公開当時評判が良かったけど見逃しちゃった邦画を鑑賞。
「ある男」
ある男 - 妻夫木聡, 安藤サクラ, 窪田正孝, 清野菜名, 眞島秀和, 小籔千豊, 坂元愛登, 山口美也子, きたろう, カトウシンスケ, 河合優実, でんでん, 仲野太賀, 真木よう子, 柄本明, 石川慶, 向井康介
雨の日にふらりとやってきた男(窪田正孝)は文房具屋のシングルマザーの里枝(安藤サクラ)と結婚し幸せに暮らしていたが、林業で事故に遭い死亡する。疎遠だった兄は遺影を見て弟ではないと証言したため、里枝は弁護士(妻夫木聡)に依頼し身元を調べて貰うのだが…
なかなかに深いドラマ。昨年の日本アカデミー賞で最多8部門で賞を受賞しただけの事はある。特に安藤サクラが秀逸!
他人の戸籍を買い別人となって生きずにはいられなかった男の人生が後半明らかになって行く。同時に「在日」と言われ続け、資産家の妻との生活に不満を感じている弁護士が彼にシンパシーを感じている事が描かれ、サスペンス展開かと思ったら重厚なヒューマンドラマだったことが判るのだ。
何もかも投げ捨て、全く別人として生きたい願望は映画「PERFECT DAYS」の主人公もそうだったけれど、無条件に受け入れられる事の大切さ、家族のあるべき姿を問いかけていて見事な作品だった。
「市子」(2023年)
市子 - 杉咲花, 若葉竜也, 森永悠希, 倉悠貴, 中田青渚, 石川瑠華, 大浦千佳, 渡辺大知, 宇野祥平, 中村ゆり, 戸田彬弘, 小西啓介, King-Guu, 大和田廣樹, 小池唯一, 亀山暢央, 上村奈帆, 戸田彬弘
同棲していた長谷川(若葉竜也)からプロポーズされた翌日、市子(杉咲花)はベランダから姿を消した。
訪ねてきた刑事は、市子は存在しない人間だと告げる。彼女の過去を知らなかった長谷川は独自に調べ始めるが、ようやくたどり着いた彼女の母親に真実を聞いた彼は・・・
今回は戸籍を持たずに生まれた子の話。この映画の凄い所は、(主役が杉咲花だけに)戸籍が無くても力強く前向きに生きていくピュアな少女のヒューマンドラマかと思いきや、実は逆にサスペンス要素満載な展開なのだ!
自分の力ではどうにもできない状況を、この少女は確かに自力で乗り越える。本来なら辛すぎる境遇に苦悩し打ちひしがれるところなのに・・・
と言うと健気な少女と思って共感しちゃうんだけど、本人の魅力に加え親を見て学んだ処世術で嘘を重ねしれっと生きる姿には不快さも感じられ、観ているこちらが揺れ動く。多分狙い通りに?
その激しい揺り戻しは市子の心そのもの。真実を知られない様人と距離を置きながらも、持ち前の優しさで多くの人に好かれ、なのに深入りするとまた拒絶する。
冒頭とラストの同じシーンは汗をかきながら鼻歌うたって、次の人生に向かって明るい未来を予測させるように見えるけど、実はこれは月子の延命装置を外した後の母と同じというのもポイント。人はトンデモナイ状況の時は鼻歌うたうしかないのかも…
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この記事へのコメント
ここなつ
「ある男」ご覧になったのですね!深くて切ない作品でしたよね。
結局亡き夫の真実がわかったところで、というのもありますし。
…でも、「本当は誰」かなんて、愛情があれば関係ないのかもしれませんね。
ノルウェーまだ~む
>
大丈夫で~す。ひとつ消しておきましたょ。
夫の真実は確かに知らずに終わっても、家族が幸せだった事実はちゃんと残っているんですよね。情報が欲しかったのは遺産相続させたくない実兄だけ。皮肉なものです。
前半は妻目線、後半は弁護士目線になっていくところも見事でした。
セレンディピティ
本作、原作のアイデンティティを損なわずに、映画ならではの良さが生かされていて、原作ファンの私にとっても大いに満足する作品でした。
原作では弁護士が主人公で彼のパートにも重きを置かれているのですが、映画では「ある男」の別人として生きていかざるを得なかった壮絶な人生にスポットに当てていて、原作とは違う感動を味わうことができました。
テーマとしては重苦しく、すさまじい話ではあるのですが、静かに淡々と、登場人物たちの心に寄り添うように描かれていたことに救われました。
ノルウェーまだ~む
>
原作も読まれてるんですよね~? 原作はずっと弁護士目線…と言う事は、結構息苦しいものだったんじゃないかしら?
