都心も雪がこんこんと降ってすっかり真っ白に。
ムードもたっぷりなので、今年のアカデミー賞で国際長編映画賞&ヘアメイク・メイクアップ賞にノミネートされている「雪山の絆」を見てみようかな。
と、気軽に見始めたら、めっちゃ泣くし圧倒的に胸に迫るし、寒くて凍えるしで…
「雪山の絆」
1972年に実際に起きた事故を描いている。
事実を映画にすると、とかく淡々としていて、忠実に描けば描くほど映画的に盛り上がらないものだけど、これは違う!
何より映画で創り込むより明らかにドラマチックで明らかに過酷なのだ。
学生ラグビーの遠征のためチャーター便でアンデス山脈を飛んでいた飛行機が雪山に墜落した。生存者は29名。10日経っても救援は無く食べ物も底をついた。次々と若き命が事切れていく中、苦渋の決断を迫られる…
事故を知っている人ならもう少し気持ち穏やかに見られたかもしれない。
とにかく絶望的で、それなのに希望に満ちている。
ここには多くの終末的パニック映画にありがちな、欲望剥き出しで醜く争う人間の姿は無い。実話なのに!
大きな要因は彼らが敬虔なカトリック教徒であったことと、医学生を含む優秀な学生であったこと、そして何よりラグビーチームの仲間であったこと。
↑は実際に撮影された写真を忠実に再現したシーン。エンディングでも彼らの写真が紹介されている。
知らない俳優さんばかりで名前が判らなくなるけど、どんどんやつれていく様は、確かに見事なメーキャップ。
最後のやせ細った全裸の姿はCGでなかったら餓死寸前で、役作りもここまでは…さすがにメーキャップでも無理でしょう?
墜落してからまさかの71日目。
韻を踏んだ詩を披露しあい励まし合う姿は、知力と体力と育ちの良さを兼ね備えた若者達だったからこそ乗り越えられたものがあるのだと納得。
助かって病院で集合したシーンは、「最後の晩餐」を模しているらしい。
クリスチャンであるからこその葛藤があり、クリスチャンだからこその慈愛に満ちた姿がこの雪と岩だけの白い凍てついた画面を、何故か温かく照らしてくれる。
頑なに食人を拒んでいて、途中まで語り部であったヌマが最後に握っていたメモには「友のために命をささげるほど偉大な愛はない」と書いてあり、その姿はキリストそのものなのである。
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この記事へのコメント
にゃむばなな
そういう人として美しい部分を失わずにというところが、この映画を希望の作品にしているんでしょうね。
やっぱり自己犠牲のうえに勝利を目指すラグビーはいいスポーツですね。こういう非常時にはその精神が際立ってますわ。
ノルウェーまだ~む
>
これぞスポーツマンシップでしたね。
絶望の淵に立たされながら、人間の醜い部分が驚くほど一切出ない…神々しい程に互いを思い合う、ある意味その精神があってこそ、あの状況で気を確かに持つことが出来たんでしょうね。
素晴らしい映画でした。
セレンディピティ
本作の元ネタは、以前ナショナル・ジオグラフィックの「本当にあった奇跡のサバイバル60」という本を読んで、概要を知っていました。
http://serendipitydiary.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-1dad.html
(上記記事でも本事故について触れています)
それでNetflixに上がった時もすぐに「あの事故だ」とわかったのですが、それゆえになかなか見る勇気が起こらなくて...。
でもまだ~むさんの記事を拝見すると、感動的な作品に仕上がっているようですね。う~ん、見てみようかな。
私もこういう事実をもとにした作品は大好きです。
ノルウェーまだ~む
>
私も実は恐る恐る見たんですが、何とも不思議に美しい話なんですよ。
全くこの事故を知らずに、「実話」なので最後に誰か生き残るんだろうな…?くらいの感じで見ていたので、もうあまりの絶望感に半分はくじけそうな気持だったけど、途中から彼らのクリスチャンとしての葛藤と、まるでキリストのような慈愛の精神に胸を打たれて、温かい気持ちになるんですね…
クリスチャンでいらっしゃるセレンさんなら是非とも見て欲しいです。感想待ってますよ~
ノラネコ
本来人間の生きていけない真っ白な世界は、いわば現世とあの世の中間にある宗教的空間で、人間たちにとっては煉獄を彷徨っているイメージなのかも知れません。
ノルウェーまだ~む
>
本当にその通りですね・・・
何処まで行っても真っ白な世界は、『あの世』のようでもありました。そんな中で、死後天国に行くために必死で現世を宗教の教えに背かぬよう生きて来た彼らが、大きな決断をして生き延びた事は、彼らがその教えを『極限状態の中で初めて』ちゃんと理解したと言う事なのかもしれません。