「ヒトラーへの285枚の葉書」 2017年ドイツ・フランス・イギリス

ヒトラーへの285枚の葉書(字幕版) - ヴァンサン・ペレーズ, ヴァンサン・ペレーズ, アヒム・フォン・ボリエス, エマ・トンプソン, ブレンダン・グリーソン, ダニエル・ブリュール, ミカエル・パーシュブラント, モニーク・ショメット
戦争で息子を亡くしたオットー(ブレンダン・グリーソン)はフランスに勝利してナチス一色になりつつあるベルリンで、棺桶工場の工場長として真面目に働きながら、ヒトラーを批判する葉書を町中に置く活動で何とか生きる気力を保ってきた。しかしゲシュタポの捜査の手が迫ってきて…
主演のブレンダンが寡黙な工場長に実にぴったり。彼あっての作品と言える程にその静かな演技が素晴らしい。秘密裏の行為だけあってとにかく静かな映画なのに、彼の熱き闘士が煮えたぎっている様が台詞無くても伝わってきて実に秀逸。
またゲシュタポに見つからないかヒヤヒヤがハンパ無い。そもそも285枚もポストカードを街で一人の人間が買っていたら、すぐ見つかっちゃいそうなものだけど、これが3年に渡って行われた実話だというのだから凄い。第2次大戦中で処刑の仕方がギロチンなのも驚き。
原題は「Jeder stirbt fur sich allein」で英題は「ベルリンに一人」
「善き人のためのソナタ」 2006年ドイツ

善き人のためのソナタ(字幕版) - フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク, フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク, ウルリッヒ・ミューエ, マルティナ・ゲデック, セバスチャン・コッホ, ウルリッヒ・トゥクル, トーマス・ティーメ, ハンス=ウーヴェ・バウアー, フォルクマー・クライネルト, マティアス・ブレンナー
秘密警察のビースラーは反体制派の劇作家の家に盗聴器を仕掛けて24時間監視任務に当たっていた。部下は同棲中の人気女優との情事を盗み聞きして喜んでいたが、ビースラーは詳細に記録を残し真面目に取り組む。ある日彼の弾くソナタに心奪われ…
あらすじに書かれている程劇作家の弾くソナタは上手じゃないので、ピアノに心奪われたというより、ビースナーの心から真面目に働く姿勢が『社会主義国の体制にあぐらをかく欲深い人達への疑念』に気付かせたと言う事なのでしょう。壁が壊されて東西分断が無くなっても尚、郵便担当をせっせと続けているビースナーの生真面目さに心打たれる。
夜、静かに聞き耳を立てているシーンが多く仕事の後に見るとやや意識が遠のくけど、とにかくラストの一言が秀逸!この一言の為にでも見るべき映画!
実際にベルリンの壁博物館で見た「西側へ渡るために多くの人の命が奪われた」事を想うと、より一層政治に翻弄された人々の無念を感じる。➡ベルリンの旅☆壁の向こう側
どちらの映画もベルリンが舞台だし、政府という圧力に一般市民が翻弄され無駄に命が奪われてきた事を描いていて共通点は多い。体制側の人間も真面目に上司に従っていただけなのだけど、周りに振り回されず自分の頭で「正しい正義は何か?」を考える事の重要さと、それが権力に潰されていく虚しさを改めて感じたのだった。
この記事へのコメント
latifa
お仕事でお疲れの後、これらを鑑賞とは。
リンク先の
>ベルリンの旅☆壁の向こう側
楽しく拝見しましたよー。2011年の記事だったのね。
古い可愛い車が好きなので、トラバントの画像、うわっ♪ってなりましたよ。
ベルリン,行ってみたいと思っていましたが、もう行けそうもないなあ・・・。
私が小学生の頃かな? NHKか何かの特集番組でね、東から西に渡ろうとする人を射殺する映像があってショックを受けたのを今でも覚えています。
瞳
「善き人のためのソナタ」、以前観たなあと検索したら2007年でした。今のブログではなく、映画日記的なところに感想があったので恥ずかしながら貼っておきますね。
