツライですね。
トム・ハンクスが演じているのでいい人オーラが漂っていますが、悪徳マネージャーと言っていいでしょうね。
もっと悪役として描く演出もあったかも。
そのあたりがちょっとモヤモヤします。
ノラネコ
エルヴィスじゃなくて大佐の方。
古き良きアメリカの裏側で蠢いていた、得体の知れない人たちの寓話。
経歴が全てフェイクなところもそっくり。
ラーマンの好きなモチーフなんでしょう。
まああの映画と違って切ないのは本人じゃなくて、食い物にされたエルヴィスですけど。
ごみつ
「エルヴィス」ご覧になったんですね。
確かにアカデミー賞の主要部門にノミネートされるほどの映画ではないけれど、エルヴィスの知らなかった面が沢山見れて私は大満足の1本でした。
オースティン・バトラーは凄いよね。
なんと言っても私が最も感動したのは、彼が黒人と白人の音楽を融合させるまでの過程です。
このあと、大衆音楽の流れが決定的に変わったんですよね。
これだけで感涙なのです。(´;ω;`)
ノルウェーまだ~む
>
やっぱりそうですよね?
このモヤモヤはトム・ハンクスだから実はいい人なのでは?と言うイメージから来ているのかもしれないし、それを案外狙ったのかもしれませんね。
離れようとしても、どこか互いに依存し合っていた感じも受けました。
ノルウェーまだ~む
>
そうなんですよ~切ないのはエルヴィスなのに、語り部がトム・パ^カーなので、あたかも自分が切ないかんじに描かれていて、むむ?と思ってしまいました。
本当は罪悪感にさいなまされていたと言いたかったのでしょうか?
エルヴィスから金も命も奪い取っておきながら、自分は晩年もギャンブルにハマってるのに今わの際に罪悪感?という気もして、ちょっとモヤっとしてしまいました。
ノルウェーまだ~む
>
そうなんです!!私もあまり知らなかったエルヴィスの生い立ちを知ることが出来たし、何しろオースティンが素晴らしかったので大満足でしたよ♪
黒人エリアに住んでいただけで、誰でも才能を発揮出来る訳ではないでしょうから、エルヴィスがどれだけ音楽の才能に溢れていたか!?と言う事なのでしょうね☆
何しろロックンロール生みの親ですものね~♬
セレンディピティ
私もNetflixにあるのを見つけて、見なくちゃ!と思っていました。
音楽映画が好きですが、エルヴィスはちょっと上の世代ということもあって、あまりなじみがないので躊躇していました。
エルヴィスの歌、そんなにたくさん知っているわけではないのですが、黒人音楽の影響を受けているというのは意外だったので、そのあたりの経緯を是非見てみたいです。
オースティン・バトラーもこれまで見たことのない俳優さんなので楽しみ!
ノルウェーまだ~む
>
私も『過去のロックンローラー』とか、ちょっとイロモノなイメージしかなかったので公開当時はスルーしてしまったけど、黒人音楽がロックの源になっているのだと知って、いたく感動しましたyo
彼は物凄く才能あふれる人物だったんですね~
ネトフリにあるからお家で見られるし是非!
また感想楽しみにしています~
margot2005
オースティンはエルヴィスのパフォーマンスをかなり研究したそうで
You Tubeで見たエルヴィス本人とオースティンのパフォーマンスが
そっくりで驚愕!でした。
大熱演のオースティン・バトラーにオスカーあげて欲しいです!!
ノルウェーまだ~む
>
シアターでも2回ご覧になったとは!?
オースティンの演技素晴らしかったですよね~
顔はそれほど似ているわけでもないのに、声質とかパフォーマンスはもうそっくりでホント驚愕でした。
アカデミー賞そうすぐですけど、オースティンにあげたいですね~♬
にゃむばなな
でもあれだけ大御所って感じがするエルヴィス・プレスリーでもマネージャーに搾取されていたとは。人生とは分からぬものですよね。
ノルウェーまだ~む
>
昔の大スターほど巨万の富を得ながら、多くを搾取されたりしていたのかもしれませんね。
何しろつい最近まで大手プロダクションに芸能人は牛耳られてきていたわけで・・・
互いに信頼していたからこその葛藤もありましたね。
現代の自らSNSで発信して、自らをプロデュースしていくスタイルを見たら、昔のマネージャーたちは大汗かくでしょうね(笑
ボー
ノルウェーまだ~む
>
難しいところですよね。
確かに大きな舞台を用意するには準備にお金もかかったでしょうが、近年までエージェントはスターを食い物にしているのは普通の事だったわけで、当人たちも確かに毎日大盤振る舞いで湯水のようにお金を使っていたのも事実なのでしょう。
だとしても互いに誠実だったら、もっと結果は違っていたかもしれませんね。