2020年コロナ禍に起きた実際の事件をモチーフに描かれた作品。将来日本を背負って立つ事間違いなしな河合優実の演技が光る。
「あんのこと」 公式サイト2024年
母から虐待を受け”売春”の売り上げを巻き上げられリスカと薬物に溺れていたあん(河合優実)は、親身になって接してくれる刑事の多々羅(佐藤二朗)を信頼し、サルベージュと夜学に通って少しずつ更生しつつあった。しかし多々羅を取材していたジャーナリストの桐野(稲垣吾郎)がある記事を載せたことで…
今年の6月公開だったこの映画がもう観られるなんて!
この映画は他の誰でもなく河合優実だから良いのだ。彼女だったからこそ成功したし評価されたと思う。
ただ少なくとも実際の事件を基に作られた事から、最後に行きつく結末を知っているわけで、最初からみぞおちの深い所にズシンと重たいものを抱えつつ観る事になる。
何しろあんの家庭環境は酷い。まるで「映画のような」話だけれどこれが実際の事件なのだ。
コロナで正義を振りかざしたマスク警察が登場し、誰もが疑心暗鬼になってコロナを感染させた人を吊るし上げたりしている間に、こういった人たちは職を失い、行き場を失い、助けを失い、希望も失っていった事を世間の人はどう思うのだろう?
そう言えば「飲食店や観光地を自粛することで二次被害が増えるよね。」と言ったら「それで他人に感染したらどうするの⁉」と物凄い剣幕で怒られたことがあったっけ。
皆が彼女の末路に責任があって、でも誰が悪いわけでもない…とこの映画は語っている。
実話がベースでも過剰演出なしでほぼドキュメンタリーのように事柄を追い、誰を糾弾することもなく静かに私たちの胸の奥に重たい絶望と小さな光を残してくれる。
てっきり自分がされたように子供に手を上げるのかと思ってヒヤヒヤしたけど、老人ホームや突然預けられた幼子の面倒を見ることで自分が貰えなかった愛を『与えて』逆に癒され更生していく姿は本当に素晴らしかった。救いとは何なのか?改めて考えさせられたのだった。
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
瞳
この作品気になっててリストに入れてるんですが、先日「ロストケア」を観て(とっても良かったです)ガツーン!と来てるところなので、ちょっと見るのは先になりそう。
ドキュメンタリータッチの作品なのかな。
邦画も最近気になるのがどんどん増えてます。
ノルウェーまだ~む
>
私も「ロストケア」は手を付けずにそっと置いてある映画です。この手のやや自分とリアルに近い所にある境遇で辛い作品は、見るのに勇気が要りますね。
そうそう、邦画の良い作品がこのところ増えてますよね~?
こちらはドキュメンタリータッチという訳ではないのだけど、あん役の河合優実ちゃんが物凄くさらりと上手なので、まるでドキュメンタリーに感じるのでした。
ノラネコ
コロナ禍の色々な規制が、いかにして社会の一番弱い部分を壊していたのか、今更ながら突きつけられたようで、知らなかったことを後悔させられました。
河合優実は「ナミビアの砂漠」でもすごいことやってるので、まだでしたら是非。
ノルウェーまだ~む
>
コロナが影響している事ばかりでなく、東北震災・富山石川震災水害と、立て続けの被災で、今現在、同じ様にどうにもならなくなっていってる人が少なからずいるのではと思います。
目の前の人を糾弾することに必死になっている目を、もっと遠くに向ける必要があると常に感じています。
「ナミビアの砂漠」も評判良いですよね~?
今、 河合優実1色になりつつあるけど、あまりどれもこれもになるのは良くないなって思いますが。飛びぬけて良いから仕方ないのかな…
latifa
私も見ました。
いやあ・・・・重いですね・・・でも凄く見ごたえあって、主役の河合さん名演でした。
私も連鎖・・みたいな心配を一瞬したものの、逆にとても優しく子供に接する姿にぐっと来ました
ノルウェーまだ~む
>
重いんですよね。でもこの重さが大切なんですよね…
そうそう!負の連鎖をちゃんと自分の意志で止められてるというか、愛情を傾けることで自分を癒せてるって素晴らしいなって…実際、自分の子でもイライラしがちなのにね〰️
河合ちゃんの醸し出す唯一無二な雰囲気がホント素晴らしかった!
今気付いたんだけど、そのアンニュイな雰囲気が夏目雅子とか山口百恵に似てない?