アマプラ配信☆邦画編「ナミビアの砂漠」辿りつきにくい砂漠のオアシス

なかなかに難解なのだ。難解と言っても私の好きなヨルゴス・ランティモス監督の様におへその曲がった難解映画ではなく(笑)、登場人物に共感するのが難しいとか、その人となりを理解するのが難しいと言う意味で。

カンヌ映画祭に出品ということで話題になった、今一番輝いている女優河合優実主演作品!
「ナミビアの砂漠」 公式HP
ナミビアポスター.jpg
料理もしてくれてとにかく優しいイケメンのホンダ(寛一郎)と同棲中のカナ(河合優実)は、ケータイとたばこを常に手放さずだる~く生きているが、二股をかけているハヤシ(金子大地)と逢う時は生き生きとしている。
ホンダの愛をウザく思い始めいきなりハヤシと同棲し始めるが、彼の荷物に元カノのエコー写真を見付けた事で精神状態は不安定になっていく。ハヤシと殴るけるの喧嘩の日々が始まり…

ナミビア元カレ.jpg
「甘いのとしょっぱいの両方が良いんだよね~』とはしゃぐカナ。甘い彼とツレナイ彼を示唆してる?
優しい今カレを捨て、ベッドの中で「恥を忍んで言うけどカナ別れて欲しんだよね直ぐ…でもその後もカナとは会いたい♬」とぬかすハヤシの言葉に素直に頷くカナの事がまず理解出来ない。勿論、そんな危険な男性の方が、親の様に面倒を見てくれて何もかも許してくれる彼氏より魅力的に映るんでしょうね。安定よりハラハラの方が、何となく胸がときめく気がしちゃうのは理解出来ないこともない☆
ナミビア今カレ.jpg
でもねホラー映画を見るドキドキやジェットコースターに乗ったハラハラと、恋愛中のドキドキが実は同じアドレナリンだという事を、まだ若い時は気が付かないんだよね。
それはともかくハヤシの家族BBQに手土産を持って行くとか社会人としてちゃんとしている部分もあるけど、とにかくカナの破天荒・平気で噓つく不誠実ぶりは眉をしかめる事ばかり。
息子の彼女がこうだったら悲しすぎる…とも思って映画のかなり後半まではその『理解しがたさ』に不愉快な気分が続くのだけど、終盤彼女が自分の気持ちの不安定さに気付いて精神科を受診し始めるころから、カナ自身が自分を『理解しがたい』と感じているのが判って来る。
ナミビアキャンプ.jpg
鑑賞後、精神科医の人が書いたこの映画の考察を読んでみてストンと腑に落ちた。
実際カナは劇中でも「双極性障害とパーソナル障害の間」という診断を受けていて、いわゆるメンヘラなのだ。そうなるとボディピアスを付けたり危険な男に惹かれたり、好きなはずのハヤシに突如ひどい言葉で喧嘩を売って愛を確かめようとしたりは、「自分に自信がなく自分を大事に思えない」こういった障害特有の行動と判ってくる。精神的なボーダーであり、二人の男の間で揺れ、また二つの祖国の間で居場所が見つからない、常にボーダーラインで揺れている。
ナミビアタトゥー.jpg
当初自分勝手で気ままだったハヤシは、意外な事にどんなに叩かれても殴り返さず(ここで怒りに任せて殴るとDVに発展するパターン)カナの耐え難い行為の日々を乗り越える。勿論二人はラブラブな時間もあるし、ハヤシは高大一貫校卒(多分慶応か?)のお坊ちゃまで頭もイイだけに、最後にはこのカナの傍若無人な振る舞いの上手な逃し方を習得するのだ。
お隣に聞こえない様に無言で格闘するシーンは思わず笑ってしまうが、こうして暴れて発散し、疲れ果ててハイ終了!って感じに喧嘩を終わらせる。元カレの作り置いてくれた冷凍のハンバーグを今カレと二人で食べる=過去のトラウマを乗り越えたと言う事らしい。彷徨ったナミビアの砂漠でようやく水場にたどり着いたガゼルのEDが彼女がようやくたどり着いたオアシスを表しているのかもしれない。

この記事へのコメント

  • latifa

    ノルウェーまだ~むさん、こんにちはー!
    私もこれ見ました。感想は書いてないのですが・・。
    ノルウェーまだ~むさんは、しっかりとこの映画を把握されていらっしゃるわー!

    実は楽しんで見れなくて・・・カナが苦手で・・・なんとか、やっと見終わった次第。
    でも世間で評価が高いですよね(河合さんの演技だけじゃなくて、作品自体が)

    「双極性障害とパーソナル障害の間」
    あー、そうでしたね・・・。
    予備知識無くこの映画を見始めてしまっていたし、早い段階でそれが解っていたらカナを見る目も違っていたと思う・・。
    男の子たちは、優しいなあー!寛容だなーと思いました。

    先日の日本アカデミー賞で主演女優賞でしたね。河合さん色々な役を(声優も!)こなされていて凄いわ。
    2025年03月21日 08:40
  • ノルウェーまだ~む

    >latifaさん☆
    >
    なんとlatifaさんもご覧になっていたのね~?
    いや、私も全く同じお思いで映画を見ていて、こりゃ難解(つまり理解しがたい&共感しがたい)だーってなって、実は感想書くのに3~4日かかっちゃったの。実際私も感想書くの止めよっかな…と思ったのだけど、精神科医の方のレビューを読んでストンと腑に落ちて、そこからこれって最後はちゃんとオアシスに辿り着いたんでは?と気付いたら急に書きたくなってきたのでした。
    それまでは自分が彼氏だったら絶対別れるやつーとか思っていたけど、彼女をまるっと理解するのを止めた時、こういった「生きづらさ」を抱えている実は多くの女の子たちが、ちゃんとトラウマを乗り越えてオアシスに辿り着けるんだなって思いました。
    2025年03月21日 15:09
  • ノラネコ

    こんばんは。
    河合優実の細やかなキャラクター造形が圧巻でした。
    しかし山中遥子は、タイトルの象徴性の持たせ方とか、ハヤシの描き方とか、20代とは思えない老練さを感じさせるんですよね。
    末恐ろしい才能です。
    2025年03月29日 21:45
  • ノルウェーまだ~む

    >ノラネコさん
    >
    なんと!?山中監督は20代なんですか?って見たら、うちの息子と同じ歳だーっ!(笑)
    ただ、この手の若い人の感性は、逆に若い人にしか共感できないというか、若い人だから描き切れたのだと感じます。
    2025年03月31日 00:07

この記事へのトラックバック

人気記事