本作では前半が妻の目線、後半が弁護士の目線だったことで、谷口が幸せだったことが強調されててとっても良かったですよね。
「市子」はセレンさんだとちょっと眉根にシワが寄りそうだけど、同じ戸籍がテーマで真逆の仕上がりになっていて面白いですよ。
ごみつ
拙ブログにコメント、有り難うございました。
今回の映画鑑賞は「戸籍」がテーマですね。
「ある男」非常に素晴らしい映画でしたね。登場人物たちの心の傷が痛いほど迫ってくる作品でした。
「市子」も面白そうですね。戸籍のない人たちに関しては、以前まだ~むさんが、ネホリンハホリンの記事の時、話題にされてましたよね。実際に戸籍のない人がいるっていうのが、衝撃です。
ノルウェーまだ~む
>
ネホリンハホリンの記事よく覚えていてくださいましたね~?
こうして衝撃的な人生を歩まざるを得ない人々が、実際に少なからず居るっていう事実に驚いている自分たちは、実は幸せなんだなと感じます。
「ある男」のほうは望んで戸籍を売買してますけど、戸籍が無いという人生、生きるために逃げてもその人生は?と考えさせられます。
「市子」結構見応えあるのでお時間ある時に是非!
latifa
今日は温かいですねー。明日からまた寒くなるみたいですが・・・
私も「ある男」原作と映画と楽しみました。
先に原作を読んでいたので、順番が逆だったら良かったのになーって思いました。
これ、妻夫木君じゃなくて、窪田君の役の方がメインだと私は思っていて、窪田君の演技も凄く良かったから、結構微妙な気持ちになった作品でした。(妻夫木君が主役みたいな扱いで、演技賞も彼だったから)
「市子」は興味持ってます!見れる機会が来たら見ます!
ノルウェーまだ~む
>
原作も読まれていたのね!?
私もこの映画の主役は谷口Xを演じた窪田正孝だと思ってます。
すると妻夫木聡は主演男優賞だったのかな?
原作の方は弁護士が主役って聞いているから、そうなってしまうのかしら?
いずれにしても3人とも演技は素晴らしかったです!
瞳
「ある男」私も観ましたよ~。
俳優さんたちの演技がみんな素晴らしかったですね!
安藤サクラさんの「知らなくても良かった」という言葉が沁みて・・。
結局、名前などなんであろうと、ともに過ごした日々の夫の姿がすべてでしたよね。彼の人生の最後が幸せで本当に良かったです。
戸籍ビジネスなるものがあることにもビックリでしたよ~。
ラストシーンは意味深だったなぁーーー。
ノルウェーまだ~む
>
わ~瞳さんもご覧になったのね♪
うんうん、ラスト意味深でした。
本当に「知らなくても良かった」んですよね。それで充分幸せだったし。前夫との長男くんは今「不適切にもほどがある」に出ている子だけど、この子も良かったですよね~
名前や家柄や出自を背負うことがこんなにも苦しいなんて…
戸籍を捨てたい人が居る一方「市子」はその戸籍を求める話なので、こちらも良かったら是非見てみてね☆
ノラネコ
同じアイデンティティを巡る話でも、立場は真逆。
「市子」は杉咲花で持ってるような映画で、感情移入キャラクターギリギリに役を仕上げたのが見事でした。
これはもうキャスティングの勝利。
彼女にとっても飛躍の一本になったと思います。
ノルウェーまだ~む
>
お褒め頂き光栄です~偶然見た2本が図らずもどちらも戸籍をテーマにしていたって、私のアンテナ凄いですねww
「市子」の杉咲花は本当に素晴らしかったです。感情を抑えて、辛さを飲み込んだ先にあるのがあの行動だった…という感情移入したくなる設定と、絶妙に不快感も同時に与えるラインは確かに見事でした。
latifa
雨ですねー 結構冷えます。
市子、見ました!
>実は逆にサスペンス要素満載な展開
そうでした。びっくり。想像していたのとは違った内容でした。
でも、こう言っちゃ不謹慎ですが、面白かった・・・
どうなるんだろう?ってずっと引き込まれました。
ラストの展開も、おおお・・・・という恐ろしさがあった。
市子がもうちょっと悪女風な女優さんが演じてたら違ったんでしょうけれど、杉咲さんが演じてたから、すっかりいい子という風にに思い込んで見てて、やられた感がありました。
ノルウェーまだ~む
>
そこそこ!そこよね〜?
もっとバリバリ悪女タイプの女の子だったら、さっさと憤慨して見られるのに、杉咲花ちゃんが健気に姉をヤングケアラーしてたり、母親がダメ男に引っ掛かったりしてたのですっかり騙されちゃいましたよねwww
なかなかのツワモノでした~
SGA屋伍一
とんでもない時は鼻歌を歌うしかないですか…なるほど
追い詰められた時は無意識に子供の頃好きだったアニソンをくちずさんでる、というのはよくあるようです。自分も経験があります
>ある男
こちら未鑑賞ですが、去年から今年にかけて安藤サクラが未亡人だった映画を4本観ました。こちらもか… 実際の旦那さんが健康でありますように
ノルウェーまだ~む
>
安藤サクラさんのご主人は現在大河ドラマのダブル主演で頑張っていらっしゃるから大丈夫でしょう。
どちらも活躍なさっていて素晴らしいですが、サクラさんは本当に未亡人役がいつもしっくりくるよね(笑)