「シチリア・サマー」 (2023年)イタリア

シチリア・サマー(字幕版) - ジュゼッペ・フィオレッロ, ガブリエーレ・ピッツーロ, サムエーレ・セグレート
矯正施設から戻った17歳のジャンニは最愛の母の恋人が営む修理工場を手伝っていたが、いつも近所のチンピラにからかわれ屈辱の日々を送っていた。
ある日卒業祝いに貰ったバイクを走らせていたニーノと接触事故を起こした事から知り合い、高圧的な義父から距離を置きたいジャンニは、家族の様に自分を受け入れてくれるニーノの家で仕事を世話してもらうようになる。ニーノの父の仕事を手伝い、ますます二人の仲は深まっていくのだが…
知らずに見始めたけど、1980年にシチリアで実際に起きたジャッレ事件をベースに描かれた作品らしい。といっても殺害シーンも濡れ場も一切無く、イタリアと美少年ならあるあるのバイク2ケツの美しいBL作品に仕上がっている!乾いたシチリアの景色と二人が泳ぐ碧い池の美しさで、慣習に縛られた人々の心の乾きと純愛の瑞々しさを対比させている。
ワールドカップ優勝で沸き立つ街で、2人を温かい目で送り出す街のチンピラたち(今まで散々イジメてたくせに・笑)で号泣~☆
ただ物語を美しく描きすぎたきらいもあり、17歳と16歳の純愛で名誉殺人?と納得しがたい点もある。(実際は25歳と15歳で、それなら少年の親の被害者感情も納得できる)
まだLGBTQに対する偏見が色濃く、『悪魔が憑いている』とお祓いしたり矯正施設に入れたりするような80年代の敬虔なクリスチャンが多い田舎の生き辛さがハンパ無い。ラスト犯人は言及されてないけど、狩の腕前が上達したトトの不穏な眼差しが示唆される。実際の事件も親族に頼まれた13歳の甥による名誉殺人であったらしい…
「オーダー」

オーダー - ジャスティン・カーゼル, ジュード・ロウ, ニコラス・ホルト, タイ・シェリダン, ジャーニー・スモレット, アリソン・オリバー, マーク・マロン, セバスチャン・ピゴット, ジョージ・チョートフ, マティアス・ガリード, フィリップ・フォレスト・ルイツキー, ブラッドリー・ストライカー, オデッサ・ヤング
アメリカの田舎町へやってきたFBIのハスク(ジュード・ロウ)は次々と起きる強盗事件や殺人事件が、ホワイト・パワーを掲げる白人至上主義のカルト教団から派生した過激テロ集団によるものと突き止める。あと一歩で追い詰めるも相棒の若き捜査員を失い動揺を隠せないハスク。
テロ組織のボスであるボブ(ニコラス・ホルト)は一人隠れ家で政府転覆を狙った計画を…
手に汗を握るリアルな恐ろしさが続き、たとえアクションに次ぐアクションや敏腕のスパイが出てこなくても充分ヒヤヒヤする。
奇しくもこちらも80年代の実話をベースにしている。とはいえ白人至上主義を掲げて自分達白人の利益だけを追求し、他の国籍・ユダヤ人らを排除しようとするのは、今まさにアメリカでやっている事と変わらないように思えて空恐ろしい。
もしかしたら子供たちを洗脳する赤い教本に沿って、自分たちの使者を大統領に押し上げるところまで計画が進んでいるってこと?
渋みを増したジュード・ロウが実に素敵🎵彼が抱える家族との葛藤や同僚を失う喪失感は最小限にしか語られないけど、彼のその佇まいに全て表現されていて秀逸☆
この記事へのコメント
瞳
「オーダー」コメントありがとうございます。
>彼のその佇まいに全て表現されていて秀逸☆
まさに、まさに~!!過去の出来事とか家族のことも映像としては描かれないのに、そういうのも想像できちゃうような、深い演技でしたよね。
これが過去の出来事と片付けられないところが怖いですよね。
「シチリアサマー」気になっていましたよ。アマプラで観れるのかしら。
美しい景色に美少年・・・、だけど、名誉殺人・・!?なんとも悲しいですね。
latifa
うわーい! 私も「シチリア・サマー」ほぼ同時期に見てたのよー!
