「ゆきてかえらぬ」2025年 公式サイト

ゆきてかへらぬ - 根岸吉太郎, 田中陽造, 広瀬すず, 木戸大聖, 岡田将生
女優を目指す長谷川泰子(広瀬すず)は、彼の特別な文学の才に惚れ込んで17歳の中原中也(木戸大聖)と同棲を始める。ある日文学批評家の小林秀雄(岡田将生)がやってくる。文学談に花を咲かせ楽し気な二人に嫉妬しつつも、小林に誘われ泰子は遂に中也の家を出て小林と住み始めるのだが…
実は見る前から思っていた事は残念ながら的中。
セピアがかった色合いもレトロなファッションや小道具も大正モダニズムな文学的台詞の判らなさも完璧だし、すずちゃん演技も上手で美人、年齢的にも間違ってないんだけど…
映画は二人の恋人だった長谷川泰子の告白自伝本「中原中也との愛 ゆきてかえらぬ」を忠実に映画に仕立てただけな印象。自伝なので泰子が他の文壇仲間が思うような『悪女』には描かれない。

中原中也との愛 ゆきてかへらぬ
泰子は奔放でプライド高くそれでいて神経症なところがある繊細な女性で、誰もが夢中になる程の美人で妖艶なはず。実際すずちゃんは凄く頑張ってて、濡れ場にも挑戦してたんだけど、陰が無く健康的すぎ、内面から湧き出すエロさと退廃的な空気感が彼女には足りない。劇中でも秀雄が言及する大事なポイントだけにそれがとても残念。
この歴史に残る三角関係で印象的なのは1990年のドラマ「汚れっちまった悲しみに」
中原中也を三上博史、小林秀雄を古尾谷雅人、泰子を樋口可南子が演じていた。
勿論ドラマで丁寧に描いているからなのだけれどこれがめちゃめちゃ良くて、3人の複雑極まる関係=つまり二人の文豪を弄んでいる様に見える魔性の女が、実は魂で硬い絆に結ばれている秀雄と中也の関係に嫉妬し(これは本作にもある)また中也は親友に恋人を寝取られた激しいショックをバネにして崇高な詩を産み落とす様がちゃんと伝わってくる。
つまりこの過程が無ければ生み出されなかった中也の作品の数々を思うと、この奇妙な三角関係は必然であったといえるし、泰子を通して中也を愛する秀雄の複雑な想いがしっかりと伝わってくるのだ。
本作でもその点は秀雄が語るのだけど、語って済ませるので映画的に胸に迫るものが少ない。3人が渇望した『崇高な魂で繋がる』愛を感じられるのは、もはや同人誌だけなのかしら…?
この記事へのコメント
latifa
うーん、、、3人とも頑張っていたし、映像とか衣装やセットとかも凄く良かったんだけど・・・
そうね、すずちゃん綺麗だけど退廃的な感じは無かったし、脚本的にも悪くないんだけど、何か響くって事もなかったかも・・・。
で、なんですって。ねえねちゃん凄いな!小林秀雄、中原中也も敬愛されてるですって?!
それと、ネットでその90年版のドラマがとても良かったってクチコミ書いているのをさっき見かけたわ。まだ~むさんも書かれているし、名作なのね。キャストの3名合ってるね。 中原中也を三上博史っていうのが良いな。
感想は書かないかもしれないので、すぐコメント書いちゃった。
ノルウェーまだ~む
>
そそそそ、この時代の一番大切な要素って「退廃的」なのよ~!
この最も重要なムードを醸し出せる人が、この3人の誰にも無いって言うのが一番の敗因だと思うわ。
そういう意味ではキャスティングミスと言わざるを得ないよね。
じゃあ誰?って聞かれると難しいのだけど、しいて言うなら河合優実とか、男性は…うーん、成田凌あたりかな?今イケメンばかりもてはやされて雰囲気のある成熟した若手俳優って少なくてねぇ。