アマプラ配信「落下の解剖学」☆フランス映画らしい曖昧が信条

最近古い映画ばかりでアマプラはラインナップがイマイチだな~と思ったら、どうやら今年公開の作品をどんどん配信する方向に転換したみたい!それはそれで嬉しい~🎵

「落下の解剖学」 公式サイト
2024年カンヌの最高賞パルムドールとアカデミー賞でも作品賞など沢山ノミネートされた作品。
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視覚障害の11歳のダニエルが犬の散歩から帰ると、父が雪の上に血を流して息絶えていた。警察の捜査でも、ベストセラー作家の母サンドラの弁護を受け持った弁護士でさえも、調べれば調べる程母が殺したとしか思えない証拠ばかり。PCからは夫婦が喧嘩していた時の様子が録音されていた。周囲の反対を押し切って全ての母の裁判を傍聴したダニエルは…
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冒頭、はるばる山小屋までやって来た女子学生からインタビューを受けるシーン。彼女が「あなたの作品は事実とフィクションが混ざってその境界線が曖昧」と質問する。サンドラは答えをはぐらかし彼女にワインを勧める。
実はこれがこの映画のまさに要で、それはラスト結局真相が明かされないまま終わるこの映画の曖昧さに通じる。映像もまるでドキュメンタリー風にブレる映像を挟んで、リアルとフィクションの間を揺れ動く。
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可哀そうなのは息子のダニエル。たった11歳で夫婦の喧嘩の様子も傍聴席でじっと聞き、彼の証言次第では母が父殺しの有罪になってしまう重責を負いながら、裁判の最後に「どんなに証拠を調べても、どうしても原因が判らない時は自分で考えるしかないんです。」とハッキリと述べる。この時の裁判官の表情が秀逸。
検事にしても弁護士にしてもそれぞれの立場で望む結果を証拠から導くだけであって、それが真実かは結局誰にも分からないと言う衝撃的な事実を子供の口から聞くとは!
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なんか見たことあるな~と思ったら「関心領域」でアウシュビッツの隣に住む妻を演じたサンドラ・ヒュラーが母親のサンドラを好演。裁判に勝ち息子も喜んでいたのに、真っ直ぐ帰ってハグじゃないの?のシーンでどこか冷たさを感じる母親の姿に冒頭の『息子が失明する事故』すらまさか小説のネタのために?とつい思ってしまう。「お母さんが帰ってくるのが怖かった。」と言う息子の真意が気になる…
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裁判のシーンや聴取のシーンが多く、しかもフランス語なので頻繁に集中力が途切れて何度も巻き戻しちゃった。
事件が解決するわけではないので、スカッとしたい人には不向きな映画。
最後まで「曖昧」を貫く映画だったけど、たった1つ明らかだったのは母サンドラの男性の好みが一貫してるってこと!
そして夫の作品のアイデアを盗んだとはいえ作家として成功していたサンドラが従来の夫像、仕事が上手くいかず家庭と子育てを引き受け、家の事が手一杯で自分のしたい事に集中出来ずに悩む夫はかつての妻の立ち位置なのだった。

この記事へのコメント

  • latifa

    ノルウェーまだ~むさん、こんにちは!
    私もこれ見ました♪
    感想、同じー。
    息子君が可哀想だった・・・

    >裁判に勝ち息子も喜んでいたのに、真っ直ぐ帰ってハグじゃないの?のシーンでどこか冷たさを感じる

    ここ!私も思った。
    なんかあの母親、変だよなあ・・・。

    息子君は黙っているて、まだ言ってない事とか、色々気がついてることあるのかもしれんなあ。
    2024年10月03日 11:47
  • ノルウェーまだ~む

    >latifaさん
    >
    そうそう、そうそう!絶対息子くんは色々気付いてると思うよね。
    実際、パパがメンタル的にシンドイのも彼は聞いていたので、自殺説はあながち間違いでは無いのかもしれないけど、例えば喧嘩の声を録音していたのがパソコンだったとして、そんな事を何故するの?と考えた時、もしかしたら小説の参考に父じゃなくて母が録音してたのかも?とか考えちゃった…
    2024年10月03日 14:22
  • こんばんは。