感想下書きに入ってるので、そのうちアップする予定です。
いやー、予備知識無く見たから、後半ビックリしちゃった・・・。
シチリア舞台にラブラブな甘い内容だと思い込んでいて、こんなオチだとは全く想像していなかったわ。
実は、最初の方を見て、まあいいかーよくある感じなんだろうな?(←思い込み)と、一度辞めていたのだけど、日を改めて再度トライ。最後まで見て良かった!面白かったです!
オーダー
これも実は前に一度見たものの、最初15分位見て挫折していた映画だったの。
でも再度トライ。
>彼が抱える家族との葛藤や同僚を失う喪失感は最小限にしか語られない
そうなのよね、私はもうちょっと、そこらへんを見たかったかな。
(爆弾とか襲撃関係には時間を結構取っていたけど、こういう処はわずかだったので)
同僚の女性が無残に殺されてしまった件はショックだったな・・・
家族からも既に冷たい態度取られているみたいだし、可哀想だったな・・。とはいえ自分がこの人の妻だったら、やっぱり仕事ばかりで家庭をかえりみな過ぎって冷めてしまうかもしれないな。
ノルウェーまだ~む
>
うんうん、「オーダー」のジュード・ロウがとにかく巧くて、彼の抱える葛藤が何も語られないのにしっかり伝わって来てましたね!
もう40年も前なのに、今まさに起きている事の様で、ホント怖いわ。
「シチリア・サマー」怖いシーンは全くない本当に美しい景色と美しい少年を描いているのに、そこはかとない差別の怖さがその奥に描かれていておススメです!アマプラに挙がってるよ~
ノルウェーまだ~む
>
何と⁉「シチリア・サマー」ご覧になったのね!?latifaさんの感想楽しみ~~♬
私も最初は「君の名前で僕を呼んで」的な話(同じ年代のイタリアの話だし)のまま最後まで行ったらちょっとな~と思っていたんだけど、しっかりと違うアプローチだったし、何より実話ベースというのが驚きでしたよ。
「オーダー」の彼が抱える葛藤に関してはさらっとしか触れないのに、ジュード・ロウの表情だけで全部を表しているところは見事だな~って思ったわ。
同僚の女性かわいそうだった~~(涙
セレンディピティ
「オーダー」は衝撃作でしたね。
このカルトのことを知らなかったので、アメリカの暗部にまたひとつ触れたように思いました。
ジュード・ロウ演じたFBI捜査官は実在の人物か、映画のために作られたキャラクターかわかりませんが、メインのストーリーに深みを与えたいましたね。
赤い教本は、ググった限りでは日本語版、英語版、どちらも見つけられなかったけれど、ひょっとしたら秘密裡に流通しているのかも...と恐ろしくなりました。
「シチリア・サマー」は映像が美しくて、まさに「君の名前で...」を想起させるけれど、甘いだけの物語ではないのですね。
こちらも近いうちに見てみたいです。
ノルウェーまだ~む
>
アメリカのカルトには本当に様々な団体があるので、こういった白人至上主義のグループが各地にあるような気がしていましたが、ホント怖いわ…自分達が移民だった歴史をどう思っているのか?一度板間に正座させて聞いてみたいところです。
赤い教本は流通はしていないのね…?秘密裏に伝わっていても、広く流通していても恐ろしすぎるぅ~~
「シチリア・サマー」セレンさんにおススメです!感想楽しみにしてるね☆
latifa
シチリアサマー、予想外な展開でしたね。
2人とも美青年でしたが、私は花火の男の子の方がすらっとしていて、よりカッコ良かったかな。
1980年にシチリアで実際に起きたジャッレ事件について、私も映画見終わった後知ってびっくりでした。
少なくともその年代、日本では同性愛者だからと殺される様な事件はなかったと思いますし・・・。
PS アズリッシモの記事も拝見しましたよ♪
残念ながらご希望の席には座れなかったみたいですが、でも凄く素敵なお店ですねー。
ここのテラスからは晴れた日だと更に絶景ですねー!
ノルウェーまだ~む
>
「シチリア・サマー」ご覧になったのね!?
私も見終わってこんな事件があったのね??と驚いたわ〜
敬虔な信者ほど融通が利かないというか…昔の魔女裁判よろしく、時の権力者の都合の良いように操作された宗教なのに、それに右往左往させられる人々が哀れよね。
そのへんは八百万の神がいる日本とは考え方が違うけど、田舎ほど地域に根付いたものに縛られちゃうのかな…