http://www.enpitu.ne.jp/usr9/bin/day?id=98194&pg=20071006
善き人のソナタが意外に地味な曲だったのが意外だったのですが、善は決して見せびらかすものではなく、自分の心に従うことだ・・、ラストでひとり仕事をしながら歩くビースナーの姿に重なるような気がしたのを覚えています。
最後の言葉には感動しました(涙)
ベルリンの旅・・・読ませていただきました。
歴史のこうした場所に行かれて自分の目でご覧になっているのって、(たいてい観光とかでいい面しか見ないのに)すごいことだと思います。
ノルウェーまだ~む
>
ハイ短期派遣仕事が全部終わったのでようやくこの手の作品にも手が伸びましたよww
旅行記も見て下さって有難う~
うんうん、衝撃的な事実だけど意外と壁があるっていう事実しか知らなかった私なので、東西に分断された人の大変さをこの時初めて知ったわ。
映画でも反対思想を持っていそうな人を監視する任務とか、抹殺するとか、本当に愚かな歴史だと今だからこそ思えるけど、現在のロシアなんて案外そんなかんじがまだ続いていて、誰も戦争に反対できないんだろうな…って思ってます。
ノルウェーまだ~む
>
リンクありがとう~早速先に読ませていただきました!
>善は決して見せびらかすものではなく、自分の心 に従うことだ・・
なんて素敵な言葉なの‼
瞳さんがこの作品を細かいところまで感じているのが、凄く伝わってきて感動しちゃいましたよ~
ベルリンの旅も読んでくださってありがとう~
実は息子のロンドンの日本人学校の同級生の多くの家族がパリのディズニーへ行っている時に、わが家はアウシュビッツに行ったりしてたのね。そしたら帰国前の旅行に何処に行きたい?って息子に聞いたらベルリンって。それで壁を観に行ったんです☆
セレンディピティ
「善き人のためのソナタ」は私も見ました。静かに心に響くよい作品でしたね。
記事を書いていたことを思い出し、久しぶりに読み返して懐かしい気持ちになりました。
http://serendipitydiary.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-c328.html
もともとは同じ国、同じ民族なのに、これほどまでに違う生活を送っていたなんて。
戦争の悲劇もそうですが、異なる文化を知る、世界を知ることの大切さにも気づかされました。
まだ~むさんのベルリン旅行記も拝見しました。
実は夫が(結婚前)ちょうどベルリンの壁崩壊時に西ドイツに駐在していて、東側に行った時の恐怖も聞いたことがあります。たしか壁の欠片も持っていたはず。(どこかに行っちゃったかも)
平和な今となっては信じられない事実ですが、40年も分断していたのですものね。ひょっとしたら日本もそうなっていたかもしれないと思うと背筋が凍ります。
ノルウェーまだ~む
>
な・な・なんと⁉ご主人様は歴史の瞬間に立ち会っていらっしゃったのね!!拾って来た?壁なんて凄すぎる~~のに、どこかにいっちゃうなんて(爆)我が家はお土産屋で売っていた壁の欠片を今でも飾ってますが…本物とは言え、その場でゲットしたものとは大違いだわ☆
「善き人の~」リンクありがとう~早速拝見しますね!
分断されたと言えば韓国北朝鮮ですが、ドイツが壁が崩れたのも日本がそうならなかったのも本当に良かった…
セレンディピティ
書き方が悪くて誤解させてしまってすみません。
夫は壁崩壊時に西ドイツにはいたのですが、ベルリンではなかったので、実際に壁が崩壊する場に居合わせたわけではないのです。
でも歴史の変化をその時感じたようですよ。
ノルウェーまだ~む
>
再びありがとうございます。
あ、私勝手に勘違いしてしまってゴメンナサイ!
崩壊する時期にちょうど住んでいらっしゃったのかと思っちゃいました。でも西ドイツで間近にその空気を感じられたと思います!凄い事だわ~