    わ!!私も観たばかりです。
    これ、裁判シーンはかなり見ててきつかったですね。息子チャンのことを思うと。

    >リアルとフィクションの間を揺れ動く。
    なるほど、なるほど~!!まだ~むさんのレビュー、興味深いわ~。
    この映画、観る人それぞれにみんな、自分は何を信じるか?を考えさせられる映画だなあと思いました。

    そうそう!!この夫婦、夫と妻の立ち位置が(普通とは)逆だなあってそこもすごく印象的でした。

    2024年10月03日 20:55
  • ノルウェーまだ~む

    >瞳さん
    >
    そうそう、家庭において男女の立場が逆転してて、それを苦にして夫がメンタルをやられるのは、凄く興味深いな〰️って思いました。
    母親もショートヘアでパンツスーツで、?と思ってたらバイだったり…
    息子ちゃんが11歳なのに凄く大人でビックリでした。
    なんともモヤモヤする結末を敢えて選んだ息子…凄いなー
    2024年10月03日 22:12
  • margot2005

    裁判のシーンで、ドイツ人のサンドラ・ヒュラーが、
    フランス語と英語を混ぜて喋りまくるシーンに圧倒されました。
    >事件が解決するわけではない..
    そして
    >彼の証言次第では母が父殺しの有罪...
    ↑ですね。
    とっても気の毒な息子が可哀想でなりませんでしたね。
    2024年10月07日 21:23
  • ノルウェーまだ~む

    >margot2005さん
    >
    息子ちゃん、どんな事を考えながら事件を検証していたのかしら?と思うと胸が痛みますね。
    母国語で話せない、思うように気持ちを伝えられないジレンマが、お互いを理解し合えない事に繋がったのでしょうかね…
    2024年10月08日 18:16
  • ここなつ

    こんにちは。
    私、実はこの作品あまり好きになれないんです。で、どうしてそうなのかな?と今更つらつら考えてみると…
    なんか、ヒロインの嫌な部分が、私個人の嫌な部分を鏡で無理矢理見せられているような気がしたからなんですよね。
    そういった点でもちょっと勘弁してくれよ、な展開だったのでした。
    2024年10月09日 19:27
  • ごみつ

    こんばんは。

    この映画、すっごい面白そうですね。
    瞳さんのところでも記事を読ませていただいて、ものすごく見たくなってます。

    どうも一筋縄ではいかない作品みたいだし、ワクワクします。

    ただ今、配信はスマホでしか見れないのがネックなんですよね~。でも早く見たいな~~。
    2024年10月09日 23:46
  • ノルウェーまだ~む

    >ここなつさん
    >
    なるほど…
    確かに夫が死ぬとかは無いにせよ、喧嘩の内容とか夫婦間の不満とかは、ある意味良くある話なんですよね。
    嫌なところだけを見せ付けられた…って感じかな?
    2024年10月10日 22:11
  • ノルウェーまだ~む

    >ごみつさん
    >
    この映画、ごみつさんなら面白いんじゃないかな〰️是非ご覧になって!感想楽しみにしてます!!
    私は最初、この手のやつ私の好きなやつ!って見始めたけど、ん~~?とちょっと想像とはちがってましたね。
    2024年10月10日 22:36
  • ボー

    大音量で音楽をかけているダンナ、そこからして、もうヤバいです。
    実際はどうだったのか、いろんな解釈ができて、それぞれの場合の人物の感情を想像できる脚本の上手さが受けたと思いますが、私としては、もう遠慮しておきます…的な?
    2025年03月22日 09:45
  • ノルウェーまだ~む

    >ボーさん
    >
    まさに色々な解釈が出来ますね~
    どっちもどっちなのでしょうけど、母のどこか冷たさが気になってしまいます。
    2025年03月22日 23:48
  • ふじき78

    いろいろな解釈ができるのが良い事に思えない。明解な筋じゃなくっちゃいけないとは思わないが、あたかも答が分かるかのような作りで分からないのはストレスが溜まる。
    2025年03月23日 14:29
  • ノルウェーまだ~む

    >ふじき78さん
    >
    確かに答えが明確にされないのはストレスになるかも…
    でもそんなストレスも映画の醍醐味だったりして☆
    2025年03月23日 23:28

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