先日見た「ブルータリスト」も映像的に非常にアーティスティックな作品だったけれども、こちらも監督が写真家と言う点でアートな感じがよく似ている。
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黒人差別が激しかった60年代。真面目で成績優秀な15歳のエルウッドは祖母に大事に育てられていたが、ある日ヒッチハイクした車が盗難車であったことから逮捕され少年院に送られる。ニッケル校では日頃から不正や子供たちに対する暴力が横行していた。いつかキング牧師のように世の中を動かしたいと考えたエルウッドはこの事実をノートに書き貯めていたのだが…
一貫して主人公と友達の目線の周囲をぼかしたポートレートのような映像のみを使って、ぐっと観客と主人公の感情を同化させることに成功している。
画面はテレビサイズ。過去の実際の白黒映像を挟み込むことで、この話が実際にあったニッケル校での出来事だという事を強く印象付けている。
主人公目線なので本人の顔は滅多に見られない。ただ不思議な事に途中から少年院で唯一の友となったターナー目線に切り替わる時があり、実はこれがラストへと繋がっていく。
祖母に愛されたエルウッドと違い、ターナーの過去は説明されないものの不幸な生い立ちである事がうっすらと匂わされたことで、「家族」に飢えていた彼が選んだ道が最終的に辿り着いた場所だったのだろうと思われる。
バーで再会したニッケル校仲間にも名刺を渡さなかった「彼」が『内部告発』の結果をパソコンで見ているのも後ろ姿のみで表情は読み取れない。しかしそれこそが「エルウッド=全ての黒人」が歩んできた辛い経験なのだと訴えているのではないだろうか。
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この記事へのコメント
latifa
わーい!さっそく感想アップされたのね。
いやー、その目線が変わるところ、私はハッ!とせずに普通に流して見ちゃってたみたいー とほほーー!
何を見ているのやらーーー。
ねえねえ、最初におばあ様が訪ねて来て孫に会えなかった後、ターナーにばったり会って、これ渡してって手紙を渡すでしょう、でもターナーはそれをすぐに渡さなかったのは何故なのかな・・?
エドウッドには、あんな優しいおばあ様がいることが羨ましかったからなのかな?
真紅
この映画配信スルーでありがたいと思いつつも、やっぱり映画館で観たかったな~と思いました。
↑latifaさんの疑問、確かにそうですね。
でも家族が面会に来てくれるなんてほとんどなかったから、ターナーはどうしたらいいかわからなかったのかも?
ノルウェーまだ~む
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うんうん、私もそう思うわ。
きっと彼は家族に恵まれなくて、ちょっと悔しかったのともしかしたら裁判をしていると聞いていたから、エルウッドが居なくなっちゃうかも…と寂しく思ったのかもしれないね。
あと、おばあちゃんがまっすぐターナーに向かって歩いてきたのは、もしかしたら彼らの見た目も似ていたからなのかなって、それでラストおばあちゃんと家族の様に暮らすことになったんじゃないかなって思ったわ。
ノルウェーまだ~む
>
こんなに早く配信で見られると思ってなかったので、配信スルーでアマプラに感謝ですね☆
そか…ターナーは悪気なかったから、だからその後も彼らの友情は壊れなかったのかもしれないですね。
普通だったら怒るもん~~
セレンディピティ
この作品、気になってはいるのですが、きっと衝撃的な場面が多いと思うので、見るのを躊躇しています。
ポスターやアップしてくださった写真の数々を拝見すると、たしかに視点が斬新ですね。
主人公から見た映像となっているのですね。
アマプラに上がっている間に見たいなー。
ノルウェーまだ~む
>
実はこの映画はむしろ夢のような美しい映像を沢山使っているんですよ~
しかも暴力シーンとか一切無いのに、その過酷な差別の実態や少年院で行われていた虐待等をちゃんと表現しているの。ちょっと気を抜くとその肝心なところを見逃しちゃうくらいサラッとしか触れないので逆に要注意って感じでなのです。
そこがこの映画の凄いところで、アカデミー賞で受賞が一つも無かったのが不思議なくらいよ☆是非アマプラ配信があるうちに!